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カルカロドントサウルス類亜成体



亜成体といっても結構大きいもの。
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ケラトスコプス・インフェロディオス



後眼窩骨を赤くしたいがために、全身描いたようなものだ。バリオニクス30個体とスコミムス40個体で種内変異を研究したら、どうなるだろう。
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ケラトスコプスとリパロヴェナトル



Copyright 2021 Barker et al.

本当に別属とする必要があるのだろうか。例えばスコミムスを含めてバリオニクス属の新種ではいけないのだろうか。種内変異の幅を知らないうちに形態を細かく解析すると、個体ごとに新属新種になったりしないのだろうか。そういう感想である。今回の2つの新標本はバリオニクスよりもスコミムスに近い点があり、バリオニクスとスコミムスを属として残すのであれば、新属になるということか。

ケラトスコプスとリパロヴェナトルは、白亜紀前期バレミアンに英国南部のワイト島に生息したバリオニクス亜科のスピノサウルス類で、2021年に記載された。
 英国では、恐竜化石を産する前期白亜紀のウェルデン層群がイングランド南東部とワイト島に露出している。バリオニクス・ワルケリのホロタイプ標本は、イングランド南東部サリーのUpper Weald Clay Formation(バレミアン)から発見された。この発見によりウェルデン層群の様々な分離したスピノサウルス類化石が、バリオニクスと呼ばれていた。スピノサウルス類の化石はワイト島のWessex Formation(バレミアン)からも知られていたが、これまで報告されたのは分離した歯と1個の胴椎であった。これらはバリオニクスまたはその近縁種と考えられ、cf. BaryonyxやBaryonyx sp.などと称された。これらの分離した歯とバリオニクスのホロタイプの歯では、エナメルの装飾に異なる特徴がみられることから、別のスピノサウルス類の可能性も考えられたがはっきりしなかった。
 今回、新たに2つのスピノサウルス類の断片的な化石標本が、ワイト島南西部のChilton Chineから発見された。この2つの標本は、驚くべきことにほぼ同時代のバリオニクス・ワルケリとは異なり、また互いに異なっていたので、ケラトスコプス・インフェロディオスCeratosuchops inferodiosとリパロヴェナトル・ミルネラエRiparovenator milneraeと命名された。ほぼ同時代の同一地域に、複数のスピノサウルス類が共存していたことになるという。

ケラトスコプス・インフェロディオスCeratosuchops inferodiosの属名は「角のあるワニの顔」で、種小名は「地獄のサギ」である。この場合の角というのはバリオニクスのような正中のトサカではなくて、後眼窩骨の突起やごつごつした粗面をさす。
 ケラトスコプスのホロタイプ標本は、左右の前上顎骨、後方の前上顎骨の断片、ほとんど完全な分離した脳函からなる。また参照標本として右の後眼窩骨がある。
 他のバリオニクス亜科と異なるケラトスコプスの特徴は、前上顎骨の外鼻孔の前方に結節があること、基底後頭骨のsubcondylar recessの幅が狭く腹方に限られること、などの非常に細かい形質からなる。

リパロヴェナトル・ミルネラエRiparovenator milneraeの属名は「河岸のハンター」で、種小名はバリオニクスを研究したアンジェラ・ミルナー博士への献名である。
 リパロヴェナトルのホロタイプ標本は、左右の前上顎骨、分離した脳函、左の眼窩前方の断片(部分的な涙骨と前前頭骨)からなる。参照標本として後方の鼻骨の断片と、連続した尾椎の一部がある。
 他のバリオニクス亜科と異なるリパロヴェナトルの特徴は、眼窩の上の前前頭骨と前頭骨の後眼窩骨突起との間に切れ込みnotchがあること、顔面神経孔が深く陥没していること、subcondylar recessが深いこと、などの細かい形質からなる。

