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エピデクシプテリクス1


エピデクシプテリクスは、ジュラ紀中期から後期の中国内モンゴル自治区に生息した奇妙な鳥類(鳥群、アヴィアラエ)の一員で、最近(2008年)Natureに報告された。進化した鳥類の形質と、オヴィラプトロサウリアなど他の獣脚類の系統にみられる形質が奇妙に混じっており、系統解析の結果からエピデンドロサウルスと姉妹群をなすとされている。ハトくらいの大きさで、尾の先端に2対の長いリボン状の尾羽をもっていたが、四肢には翼の痕跡はないという。

 頭骨は、オヴィラプトロサウルス類のように短く丈が高い。外鼻孔は吻の上方にあり、前方の歯は上顎・下顎とも、マシアカサウルスのように強く傾斜している。また、前方の歯は後方の歯よりもずっと大きいが、これは基盤的なオヴィラプトロサウルス類や基盤的なテリジノサウロイドと同様である。頚椎は9個、胸椎は14個あり、合仙骨は7個の椎骨からなる。尾椎のうち前方の6個は短く幅広く、後方の10個は原始的な尾端骨に似た構造をなすが、互いに癒合してはいないという。

 肩甲骨は他の進化したマニラプトル類と同様に上腕骨より短く、烏口骨は長方形に近い。上腕骨は大腿骨と同じくらいの長さで、これは他の多くの原始的なアヴィアラエより長い。尺骨は後方に反っており、手は細長い。腰帯のうち、腸骨のpreacetabular processが長く、その前縁が強く凸型であるが、これは進化した鳥類と同様である。また獣脚類には珍しく、恥骨が座骨より短い。恥骨は前腹方を向いており、pubic bootはない。座骨は後方に曲がっており、扁平で、遠位端に向かうにつれて幅広くなっている。

 系統解析の結果、エピデクシプテリクスとエピデンドロサウルスは、アヴィアラエの基盤的な位置に、単系のスカンソリオプテリクス科を構成すると考えられた。エピデクシプテリクスとエピデンドロサウルスは、鳥類にみられる多くの派生的な形質(上腕骨が大腿骨と同じくらい長い、腸骨のpreacetabular processが長く、その前縁が強く凸型など)を示す一方で、オヴィラプトロサウルス類やテリジノサウロイドと顕著な類似性を示す。例えば、短く丈の高い頭骨、外鼻孔の位置が高い、前方の歯が大きい、前端が下方に曲がり、背側が強くふくらんだ下顎、大きな外側下顎窓などである。また恥骨が座骨より短いなどの腰帯の特徴は、獣脚類の中でも独特であるという。

 鳥になってしまうとあまり興味はわかないが、この動物は変わっている。歯のある鳥類も珍しくないとはいえ、これは歯は大きいし翼はないし、鳥らしくない。頭骨の特殊化は食性と関連しているかもしれないが、昆虫食なのか、植物の実でもとったのであろうか。

参考文献
Zhang, F., Zhou, Z., Xu, X., Wang, X. and Sullivan, C. 2008. A bizarre Jurassic maniraptoran from China with elongate ribbon-like feathers. Nature 455, 1105-1108.
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アフロヴェナトル1



 アフロヴェナトルは、ジュラ紀中期(バス期からオックスフォード期)に北アフリカのニジェールに生息したメガロサウルス類で、1994年に記載された。部分的な頭骨と体の骨格が知られている。全体としてアロサウルスと似ているが、個々の骨が細長く、より華奢なつくりとなっている。

 アフロヴェナトルの固有の形質は、前眼窩窩の前縁が耳たぶ状になっている、第3頸椎の神経棘が低い長方形、非常に扁平な半月形の手根骨、第1中手骨の第2中手骨との関節面に広い突縁があることであるという。

