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2019新宿ミネラルフェア



Peter Pitmann ではアンモナイトやカニ化石の他、虫入り琥珀を並べていたが、ここにはハドロサウルス類の末節骨が5個、トリケラトプスの足指が1個あった。
 ポーランドのMijo fossilsにはマンモス、シカ、ホラアナグマ、オオカミなどの骨に混じって、珍しいクズリのほとんど完全な頭骨が2個あった。博物館レベルのものという。もっと小型のテンの頭骨やイタチ科の歯などもあった。

Krautworst Naturstein には、いつもの始祖鳥、翼竜レプリカの壁に、最近論文になったドイツのアルクモナビスのレプリカがあった。始祖鳥13番と呼ばれていたが、研究の結果アルカエオプテリクスよりも飛翔に適した、より進化したアヴィアラエの翼というものである。お手頃価格なので買った人もいた。
ダスプレトサウルスの下顎はまだあった。ティラノのかなり大きい歯で16万8千円があったが保存状態のためだろうか。完全に割れた歯は3万8千円。



Zoic Srl にあったGreen River formationのアミアのすばらしい全身化石。今年もモロッコ、ニジェール、マダガスカルなどの恐竜、翼竜、ワニの歯、首長竜の脊椎、モササウルス類、カメ、ペルム紀の海生爬虫類クラウディオサウルスなどがあった。
 頭骨復元模型が3種、2個ずつあった。オスニエロサウルス、コパリオン?、クラウディオサウルスである。計6個のうち、4個は恐竜倶楽部の会員が買っていた。これらは少し前にAFPBBニュースにあった、パリで競売にかけられた恐竜化石の「オスニエリア」と「オルニトレステス」のようである。
 私はニジェールのエオカルカリアの前上顎骨歯と、「コパリオン?」の復元頭骨を購入した。某田村さんはオスニエロサウルス、クラウディオサウルス頭骨のほか、ドリオサウルスの脊椎骨をお買い上げされていた。



ミュージアムインポート改め、ハートオブストーンには、現生動物の骨格の他、アリオラムス、ヴェロキラプトル、オヴィラプトル類の頭骨レプリカ、オヴィラプトル類の全身骨格産状レプリカ、タルボサウルス下顎レプリカなど多数ある。今回、プロトケラトプス頭骨レプリカはわりと良いように思った。



パレオサイエンスには、ティラノサウルスやトリケラトプス等の歯の他、ツーソンから仕入れた恐竜の骨実物化石が多数。多くはクリトサウルスなどのハドロサウルス類やトリケラトプスの椎骨、四肢骨、肋骨、顎などであった。またメッセルのヘビ、カメ、カエル、コウモリなど小型脊椎動物の実物化石を多数販売している。Leptictidiumとかいう小型哺乳類150万などもあった。



なにげに可愛いミツオビアルマジロ。
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鳥の足のウロコは羽毛が二次的に変化したもので、爬虫類のウロコとは異なる


哺乳類には毛があり、爬虫類には鱗がある。鳥類には羽毛と鱗の両方がある。このうち鳥の足にある鱗の起源については、何十年も前から研究者の興味を引いていて、2つの考え方がある。1つの説は、鳥の鱗は爬虫類の鱗がそのまま残ったものである、というもの。もう1つの説は、鳥の鱗は二次的に羽毛に由来する構造物である、というものである。

鳥の足にある鱗は、いくつかの種類に分けられるが、主に中足骨・指骨の背面にある楯状鱗scutate scale と側面・腹側面にある網状鱗reticulate scale がある。ちなみにワニの身体は背面、腹面、四肢が重複鱗overlapping scale というヨロイ状の鱗で覆われている。

最近Wu et al. (2018)は、ニワトリの羽毛、ニワトリの楯状鱗、ワニの重複鱗の発生過程を比較し、それぞれの原基の全遺伝子発現プロフィールを比較した結果、鳥類の楯状鱗は爬虫類の鱗よりも鳥類の羽毛に近いものであると報告している。

