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ゴルゴサウルス2012




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この、福井のコレクション巡回展に出演しているゴルゴサウルスを見たのは、2009年砂漠の奇跡、2011年東京タワー、2012年ヨコハマ恐竜博で3回目である。東京タワーの時は、会場を出た所に子どもたちの人気投票アンケート結果が張ってあり、展示された恐竜の中ではゴルゴサウルスが一番人気だった(ティラノはいなかったせいか)。やはりティラノサウルス科は後肢が長くスタイルが良く、いかにも走りそうな印象である。
 2006年のゴルゴサウルス(Gorgosaurus sp. )はややがっしりした体型で成体かもしれないが、こちらのゴルゴサウルス・リブラトゥス(Gorgosaurus libratus )は多分、亜成体と思われたがどうなのだろうか。
 小さめの成体や大きめの亜成体もいるだろうから、大きさとは別に成熟度の基準が要るはずである。

Carr (1999) は17体のゴルゴサウルス・リブラトゥスの頭骨標本を観察し、その成長段階における形態の変化を研究した。(Thomas Carr はゴルゴサウルスとアルバートサウルスは同属とする立場なので、アルバートサウルス・リブラトゥスと表記しているが、ここではゴルゴサウルスとする。)その結果、Carr (1999)はこれまで得られているゴルゴサウルスの化石の成長段階を、Stage 1, Stage 2, Stage 3 の3つに区別し、Stage 1をさらに2つに分けて、small Stage 1, large Stage 1, Stage 2, Stage 3 の4段階を設けた。(幼体とか亜成体という用語は使っていない。)

上顎骨において、small Stage 1では前眼窩窩の境界はくっきりしているが、 large Stage 1以後は前眼窩窩の前腹側縁が徐々に骨表面に移行している(grades)。small Stage 1ではinterfenestral strut の基部が平ら(flat)であるが、large Stage 1以後はわずかに凹んでいる(gently concave)。
 Stage 1ではmaxillary fenestra は長さと高さが同じ(つまり円形)で、前眼窩窩の前縁と前眼窩窓の前縁の中間にある(つまり前眼窩窩の中央にある)。Stage 2では、maxillary fenestraは長さが高さより大きく(つまり楕円形となり)、前眼窩窩の前縁に近づく。promaxillary fenestraは、Stage 1では前眼窩窩の前縁にあるスリット状の孔であるが、Stage 2では窪みの中にある。
 Stage 1, Stage 2では前眼窩窓の長さが高さより大きいが、Stage 3では前眼窩窓の高さが長さと同じくらいになる。

いわゆる涙骨角(涙骨の角状突起cornual process of lacrimal)については以下のように記述している。small Stage 1では角状突起は弱い隆起であり、3つの頂点があり、涙骨の含気窩lacrimal pneumatic recessよりも丈が低い。large Stage 1では角状突起が前背方に突出し、2つの頂点をもち、涙骨の含気窩以上に丈が高い。Stage 2になると角状突起の頂点は1つになる。Stage 3では角状突起が背方を向く(erect)という。
 small Stage 1では前方突起の涙骨前眼窩窩lacrimal antorbital fossa がすべて露出しているが、large Stage 1では背側方の部分が板状に垂れ下がり(lateral lamina)、涙骨前眼窩窩を覆い隠すようになる。Stage 2ではlateral laminaがさらに腹側に達する。またlarge Stage 1では、眼窩上突起の背側面に強い棚状の稜がある。
 Stage 1では涙骨の前腹側板の前縁rostral margin of rostroventral laminaが直線か凹形である。Stage 3ではこの縁が凸形であるという。

頬骨については、large Stage 1では後眼窩骨との関節面が眼窩の下縁に達しているが、Stage 2では眼窩の下縁よりも上方で終わっている。つまり後眼窩骨の下端の位置でわかる。

後眼窩骨の前方突起frontal ramus は、small Stage 1では細長いがlarge Stage 1、Stage 2と進むにつれて太短くなる。後眼窩骨の角状突起cornual processは、small Stage 1ではほとんどないがlarge Stage 1では水平の稜の形をとる。Stage 2ではより顕著になり稜がカーブしてくるらしい。

さてCarr (1999)が列挙した膨大なデータの中から、頭骨レプリカの側面から観察できそうな(かつ筆者が理解できた)特徴を抜き出してみたが、これらはほんの断片的なものである。学問的には保存された部分だけが研究対象であるはずなので、復元骨格のうち推定で作った部分はあてにならない。しかし恐竜展の楽しみとしては「成長段階推定ごっこ」をしてもいいだろう。
 ヨコハマ恐竜展のゴルゴサウルス全身骨格の頭骨は、写真のようである。