系統解析の結果、スピノサウルス類の単系は強く支持され、またスピノサウルス亜科とバリオニクス亜科の2分岐が支持された。バリオニクス亜科の中では、ケラトスコプスとリパロヴェナトルが姉妹群となり、これらとスコミムスを含めた新しいクレード、ケラトスコプス族Ceratosuchopsiniが認識された。ケラトスコプス族の特徴は、前頭骨の後眼窩骨との関節面が背腹に厚く、深い長軸方向の溝があること、上側頭窩の前縁が明確で強くカーブしていること、などであるという。

分類学的な解釈については、これらのスピノサウルス類の頭骨の細かい形質の違いは、個体変異や成長段階による差異に関するものを含んでいることは認めている。これを正しく評価するためにはもっと多数のサンプルが必要であり、それが不可能である現在のところは、新しく2種を命名するのが妥当であるということをいっている。

今回の新種で注目される形質として、後眼窩骨の粗面がある。ケラトスコプスでは後眼窩骨の粗面の最後に、大きな突起bossがある。またリパロヴェナトルとスコミムスでも、前頭骨の後眼窩骨との関節面の形状が似ていることから、同様の後眼窩骨があったことが暗示される。このような頭部の装飾は、ディスプレイや種内闘争に役立った可能性がある。また今回の論文では個々の骨の詳細は記載していないが、リパロヴェナトルの尾椎では神経棘が比較的長く、丈の高い尾椎の起源がさかのぼることを示唆する。これまでは丈の高い尾椎はアプティアンのイクチオヴェナトルとスコミムスからとされていた。


英国のウェルデン層群のスピノサウルス類の歯化石には、2つ以上の形態型morphotypeがみられることから、複数のバリオニクス亜科の種が存在した可能性は以前から指摘されていた。ただしこのことは、複数の種がいたというよりも、スピノサウルス類の歯の異歯性の程度が著しいことを表すとも議論されていた。しかし前期白亜紀のイベリア半島からは複数のスピノサウルス類と多数の歯の形態型が知られており、今回のケラトスコプスとリパロヴェナトルの発見を考え合わせると、より複雑な状況が想像される。バレミアンのイベリア半島にはバリオニクス、ヴァリボナヴェナトリクス、カマリラサウルスが生息し、バリオニクス亜科とスピノサウルス亜科の両方を含むとされる複数の歯が見つかっている。ただしこれらの種類は今のところ異なる地層から知られており、実際にどの程度共存したのかは明確ではない。
 ケラトスコプスとリパロヴェナトルの歯には、唇側と舌側にエナメルの装飾が観察される。これはこの地層から見つかっていた分離した歯と同じ特徴であり、バリオニクス・ワルケリの舌側に縦溝のある形態とは異なっている。今回の発見により、ワイト島のWessex Formationにバリオニクスそのものが存在したかどうかは、疑わしくなってきた。実際、過去にバリオニクスと呼ばれた分離した胴椎は、神経棘がより高いなどの異なる特徴をもっている。他の標本についても未同定のバリオニクス亜科あるいはスピノサウルス科と呼ぶのが良いだろうとしている。

古生物地理学的には、スピノサウルス亜科がゴンドワナ地域に分布し、バリオニクス亜科が主にローラシアに分布していることから、スピノサウルス類は最初はパンゲア全体に分布しており、大陸の分裂にともなってゴンドワナでスピノサウルス亜科が、ローラシアでバリオニクス亜科が分化した(スコミムスだけがアフリカに渡った)という考えもあった。
しかし今回の結果はスピノサウルス類のヨーロッパ起源を支持し、その後少なくとも2回、アフリカに渡ったことを示唆するとしている。1つはスコミムスであり、もう一つはスピノサウルス亜科の祖先の段階である。スペインのカマリラサウルスを基盤的なスピノサウルス亜科と考えると、状況を単純化することができるといっている。


参考文献
Barker, C.T., Hone, D.W.E., Naish, D. et al. New spinosaurids from the Wessex Formation (Early Cretaceous, UK) and the European origins of Spinosauridae. Sci Rep 11, 19340 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-97870-8
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