ニワトリの羽毛と楯状鱗の原基は、両方とも初期の段階では円形のプラコード(外胚葉が肥厚したもの)からできてくる。羽毛原基ではプラコードが伸びて、bud状になっていく。楯状鱗の原基では円形のプラコードが、一部隣のプラコードと癒合して、長方形に近い形になることでヨロイ状の配列が形成される。一方、ワニの重複鱗の原基では丸いプラコードが形成されず、徐々に四角い碁盤の目状になっていく。楯状鱗の最終的な形態や配列は、ワニの重複鱗と似ていた。

著者らは過去に、ニワトリの羽毛原基と楯状鱗の原基の間で、全遺伝子の発現パターンを比較し、多数の“羽毛関連遺伝子群”と“鱗関連遺伝子群”を同定していた。そこで今回は、ニワトリの羽毛、ニワトリの楯状鱗、ワニの重複鱗の3つのサンプルの間で、これらの遺伝子群の発現パターンを比較した。(もちろんニワトリには存在するがワニには存在しない遺伝子もあるので、上記2つの遺伝子群のうちワニのゲノム上に存在する遺伝子群に注目した。)
 その結果、“羽毛関連遺伝子群”はニワトリの羽毛原基では高いレベルで、ニワトリの楯状鱗原基では低いレベルで発現していた。ワニの重複鱗の原基では全く異なるパターンを示した。次に“鱗関連遺伝子群”は、ニワトリの羽毛原基では低いレベルで、楯状鱗原基では高いレベルで発現していた。一方、ワニの重複鱗の原基ではどちらとも異なるパターンを示した。多くの遺伝子は楯状鱗原基と同様の発現レベルを示していないといっている。

結局Wu et al. (2018)は、ニワトリの楯状鱗とワニの重複鱗は、最終的な形態形成の様式は似ているが、前者は発生初期に羽毛と同じ丸いプラコードから生じること、全遺伝子発現のパターンが似ていないことから、収斂進化によって同じようなウロコの形態になったと結論している。

この“鱗関連遺伝子群”のデータに関しては、ややデータの解釈が難しいところがあると思う。ワニの重複鱗でいくつかの遺伝子はニワトリの楯状鱗と同様に高く発現しているようにみえる。それらが形態形成に関係しているのかもしれない。全体としては似ていないというが、動物種がかけ離れている割には、似ているようにもみえる。つまり何をもって似ている似ていないというのか、基準を決めて定量的に示す必要があるのではないか。その他コメントしたいことはあるが、ここでは割愛する。

ニワトリの楯状鱗が羽毛と同じ丸いプラコードから生じるなどの観察は、この研究が最初ではなく、何十年も以前から知られてきた。そして楯状鱗は羽毛原基から二次的に生じたという考え方も、以前から提唱されていた。その中でも重要なのは、Dhouailly (2009) の総説である。これは羊膜類の皮膚派生物について、ニワトリやマウスの実験発生学、発生遺伝学、ミクロラプトルなどの化石の発見をもふまえて、進化のシナリオを提唱したもので、EvoDevoに興味のある方は参照されたい。

Dhouailly (2009)の考えによると、哺乳類の皮膚は毛を形成する機構を、鳥類の皮膚は羽毛を形成する機構を、それぞれ基本的なプログラムとして持っている。それを調節することで、毛の代わりに皮脂腺を、羽毛の代わりに鱗を作り出しているという。
 もともと現生鳥類の中でもイヌワシやフクロウのように指まで羽毛で覆われている種類もいる。また家禽ではハトやチャボの品種で、指に羽毛が生えているものも知られてきた。さらに、ニワトリでは比較的簡単な実験操作で、羽毛と鱗を変換することができる。その仕組みは完全にはわかっていないが、重要な調節機構の一つはWnt/β-カテニンシグナルである。β-カテニンシグナルのレベルが高いと羽毛が形成され、やや低いと鱗が形成される。マウスではβ-カテニンシグナルのレベルが高いと毛が生え、低いと皮脂腺になってしまう。

