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BBCプラネット・ダイナソー




DVDが発売されたわけであるが、これだけの内容をまとめて見られるのはお買い得である。最新の研究成果をうまく織り込んでまとめてあり、さすがBBC、世界標準という感じ。CGはどれも素晴らしい。スコルピオヴェナトルの顔なども正確で安心できた。唯一気になるとすれば、恐竜の目つきが、なんとなく人間とくに白人の目に見えた。これは視聴者に親しみを感じさせるために、あえてそうしたのかもしれない。ワニや翼竜はそうなっていないと思った。
 海生爬虫類プレデターXを「肉食恐竜」といっていたのはいただけない。すでに指摘されているが、「ズニティラヌス」は想像というより創作に近い。ちょい役のアレクトロサウルスもほぼ想像のはずである。多くのエピソードで植物食恐竜と肉食恐竜のからみを描いてドラマにしているが、これほどいちいち肉食恐竜を登場させなくてもよかった感はある。

多くの獣脚類が登場するが、スピノサウルス、カルカロドントサウルス、ティラノサウルス類、テリジノサウルス類などについて、それぞれ歯の形態を示して、その特徴からこう考えられているという説明がわかりやすい。
 その中にあって一つだけ、多少違和感を感じたのは、アロサウルスがサーベルタイガーのように頭を振り下ろすところで、やや極端な印象を受けた。詳しい方はご存知のように、これは直接にはRayfield et al. (2001) の有限要素解析で頭骨/上顎が丈夫なわりには咬む力は比較的弱いという話であるが、元々はBakker (1998)のアイデアである。このあたりの話はWikipediaにも詳しく書いてあるが、やはり納得しない研究者の反論もあったらしく、Nature誌上で議論があったようである。
 個人的な感想では、サーベルタイガーの牙と違って、アロサウルスの歯は打ち込むのには適しておらず、あくまで切断するようにできていると思うが。顎を大きく開いて、普通に噛み付くだけでもかなりの衝撃はあるだろうし、抵抗する獲物の力に耐えるように頭骨が頑丈にできているのは当然のように思われる。頸の筋肉が発達している、垂直方向の動きに適しているというが、それもサーベルタイガーと同じ動きをしたかどうかの決め手になるだろうか。とにかく噛み付いて、皮や肉を切り裂いて引きちぎることに重点があるのではなかろうか。肉片を引きちぎる時に、強い頸の筋肉が役立つのも当然ではないのか。(獲物を解体するときに、ハヤブサのように垂直方向に動かしたという説もある。肉片を引きちぎるために頭を上下に振ったのではないか。)つまり、頭を大きく上から振り下ろしたという部分はこだわらなくてもいいのではないか。
 大型の獲物を一撃で仕留めなくてもいいわけで、何度も切り裂いて深手を負わせる方が向いているように思える。さらに、獲物を殺すよりも肉片を切り取ることが目的という考えも既に出されているが、その方が納得できる。その点、マプサウルスのシーンは、大型の獲物が生きたままで肉片を収穫するという捕食行動が映像化されていて良かった。まあどちらも一つの考えを映像化してみせたものには違いなく、人によっていろいろな感想をもつだろう。
 「シノルニトサウルスの毒牙」についても既に否定的な意見が出されているし、ここで描かれていることは、絶対的に正しいとか未来永劫に変わらないものではないことに留意すべき点は他の科学ドキュメンタリーと同じだろう。
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