前上顎骨と鼻骨は見つかっていないので推定であるが,頭骨は長く,丈が低い(長さに対する眼窩の位置での高さの比率が1/3以下)。他のメガロサウルス類でははっきりした涙骨角はないが、アフロヴェナトルには低い涙骨角があり、含気孔がある。上顎骨にはスリット状のpromaxillary fenestra と小さなmaxillary fenestraがあり、14本のナイフ状の歯がある。下顎はほとんど発見されていない。前肢はアロサウルスと同じくらいの長さと推定されているが、上腕骨が比較的長く、手根部がより扁平で、第3指の末節骨が小さい。撓骨と尺骨はほとんど見つかっていない(論文の骨格図では遠位端のみがあるように描かれているが、言及はない)。後肢はアロサウルスと比べて遠位の骨要素が長い。大腿骨に対する脛骨の比率は、アロサウルスの0.81に対してアフロヴェナトルでは0.90である。足(中足骨と趾骨)もアロサウルスより細長い。

 1994年のセレノの記載では,前眼窩窩にmaxillary fenestraがある、上顎骨の歯列が眼窩の前方に限られるなどの形質からテタヌラ類であり、上顎骨の前方突起が長い、後眼窩骨の腹方突起が横に幅広いなどの形質からスピノサウルス上科(原文:トルボサウルス上科)とされた。前肢の第1指の末節骨がそれほど大きくないことから基盤的な種類として、メガロサウルス科(原文:トルボサウルス科)やスピノサウルス科の外に置かれた。

 Allain (2002)は頭骨の45の形質に基づいて、メガロサウルス類を中心に基盤的なテタヌラ類の系統解析を行い、その結果、トルボサウルス、エウストレプトスポンディルス、ドゥブレウイロサウルス、アフロヴェナトルをメガロサウルス科としている。ここではスピノサウルス上科の共有派生形質は、後眼窩骨の腹方突起が眼窩の下縁近くまで延びていること、上顎骨の前方突起が長方形であること、頭骨の長さに対する眼窩の位置での高さの比率が1/3以下、などとしている。メガロサウルス科の共有派生形質は、後眼窩骨の腹方突起の断面がU字型であること、方形骨に孔がないこと、などとしている。さらにAllain (2002)ではメガロサウルス科をトルボサウルス亜科(トルボサウルスとおそらくエドマルカ)とメガロサウルス亜科(エウストレプトスポンディルス、ドゥブレウイロサウルス、アフロヴェナトル)に分けている。両者の違いは、前眼窩窩のpromaxillary recess (fenestra)の部分がトルボサウルスでは浅い窪みであるが、後の3種類では深い孔である(ただし内部で閉じている)ことなどである。(ここはアロサウルス、シンラプトルやコエルロサウルス類では内側まで貫通している。)

 The Dinosauria 2nd ed. (2004) ではメガロサウルス科のうちエウストレプトスポンディルス亜科としてエウストレプトスポンディルス、ドゥブレウイロサウルス、アフロヴェナトル、ピアトニツキサウルスを含めている。共有する形質はmaxillary fenestraがあることなどとしている。

 初めて見たのは1998年の科博(ゴンドワナ)で、イラストは2002年の恐竜博の全身復元骨格を元にしている。ところでアフロヴェナトルの前腕(撓骨・尺骨)はほとんど発見されていないようである。スピノサウルス上科では上腕骨に対して前腕が短いのが特徴とされている。現在メガロサウルス科の中に入っているのであれば、もう少し前腕が短くてもいいような気もする。あるいは前腕が短いのは、スピノサウルス科とトルボサウルスなどで独立して獲得した形質なのだろうか。

参考文献
Sereno, P. C., J. A. Wilson, H. C. E. Larsson, D. B. Dutheil, and H. D. Sues. 1994. Early Cretaceous dinosaurs from the Sahara. Science 266: 267-271.

Allain, R. 2002. Discovery of megalosaur (Dinosauria, Theropoda) in the Middle Bathonian of Normandy (France) and its implications for the phylogeny of basal Tetanurae. Journal of Vertebrate Paleontology 22:548-563.

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