ここからはDhouailly (2009)の考えではなく私の感想であるが、羽毛を獲得した恐竜は、ある段階以後は、比較的容易に羽毛と鱗の両方を作り分ける機構を獲得したと考えられる。そう考えるとティラノサウロイドの中でも、ディロングのように羽毛で覆われた種類より後の時代に、うろこ状の皮膚で覆われた大型種が出現しても不思議はなく、十分にあり得ることのように思える。また羽毛を獲得したのが獣脚類の祖先なのか、恐竜全体の祖先なのか、オルニトスケリダで1回なのかにもよるが、クリンダドロメウスやプシッタコサウルスのような状態もさして驚くべきことではないのかもしれない。



参考文献
Ping Wu, Yung-Chih Lai, Randall Widelitz & Cheng-Ming Chuong (2018) Comprehensive molecular and cellular studies suggest avian scutate scales are secondarily derived from feathers, and more distant from reptilian scales. Scientific Reports 8:16766 | DOI:10.1038/s41598-018-35176-y
https://www.nature.com/articles/s41598-018-35176-y

Dhouailly (2009) A new scenario for the evolutionary origin of hair, feather, and avian scales. Journal of Anatomy 214, 587-606.
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2019 岡山理科大学・恐竜学博物館


岡山駅から20分なので、東京からはさすがに遠いですが、関西圏の人にとっては行きやすい所のようです。バスに乗って行くと大学は丘の上にそびえ立っており、バス停から正門までの標高差に驚きましたが、上り専用エスカレーターがあります。
 守衛所で恐竜博物館の見学に来たと告げると、ガイドマップを渡してくれます。連絡橋を通ってC1棟に入り、エレベーターで降りて外に出て、隣のC2棟へ。メイン展示のガラス張りの標本処理室・展示室に到着。

観光地ではないので、GWだからといって特別に混雑していることもなく、平たく言うと空いていました。見学者はメイン展示でも2、3組、サテライト展示は一人でゆっくり回れました。
 まずガラス越しに、プロトケラトプス、幼体の集団化石、タルボ幼体、アヴィミムス、ヴェロキラプトルの脚が並んでいる。中にはゴビヴェナトルの骨格、テリジノ爪、ハドロサウルス類の骨などが置いてある。





 展示室に入ると、4月に論文が出版されたゴビハドロスの骨格、竜脚類の足跡化石、タルボ頭骨と復元模型、アジャンキンゲニアの全身骨格などが並んでいる。標本処理室ではカメやよろい竜(ピナコサウルス)頭部のクリーニング作業中ということで、学芸員さんの好意で中にあるものも解説していただいた。ゴビヴェナトルは頭だけ3Dプリンターで作成したようです。その他、棚に積まれた箱にはさりげなくノミンギアやトカゲ化石などがある。一つ、謎の獣脚類の部分化石(腰のあたり)があって、タルボ幼体のように見えるが恥骨ブーツの形が異なるものがあった。





C2棟3階の図書室にサテライト展示があり、入口を入るとトリケラトプスとプロトケラトプスの頭骨がお出迎え。棚一面を占めるコリトサウルスの骨や、ボトリオレピス、イクチオステガ、セイモウリア、カプトリヌス、メソサウルス、マストドンサウルスなどのレプリカがいる。
 図書室の一角という限られたスペースに、様々な恐竜その他の脊椎動物が展示されている。全身骨格としてはアロサウルス亜成体、ヒプシロフォドン、ジュンガリプテルス、パタゴプテリクスがある。頭骨レプリカはアロサウルス、ストゥルティオミムス、デイノニクス、プラテオサウルス、ガストニア、エドモントサウルス、ステゴケラスなど。翼竜と鳥の翼の比較、始祖鳥、コンプソグナトゥスなどもある。



A1棟の1階でしっぽが見えるので何かと思ったら、こんなところにタルボさんが。卒業研究で製作されたタルボサウルス全身骨格は、エスカレーターと窓側の間に収容されていて、なんと全身が見られない。しっぽまで見たい。適切な場所がなかったのでしょうね。将来的には、もっと広い場所に移して、晴れ姿を披露できるようになることを願います。夏休みには岡山シティミュージアムの方で展示されるようですね。

