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タロス




タロスは、白亜紀後期カンパニア期に米国ユタ州に生息したトロオドン類で、2011年に記載された。
 ここ10年ほどの間に、アジアでは多数のトロオドン類が発見され、14種が記載されている。一方、北アメリカのトロオドン類は十分な化石資料にもとづくものが少なく、白亜紀後期で確実なのはトロオドンTroodon formosus一種のみとされている。
 今回著者らは、ユタ州のKaiparowits Formationから発掘された新属新種のトロオドン類としてタロス・サンプソニTalos sampsoniを記載した。骨の比較観察から、タロスはトロオドンよりも小型の、華奢な体型のトロオドン類と推定された。系統解析の結果、タロスはトロオドン科の中でも、白亜紀最後期の派生的なグループ(トロオドン、サウロルニトイデス、ザナバザルを含む)に属すると考えられた。またマイクロCTスキャンによる検査で、後肢の第2趾の指骨に、物理的損傷と感染症による病理学的改築の痕跡がみられた。
 特異的なトロオドン類タロスの発見により、Kaiparowits Formationの恐竜相の独自性が補強された。この層からは、新種の角竜ユタケラトプスとコスモケラトプス、ハドロサウルス類グリポサウルス、ティラノサウルス類テラトフォネウス、オヴィラプトロサウルス類ハグリプスなどが発見されている。

 完模式標本は胴体の部分骨格で、断片的な胴椎、仙椎、尾椎、尺骨と前肢の断片、腰帯、後肢などからなる。頭骨は見つかっていない。
 タロスに固有の特徴は、距骨や中足骨の細かい形質で表現されている。距骨のlateral condyle と ascending processの間の切れ込みnotchがあまり発達していない、距骨のintercondylar bridgeが強くくびれている、距骨のproximal grooveが広くV字形である、第3中足骨の背側面に顕著な丸い隆起tabがある、などの形質をもつトロオドン類とされている。

 タロスの中足骨は、アルクトメタターサルで非対称という典型的なトロオドン類の特徴を示すが、トロオドンに比べてほっそりしている。定量的に比較するため、第2中足骨と第4中足骨について、長さと前後幅または左右幅の比率を、トロオドンの若い個体を含む小型から大型の標本とタロスで比較した。その結果、第2中足骨の前後幅/長さ、左右幅/長さ、第4中足骨の前後幅/長さにおいて、タロスの数値はトロオドンの回帰直線よりも下に位置した。つまりタロスの中足骨は、同じ大きさのトロオドンと比べても細長いということである。


 命名は気が利いていて、タロスとは神話上のクレタ島の守護神で、俊足で知られたが、足首の負傷で死亡した(死ぬのか?)というエピソードに基づく。またtalonという英語にはカギ爪という意味があるので、これもかけているという。
 タロスの模式標本では、後肢の第2趾の第1指骨(-1)に骨折が治癒した跡がある。マイクロCTで見ると、本来の骨の輪郭の外側に、緻密骨が増殖して衣をつけたように外側を覆い、骨が太くなっていることがわかった。鎌状のカギ爪は捕食行動や種内の闘争に用いられたと考えられるので、この部分が物理的に損傷するのは不思議ではない。またこのように骨の再構築が進行するには数週間から数ヶ月かかると思われることから、第2趾は歩行には使われなかったという足跡の証拠とも一致するとしている。

参考文献
Zanno LE, Varricchio DJ, O’Connor PM, Titus AL, Knell MJ (2011) A New Troodontid Theropod, Talos sampsoni gen. et sp. nov., from the Upper Cretaceous Western Interior Basin of North America. PLoS ONE 6(9): e24487. doi: 10.1371/journal.pone.0024487




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GeoworldのT-rex

Geoworld の骨格シリーズの集大成というか親玉というか、T-rex 骨格組み立てキットであるが。
 これは、微妙に柔軟性がある素材でできていて、骨同士をギュッと押し込んで固定するようになっている。弾力性があるので倒れても割れにくいが、その代わり長期間飾っておくと、重さでだんだん歪んでくるように思われる。腰帯が重いわりに、脚の支柱は中足骨までしかない。腰帯を真下から支える方が安定だろうが、そうすると見栄えがよくないということか。
 また個々の骨を頸椎ブロック、胴椎ブロックなどの塊にしてから最後に各ブロック同士を組み合わせて立てるようになっているが、ブロック同士では力が加えにくく、ギュッと押し込みにくい。
 頭骨は非常によくできているが、強いて言えば顎関節がもう少し後下方にあって、顎を閉じたときにも下顎のつけねがもう少し太い方がいいような気もした。後肢の角度は、なんとなく哺乳類的な感じもする。
 とはいえ、骨格組み立てキットとしてこれだけのものを商品化するのは大したものである。1/10スケールなので全長1.1 mあるが、この絶対的な大きさが結構重要なのだなと思った。





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