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アウカサウルス1


 アウカサウルスは、白亜紀後期カンパニア期にアルゼンチンに生息したアベリサウルス類で、1999年にネウケン州北東部で発見され、2002年に記載された。尾の先端部を除いてほとんど完全な全身骨格が関節状態で保存されており、アベリサウルス科では最も完全な標本である。2002年の論文は6ページの速報で、全身の骨についての詳細な記載はされていないが、尾椎、前肢、後肢について記載されている。
 アウカサウルスは、アベリサウルス科の中でもカルノタウルスと非常に近縁で、これら2属はアベリサウルス科カルノタウルス亜科カルノタウルス族Carnotauriniをなすと提唱されている。カルノタウルス族の共有派生形質は、尾の基部と中央部の尾椎にハイポスフェン・ハイパントラム関節をもつこと、頚椎のエピポフィシスに前方突起があることであるという。他にも烏口骨が非常に幅広い、撓骨・尺骨が極端に短いなどの特徴を共有するが、他のアベリサウルス類では見つかっていない部分も多いため不確定であるらしい。
 アウカサウルスがカルノタウルスと異なる点は、カルノタウルスよりも吻が長く、前眼窩窓も長い、前頭骨に角ではなく膨らみをもつ、上顎骨の歯の生えた縁の輪郭がS字状、などである。またカルノタウルスよりは前肢が長く、上腕骨の形状、血道弓の形状なども異なる。
 アウカサウルスの前肢は、アベリサウルス類では初めて完全に関節した状態で発見されたものである。カルノタウルスと同様に、上腕骨に大きな半球状の骨頭があり、撓骨・尺骨が非常に短く、中手骨も極端に短い。ただしアウカサウルスの前肢は、カルノタウルスほどには特殊化していない。上腕骨の軸は、よりほっそりしていて前後に偏平である。撓骨・尺骨の相対的な長さはより大きく、上腕骨に対する尺骨の比率はカルノタウルスでは25%であるが、アウカサウルスでは33%である。またカルノタウルスでは、撓骨の近位部に尺骨と接するカギ状の突起があるが、アウカサウルスにはない。
 カルノタウルスに基づくアベリサウルス類の復元図では、極端に小さいが4本指の前肢が描かれる。私もモミジのような小さな手に、尖った4本指と思っていたが、これが実は問題である。アウカサウルスの手には確かに4個の中手骨があるが、第1、第4中手骨の末端は円錐状で、指骨がないらしいという。第2、第3中手骨の末端には関節があり、それぞれ1個、2個の指骨がある。つまり指骨式は0, 1, 2, 0であって、全然4本指ではない。しかもこれらの指骨にカギ爪があったかどうかはわからないという。これに比べれば、ティラノサウルス科の2本指の方がまだ機能的に思える。するとアウカサウルスやカルノタウルスの手は、外見上はほとんど指が分かれていない、「孫の手」のようなものだったかもしれない。あるいは指骨の代わりに中手骨の先端が尖っていたのだろうか。

 2005年のマジュンガトルスを復元する際に、サンプソンはアウカサウルスを参考にしたと書いていたので、文献を調べてみたわけである。この論文には脛骨(ケラトサウリアでは足根骨と癒合する)は大腿骨より短いとあるだけで、比率は記されていない。全身標本の写真はないが全身骨格図を見る限り、特に膝から下が短くはなく、普通の体型にみえる。
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