タルボサウルスですっかり満足して忘れるところだった。4階の図書室の中に、サテライト展示がある。サウロロフスとタルボサウルスの後肢の比較展示がある。ハドロサウルス科では大腿骨の遠位端を通る腱のための溝が閉じてトンネル状になっていること、タルボサウルスの中足骨のアルクトメタターサルの説明などがある。
 奥の方にはモンゴルの発掘調査の実際を感じられる写真展示があり、実物大の竜脚類足跡、発掘に使用する工具、測定機器などの紹介、調査隊員の1日のスケジュールなどが解説されている。解説DVDも見ることができる。

すっかり満足して、岡山駅できびだんごを買って帰りました。
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2019古生物学会例会 続き


對比地先生の学術賞記念講演はさすがに圧巻で、多岐にわたるのでここではとても書ききれない。主竜類のS字状の頸の進化に関連した両生類・爬虫類と鳥類の頸部筋群の相同性、ケラトプス類の大きな頭骨を支える頸部筋肉の発達、始祖鳥の環椎(第1頸椎)に頸肋骨があることの発見、ヘビの頸は長くなく、むしろ胴が伸びていること、などですね。
 その中で私が聞いて注目したのは、アヴィミムスのくだりです。鳥類によく似たオヴィラプトロサウルス類で、原始的な鳥類とされたこともあるが、現在は基盤的なオヴィラプトロサウルス類となっている。クルザノフのスケッチでは眼窩と側頭窓がつながっているように描いてあるが、CTスキャンで観察すると眼窩と側頭窓の間を仕切る骨があり、やはりオヴィラプトロサウルス類と同様である。つまり鳥類との類似は収斂であることを裏付けている。とはいっても頭蓋天井の骨が癒合していたり、手根骨・中手骨が癒合しているなど多くの点で収斂している。これについて、FGFシグナルの変化が起きると多くの部位で骨の癒合などが起こるので、少数の遺伝子の変化で多くの形質が変化しうることが収斂現象と関係があるのではないか、ということを言っておられた。これは以前から私も考えていたことである。

 それと関連して興味深かったのは、一般講演のガビアル‐トミストマの問題ですね。昔から、インドガビアルは本当のガビアルだが、マレーガビアルはクロコダイルの一種なんだよ、と習った(読んだ)ものである。形態に基づいた系統分類では、ワニの中でガビアルがかけ離れていて、次にアリゲーターとクロコダイルが分かれ、クロコダイルの中からマレーガビアルやマチカネワニなどのトミストマ類が現れたことになっていた。ところが、DNAを用いた現在の分子系統解析では、ガビアルとトミストマ類が最も近縁と出る。分子系統解析ではクロコダイルの中からトミストマ類が分岐し、さらにその中で急速に特殊化したものがガビアルということになる。この場合も、比較的少数の遺伝子が変異することで、非常に多くの形質が変化したとすればあり得るわけである。
 ちなみに今回の発表によると、食性の影響を受けやすい頭骨の形質ではなく、postcranial(胴体)の形質を詳細に調べると、ガビアルとトミストマ類で共通する形質が多く見出された。例えば第7, 8, 9頸椎の肋骨をみると、アリゲーターでは第7が第8, 9の半分の長さしかないが、クロコダイル、トミストマ類、ガビアルではもっと長い。今回得られた形質を含めて、形態と分子系統の両方を反映した系統解析を行うと、分子系統解析のような結果でもそれほど無理なく解釈できるということであった。

コンカヴェナトルのElena Cuesta さんの講演は、頭骨のCGが回転するのを見ているうちに聞き逃したりしたが、再記載した結果を淡々と説明する標準的な発表と思いました。日本語を勉強したらしく、スライド内に日本語の説明が出てきたが、時々誤りがあったということは自分で書き込んだということですね。日本語を勉強してくれていることはありがたいです。



竜脚類は前肢より後肢の荷重が大きく、方向転換するときは前肢で操舵するが、ゾウは頭が重く後肢より前肢の荷重が大きいので、方向転換するときは後肢で操舵するそうです。

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2019古生物学会例会@生命の星・地球博物館



日本古生物学会第168回例会は、1/25から1/27の三日間にわたり、小田原市の神奈川県立生命の星・地球博物館で開催されました。今回は本当に博物館の中、つまり展示室の隣のミュージュアムシアターなどで講演が行われ、例によって参加者は展示を見学することもでき、非常に楽しい学会でした。懇親会も美味しかったし良かったですね。