 上顎骨では、前眼窩窩の前腹側縁が徐々に骨表面に移行している。interfenestral strutは、影の感じからわずかに凹んでいるようにみえる。maxillary fenestraは、あまりにも円形過ぎて少し人工的な感じもするが、このとおりとすれば円形で中央にある。前眼窩窓は長さが高さより大きい。
 涙骨の角状突起は全体として前背方を向いており、頂点は2つあり、涙骨の含気窩と同じくらい丈が高い。眼窩上突起の背側面に棚状の稜がある。前腹側板の前縁rostral margin of rostroventral laminaはわずかに凹形である。
 後眼窩骨の下端は眼窩の下縁に達している。後眼窩骨の前方突起はほどほどの太さで、角状突起は水平の稜に近いようにみえる。
 以上の形質からは、この頭骨はlarge Stage 1に近いと考えられる。(ただし向こう側のmaxillary fenestraが一部見えているが、楕円形のようである。)

Carr (1999)は、5つの標本に基づいて描かれた、すばらしい復元頭骨図を掲載しているが、これもlarge Stage 1で、頭骨長750 mmであるという。会場の壁にあったパネル(図録にもある)のゴルゴサウルスの頭骨図(シルエット風)はこれを元に作図されたと思われる。つまりあれも亜成体で、成体ではない。ゴルゴサウルスの完全な成体は、もうひと周りかふた周り大きいということだろう。

参考文献
Thomas D. Carr (1999) Craniofacial ontogeny in Tyrannosauridae (Dinosauria, Coelurosauria). Journal of Vertebrate Paleontology, 19:3, 497-520.
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テラノヴァの感想(終)



 最後のクライマックスは映画的にまとめている。ジムが意識を失い、目が覚めた時には‥というのはストーリーを省略するときの常套手段であるが、そこからのレジスタンスを主に描くためだろう。
 侵略者側はいたずらに恐竜を殺すなど、この世界の自然を経済的利益のための資源としか見ていないことが描かれる。私腹を肥やすためジャングル一帯を焼き払おうとする敵の計画を知り、必死で阻止しようとするテイラー達テラノヴァ側。このモチーフは「アバター」、ひいては「もののけ姫」「ナウシカ」に通じるものがある。

 ルーカス(途中から阿部寛に見えてきた)とテイラーの親子対決あり、スカイちゃんもいろいろと活躍するし、エリザベスさんも反撃に一役買うし、あきさせない作りになっている。

 恐竜が出ないという不満に応えたのか、最後のカルノタウルスの使い方は、定番とはいえ良かったのではないか。このくらい活躍しないとね。

 あれ?全体として、すごく面白いと絶賛するほどではないが、普通に面白いのでは?細かい突っ込みを入れはしたが、また最初に述べたように軸足がはっきりしないきらいはあるが、総合エンターテインメントとしてはこんな感じだろう。打ち切りになるほどつまらないとも思わない。
 やはり予算をつぎ込んだ割には元がとれなかった、というFOX上層部の判断なのか。「海外ドラマファン」と「恐竜ファン」では感想が異なるということかもしれない。特に恐竜に興味のない、ストーリー展開を追いたい人は、散漫な感じを受けたということか。子ども向けなのか大人向けなのか中途半端だという批判もあった。恐竜ファンというのは恐竜が見られれば楽しいという「子ども心」を持ちつつ、複雑な陰謀やスパイの行動なども理解できる変な人種なので、違和感がなかったのかもしれない。
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「テラノヴァ」の感想2

第7話「迫りくる闇」
 ちょい役でナイコラプトルとスピノサウルス(類)が登場するが、あまり活躍はしていない。

第8話「見えない真実」
 殺人罪でジャングルに追放されたカレンをテイラーは敢えて助ける。コモドオオトカゲの祖先?にエリ巻きをつける必要はあったのだろうか。これは何か理由があるのか。エリ巻きを広げて威嚇するというのはジュラシックパークのパクリっぽく見えてしまう。
 賢いマディは地質学者ホートンが実は偽者であることを見抜いたために、危険な目に遭ってしまう。偽ホートンの研究室の壁に、恐竜の骨の標本のようなものが掛かっているが、現代の恐竜グッズによくあるティラノサウルスの骨のミニチュアにみえる。ホートンは博物学全般に詳しいダーウィンのようなキャラであるが、趣味として恐竜グッズを飾っているのだろうか。もしもジャングルから採集してきた実物の骨標本という設定なら、幼体の骨か何かだろう。