初日のシンポジウムは「絶滅生物が生きていた当時の姿を復元するための挑戦と課題」で、研究者はもちろんアマチュアの古生物ファンにとっても楽しめる普遍的なテーマでした。

産総研の清家先生は、にょろにょろ系の生痕化石であるマカロニクヌスについて、姿の見えない生物の生態・行動を解明する試みを発表されました。マカロニクヌスとは、ゴカイのような動物が砂を食べながら移動した痕跡ですが、ランダムな方向のものと、一方向に揃ったものがある。潮間帯にすむ現生のゴカイが作る痕跡の解析から、静穏な天候の時はランダムな方向に移動しているが、荒天時、波が荒れて砂浜が大きく削り取られていく状況の時は、ゴカイが一斉に陸の方に向かって移動していることがわかりました。

名古屋大博物館の加藤先生は、安定同位体比から生物の食性を復元する研究のお話。炭酸カルシウムの殻を持つ貝類では、炭素の安定同位体比(13C/12C)が、海水中のそれとほぼ一致することが知られている。ところが、同じく殻を持つ棘皮動物では、海水と一致しないことが知られていた。現生のバフンウニに、安定同位体比の異なる餌(イタドリとコンブ)を与えて育てる飼育実験の結果、イタドリだけを食べたウニとコンブだけを食べたウニとでは、殻の安定同位体比に有意の差があることがわかった。つまり食べた食物の安定同位体比が、殻の安定同位体比にある程度反映されることがわかった。ただし海水の影響もあるので海水と餌の両方の影響がある。

田中康平博士は、いつも抜群にわかりやすいスライドで、恐竜の卵と巣のお話をされる。1)巣の形状、2)卵を温める熱源、3)親の行動の3つのトピックス。最新の研究は、テリジノサウルス類の丸い卵には、捕食者などに撹乱されることなく、無事に孵化したと思われる跡がある。その孵化の成功率が比較的高いことから、テリジノサウルス類は抱卵こそしないものの、親が巣を守っていたのではないかと推測された。

福井県立大学の河部先生の鳥類の脳・内耳形態のお話が、意外と興味深かったですね。例えば、翼竜の脳では小脳片葉という部分が大きく、翼の皮膜からの感覚情報処理と関連しているのではないか、という研究があった。その後この小脳片葉の発達は、頭や首の姿勢制御・動眼反射などを司ることから、鳥類の飛行能力と関連づけられることが多くなった。ところが、河部先生が多数の鳥類の脳を多変量解析した結果、どうも飛行能力ではなく系統を反映しているような結果を得た。さらに最近の研究では、多数の鳥類の脳を徹底的に比較すると、小脳片葉は飛行能力とは相関しないという結果が報告された。
 内耳のうち聴覚器である蝸牛管の長さは、可聴域の周波数を反映するとされており、最近では頭骨長に対する相対的な蝸牛管の長さが、多くの鳥類・爬虫類で良い指標とされている。可聴域の周波数を求める回帰式も得られている。ところが、ティラノサウルスやゴルゴサウルスでこれを計算しようとすると、マイナス300とか400Hzという数値になってしまい、このままでは当てはめられないことがわかった。頭骨が非常に大きい恐竜のような動物については、おそらく低い音を聞いていたとは言えても、周波数を求めることはできないということである。

最後に、恐竜古生物イラストレーター・伊藤丙雄先生のお話も良かった。一番印象に残ったのは、研究者とタッグを組む古生物イラストレーターの仕事は、研究者が表現できないことを代わりに可視化する、代弁者であるということであった。この場合イラストレーターは、アーティストではなく、自分の絵を描いてはいけないと思っている、という。なるほどグレゴリー・ポールのように知識があり、自分の意見で分類まで変えてしまうようでは、アーティストではあるがイラストレーターには向かないということだろう。なるほど。
 また「恐竜の描き方」にもあるように、まずラフスケッチを描いた後、輪郭の中を暗い色で塗りつぶしてしまうという制作過程も紹介された。その後順番に明るい色を彩色しながら、その過程でイメージを再構築していくということでした。これは私にはなかなかできないので、懇親会で直接、伊藤先生とお話しさせていただいた。研究者と打ち合わせしながら、途中でも大きく変えることは日常茶飯事なので、常にイメージを再構築しているということでした。大変勉強になりました。
 懇親会ではその他にも多くの先生方とお話できて、非常に有意義でした。



地球博物館のオリジナルらしい、夜光フィギュア。


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2018池袋ミネラルショー続き


第2会場では通常、kasekiya さんと透明標本くらいしか見ないのであるが、310番のところで中国のサーベルタイガーAmphimachairodusとかいう頭骨化石があった。残念ながら撮影NGだった。さらにそこに、モロッコのKem Kemの獣脚類の末節骨があった。やや薄いがカルカロドントサウルス類かもしれない。



ベルギーのRoland Juvynsでは、ヒラコドンの頭骨があった。ヒビが入って保存が今ひとつなのだろうが、頭骨全体で38万。博物館には購入していただきたい。



ミュージアムインポートは、ハートオブストーンと店名が変わっていて、後継者の方の意向だそうですね。いつもの動物骨格標本のほか、モンゴルものとしてタルボ足、タルボ下顎、アリオラムス頭骨、オヴィラプトル頭骨、ヴェロキラプトル頭骨など。
 これは田村さんに教えていただいたが、金曜日にはなかった恐竜の頭骨模型があった。ディロングの金属製モデルのようだが、残念なことに頭蓋の正中線がぱっくり割れている。金属なので如何ともし難く、直せないようである。試作品なのか。

Krautworst で再びダスプレトサウルスの下顎を見ていたら、店主の方が来て内側面の交代歯を見せてくれた。ディプロドクスの皮膚痕化石が2万円台で置いてあった。イラスト描く方は参考にいかが。Humerus of pterosaurus を日本語でフムルス(翼竜)と書いてあったので、僭越ながら「翼竜の上腕骨」と説明しておいた。



Eldonia でフランソワさんに聞いたところ、このティラノサウルス頭骨は、「縮小レプリカ」ですね。3Dスキャンして1/4に縮小し、3Dプリンターで打ち出したものを型取りして作製したということです。つまりブラックヒルズのスタン頭骨1/6と同じ方法で作っている。塗装や質感は、立派なものです。何よりお買い得感がある。
 歯の並びやmaxillary fenestraの下の孔などは、スタンと一致する。下顎の傷穴がないのは埋めたのか。




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2018池袋ミネラルショー


今年は日程が12月半ばにずれ込んだせいか、寒いですよね。

Georgeさんのところでは今年も買えなかったが、ケラトサウルスの大型の歯30万円也が記憶に残った。エリオプスの歯は今年も残っていた。シャモティラヌスやシャモサウルスや、トルボサウルスやデイノニクスの爪や、買えないものには事欠かない。ハイエナの頭骨もまだごろごろと転がっていた。



Zoicでは、初めて立体化された海生爬虫類クラウディオサウルスの骨格が飾られていた。全身の80%が実物で、皮膚が残っているという。
 恐竜では、ニジェール産の歯がガラスケースの一段を占めていて、ジュラ紀中期のアフロヴェナトルと称する大小の歯の他に、ディロフォサウルスDilophosaurus sp. と書かれた歯が2個、スピノストロフェウスという歯が2個あった。スピノストロフェウスはノアサウルス類であるが、まあ確かにアベリサウルス類の歯を小さくしたようなものではあった。帰りがけに見たら両方とも、安い方が売れていた。物好きな人がいるものだ。



Krautworst では両生類の頭骨の並びに、ダスプレトサウルスの下顎の断片、184万円が置いてあった。ディプロドクスの骨や有袋類の頭骨や始祖鳥・翼竜のプレートなどはいつも通りある。