第9話「対決」
 シクサーズは、巨大トンボを伝書鳩代わりに利用してスパイと交信していた。ルーカスら敵対勢力とテイラーの因縁が明らかに。しかしジムは元警官のわりには、テイラーのいうことだけを簡単に信じるなあ。恐竜は出ない。

第10話「迷いの森」
 敵同士であるテイラーとミラは、森で2頭のスラッシャーに襲われ、共同して戦うはめになる。スラッシャーは眼窩のところがかなり窪んだ顔をしている。ちなみにテイラー司令官は「アバター」の大佐と同じ俳優さんで、立派な風貌である。古代ローマの将軍とか、中世の伯爵とか大司教とか、艦長とか大統領とか何でも演じられそうだ。ミラが弓矢を射るシーンは、これまた「アバター」のネイティリとかぶっている。

 ゾーイがペットにしたアンキロちゃんは、室内シーンでは多分模型で今一つだが、最後に森に返す場面で歩き出す映像はよくできている。と思っていたら親も出てきた。この辺は一応見せますね。

 しかしトルエンに混入した一滴の血液からDNA鑑定するにあたり、マルコムは「赤血球を破壊してしまう」といっている。スパイつまり人間の血なら、赤血球は無核である。またDNA抽出のため細胞を破壊するのは当然のことである。

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「テラノヴァ」の感想

 
 スピルバーグ製作総指揮のSF超大作として鳴り物入りで宣伝された、海外ドラマ「テラノヴァ」がDVDリリースされたので期待していたところ、いきなり製作打ち切りのニュースが報じられて出端をくじかれた。予算がかかり過ぎともいわれるが、そもそもネット上では「面白くない」という意見が多くみられる。しかしせっかく恐竜が出るのに、見ないわけにもいかない。あまり期待しすぎなければ大丈夫だろうと。

第1&2話 8500万年への旅

まず、密航の件で夫妻が呼ばれたテイラー司令官のオフィスに、アクロカントサウルスと思われる頭骨がある。ちょっと欲しい。

カルノタウルスは脚も長過ぎないし、よくできているが、前腕が長くて明らかに肘が曲がっている。この世界のカルノタウルスは前腕が長いのかもしれないが。。。羽毛のある個体とウロコの個体がいたような。コンカヴェナトルのように腕に羽飾りをつけたようだ。

架空の肉食恐竜スラッシャーは、架空なのでなんでもありであろうが、あえて推定するとトサカのある前肢の発達したティラノサウロイドというところか。まばらな羽毛もあったようだ。ユーティランヌスと同じくらいの大きさかもしれない。

このドラマはおそらくSFアクションが主なのだろうが、陰謀がらみのサスペンス、家族ドラマ、青春ドラマの要素もあって盛りだくさんなだけに、個々の要素が浅くなっているようにみえる。様々な視聴者層の支持を集めたいのだろうし、ある程度複雑でないとストーリーを引っ張れないのだろうが、サスペンスならサスペンス、家族愛なら家族愛のドラマを見た方が深く楽しめるという人は多いだろう。ロケやCGにすごく気合いが入っているのはわかった。

第3話 「空を覆う影」
 翼竜の大群が襲来する話であるが、小型の翼竜に襲われた警備兵の死体を検死した時に、まず樹上性のヘビが人を襲うことがあるということで、ヘビの可能性が疑われた。ジムが死体に残された爪を見つけて、そのヘビには爪があるのか、と訊いたところ、マルコムは「脊索動物だから、爪はない」と意味不明なことを言っている。日本語字幕では「爬虫綱の脊索動物だ、爪はない」となっている。ここは、ヘビだから爪はないで済むところ。誰もおかしいと思わなかったのだろうか。


第6話 「楽園の掟」
 肉食恐竜ナイコラプトルを利用し事故に見せかけた殺人事件が起きる。ナイコラプトルはデイノニクスくらいのドロマエオ系とも見えるが細かい特徴はわからない。餌となるガラサウルスは鳥に似たもっともらしい姿である。
 しかしこの回はそれらよりも、孵化できなかったアンキロサウルスの胚の映像がすごい。漿尿膜の血管や尿嚢ごしに胚が動いている様子のCTホログラムみたいなもので、かなり凝っている。しかも先天性疾患を「卵内手術」して治療するという。こんなところに予算をかけるとは。。。恐竜ファンとしては楽しいのであるが。

まだ全部見てないので続く
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