Eldonia はけっこう品揃えが豊富だった。中央のテーブルにはスピノ頭骨レプリカの周りに、サーベルタイガーの頭骨や歯のレプリカ、ティラノ頭骨(縮小モデルか)や歯、メガラプトルの爪などがところ狭しと置いてある。右の棚にも恐竜や哺乳類の化石が豊富に並んでいる。ウズベキスタンのBissekty formationのティムルレンギアとアルカエオルニトミムス、モンゴル産のオヴィラプトル類とオルニトミムス類の足。マダガスカルの竜脚形類。よろい竜の皮骨と椎骨と歯のセット。ディメトロドンの歯やガリミムスの歯骨などがある。私が挨拶すると、アレクトロサウルスの歯14万円を勧められた。それはさすがにちょっと。。




パレオサイエンスにはタニコラグレウスの頭骨があったが、あまり惹かれない。ヴェロキラプトルの足はお手頃であるが、一つ持っている。アルバートサウルスの上顎骨レプは塗装が今ひとつ。ガストンのアロサウルス上顎骨は余裕があれば欲しい。
 結局購入したのは、ディロフォサウルスの歯とシャオチーロンの歯のレプリカ。これくらいなら学生さんにもオススメですね。



あとはZoicで、完全なスピノサウルスの尾椎。部分的に補修してあるが突起は全部残っている。

明日は午後からゆっくり行きます。
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「成城 学びの森」オープン・カレッジ:「成城学園にスピノサウルスの化石がやってきた ― スピノサウルスから始める入門・恐竜学」



ユマニテク短期大学准教授:十津 守宏 先生と国立科学博物館 標本資料センター・センター長:真鍋 真 先生による講演を聞いてきました。

成城学園は初めて行きましたが、いいところにありますね。13:30開場ということでちょうどその頃に行ってみると、係の誘導で人々が会場に入り始めたところでした。(一番前にパンテオンさんが座っておられました。)500人入る会場ということですが、まあ中央が全部埋まるくらいの混雑でした。親子連れ多数。教壇のところに例のスピノサウルス頭骨のレプリカが鎮座ましましていた。

十津 守宏 先生は、ミネラルショーの会場でお見かけしたことがあるのを思い出しました。モササウルスの化石を購入されていたような。今日の講演は、宗教学の観点から古生物とどのように結びつけるのかなと期待していましたが、その辺はあまりなくてどちらかというと、恐竜・化石コレクターとしての立場から語っておられた印象でした。つまり、非常に親しみが持てました。

真鍋先生はさすがに安定のご講演でした。会場にクイズ形式で反応を見ながら、またジュラシックワールドやジュラシックパークの話題を交えながら、恐竜の基本を押さえつつスピノサウルスを巡る最新のところまでお話しされました。つまりシュトローマー、2014新復元に基づいて恐竜博2016、四足歩行、吻の神経血管孔センサー、顎の形はハモに似ている、背中の帆は泳ぐ時に役立ったかもしれない、しかしHenderson (2016) の必ずしも水中生活に適していない、ところまで紹介されました。最後にデイノケイルスにちょっと触れ、恐竜博2019の宣伝で締めくくる、鉄板の講演ですね。

今年ももうすぐミネラルショーが来るわけですが、ますます楽しみになりました。
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2018福井 特別展2回目


夏休みにひととおりは見たが、混雑していたためどうも落ち着いて見られなかった。秋の連休に紅葉を見ながらバーベキューとか温泉めぐりなどの習慣がないので、もう一度行ってきた。
 夏休みに比べればはるかに空いていたので、ゆっくり見ることができてよかった。



前回撮らなかった突進するカルノタウルス。



今回特に良かったのは、ネオヴェナトルの実骨をゆっくり観察できたことである。
カルカロドントサウリアの特徴の一つは含気性にある。含気性が腸骨にまで及んでいるのはネオヴェナトルとアエロステオンの特徴であった。



前上顎骨と上顎骨の内側面。メガロサウルス類と似て、上顎骨は前方突起が長く、前上顎骨の形からも吻の先端が斜めになっていることがわかる。歯間板は癒合している。



前上顎骨の内側面(関節面)がじっくり観察できた。前上顎骨の前縁の稜と溝が背腹で逆になっている(左右非対称)ことはネオヴェナトルの特徴である。写真では難しいが白い文字が書かれている部分の外側あたりで、恐らくこれだろうという部分が確認できた。モノグラフを読んだのはずっと前であるが、記憶に残っているのは過去の記事を書いたためである。



リムサウルスは胃石のほか、手の指を観察しようとしたが、小さくて今ひとつよくわからない。しかし素晴らしい化石ですね。



ズオロンの頭骨。方形頰骨は折れているようだ。方形骨の方形骨孔に特徴があるが、後方からでないと見えないらしい。鼻骨はないが、同じ地層から出たグァンロンとは、外鼻孔の角度などで区別される。



アンキオルニスの一種。これは四肢の長さなど全身のプロポーションが分かりやすい、妙に鮮明な化石だと思った。



ティアンユーラプトルもものすごく貴重な標本ですね。



魚食性とすると、このポーズで疾走することはあまりないような。カルカロドントサウルス類から逃げているところか。ディスプレイの踊りかな。
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特別展「獣脚類 鳥に進化した肉食恐竜たち」(2)



ビセンテナリアは恥ずかしがり屋さんなのか、壁の方を向いている。いや、パネルの説明を読んでいるようにみえる。獣脚類の進化に興味があるのだろう。



今回感動したものの一つが、ズオロンとアオルンである。過去にアオルンの記事は書いているが、これが見られる日が来るとは。以前ズオロンも記事にしようとしたが、結構細かいのであきらめた経緯がある。(「アオルン」の記事参照)



ティラノサウルス類で重要なのはチエンジョウサウルス。今回、キアンゾウではなくチエンジョウと表記されたことはちょっとうれしい(「チエンジョウサウルス」の記事参照)。ローマ字読みするのは自由だが、そもそもquiならスペイン語などのキだが、qiはローマ字読みできないはずである。このチエンジョウサウルスは歯が抜けているためにくちばし状にみえるが、歯を生やすとアリオラムス顔になり、それなりに様になるはずだ。



ティラノサウルス類以上のコエルロサウルス類は、オルニトミムス類、アルバレスサウルス類、テリジノサウルス類、オヴィラプトロサウルス類など、ひと通りそろえた感がある。次の山場はパラヴェス類(近鳥類)で、アンキオルニス、エオシノプテリクス、アウロルニスなどが一堂に会し、エピデクシプテリクスやイーもいる。ジェホロルニス、サペオルニス、孔子鳥類、エナンティオルニス類へと続いていく。



ちょっと注目したのはサペオルニスの歯で、結構立派な歯である。やはり鋭い歯と長い尾があると、獣脚類という気がする。ニワトリのゲノムを元に恐竜を作成するなら、まずは歯と尾椎を目標にするといいのではないか。そうすればラプトルまではできたも同然である。





ミクロラプトル、シノルニトサウルスはともかくティアンユーラプトルもいるとは。さらにウネンラギア類アウストロラプトルとブイトレラプトル。この辺でお腹いっぱいになってきた。
 アウストロラプトルは論文の図とは印象が違うが、初めて見るのでそれなりに感慨深い。このキャストは骨の表面のテクスチャーがピアトニツキサウルスと似ているようだが…アルゼンチン製か?これもブイトレラプトル同様、尾椎の関節突起などは未発達となっている。
 中国のティアンユーラプトルと並べて、ティアンユーラプトルの前肢が短いことから関連があるかもしれない的なことが説明してある。しかしアウストロラプトルは確かに短いが、ブイトレラプトルやラホナヴィスはむしろ長いわけだから、ウネンラギア類全体に短い傾向があるわけではない。ミクロラプトル類やウネンラギア類を含めてどのグループにも、独立して前肢が縮小する傾向があったのかもしれない。ティアンユーラプトルの論文には、確かにそういった考察があったのを思い出した。(「ティアンユーラプトル」の記事)

今回、近鳥類Paraves 、鳥翼類Avialaeの他、ペンナラプトル類など、専門家の間では定着しているのかもしれないが聞きなれない分類名が、普通に多用されている。恐竜博物館の特別展だからこれでいいのかもしれないが、一般の親子連れのお父さんが「もう少しわかりやすく書けばいいのに」とつぶやくのを耳にした。アンキオルニス科は多分、2017年のカイホンの系統解析あたりかな。

続くかな



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