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肉食の系譜
アスファルトヴェナトルとテタヌラ類の系統関係
Copyright 2019 Rauhut and Pol
アスファルトヴェナトルは、中期ジュラ紀の初めごろ(前期ジュラ紀の終わりトアルシアンから中期ジュラ紀のバジョシアン、Canadon Asfalto Formation)に、アルゼンチンのチューブート州セロ・コンドルCerro Condor村に生息したテタヌラ類で、おそらく最古のアロサウロイドと考えられている。Rauhut and Pol (2019) により記載された。
テタヌラ類はメガロサウルスから鳥まで含む最も繁栄した獣脚類のグループである。最古のテタヌラ類は中期ジュラ紀の初期に出現していたと考えられるが、その頃のテタヌラ類の化石記録はほとんどが断片的なもので、テタヌラ類の初期進化についてはよくわかっていない。近年の系統解析ではテタヌラ類の中に、3つの主要なグループを置いている。メガロサウルス上科(メガロサウルス科とスピノサウルス科)、アロサウルス上科(メトリアカントサウルス科、アロサウルス科、カルカロドントサウリア)、コエルロサウルス類である。この3つの系統関係について、また個々の種類の位置付けについては現在でも議論があり、確定していない。
(メガロサウルス上科のメンバーをメガロサウロイド、アロサウルス上科のメンバーをアロサウロイドと呼ぶ。)
アスファルトヴェナトルのホロタイプ標本は、この時代のテタヌラ類として最も完全なもので、分離した完全な頭骨と胴体の部分骨格からなる。前半身すべてと部分的な恥骨、後肢がある。全体にアロサウルスと似ており、頭骨が75-80 cm、推定全長は7-8 m である。
頭骨はアロサウルスとよく似て、涙骨の突起もあるし上顎のラインはまっすぐで頰骨の突起まである。アロサウルスの直系の祖先といわれれば納得するくらい似ている。さらに、下顎にはアロサウルスに固有の特徴とされていたantarticularという骨がある。
アスファルトヴェナトルの特徴は、以下の形質の組み合わせからなる。前上顎骨歯にはよく発達した後縁の鋸歯と非常に細かい前縁の鋸歯をもつ;後眼窩骨の背側に小さな角状突起がある;傍後頭骨突起と大後頭孔の間の外後頭骨に、顕著な水平の稜がある;下顎に骨化したantarticular がある;platycoelousな頚椎;第3と第4頚椎の神経棘が三角形で後方に傾いている;後方の頚椎に腹側のキールがなく、前方の胴椎にもほとんど発達していない;関節した中手骨部分は長さよりも幅が大きい;手の第3指は第1指、第2指と比べて顕著に小さい。などである。
最近の基盤的テタヌラ類の系統解析では通常、メガロサウルス上科がまず分岐し、アロサウルス上科とコエルロサウルス類が姉妹群をなすようになっている。ところがアスファルトヴェナトルには、従来メガロサウルス上科の共有派生形質と考えられた特徴と、アロサウルス上科の共有派生形質とされる特徴、さらには原始的なテタヌラ類の形質が、モザイク的に混じっている。
メガロサウロイドの特徴としては、上顎骨の上行突起に顕著な屈曲kinkがあること、内側が閉じた(貫通していない)maxillary fenestra 、後眼窩骨の腹方突起の後側に深い溝がある、後頭顆の下に幅広い窪みがある、歯骨の前端が拡がっている、などがある。
アロサウロイドの特徴としては、顕著なsupranarial fossa 、前眼窩窩に鼻骨が参加している、鼻骨に含気孔がある、鼻骨の側方のトサカcrestがある、区分されたlacrimal fenestra 、傍後頭骨突起が強く腹側方を向いている、などがある。
原始的なテタヌラ類の特徴としては、上顎骨の内側に含気性の窪みがない、頚椎の前方の関節面が平らである、肩甲骨が幅広い、がある。
さらにアスファルトヴェナトルは、これまで別の種の固有形質と考えられていた形質を併せもつ。外翼状骨の頰骨突起にある突起(ドゥブレウイロサウルスの固有形質)、第3頚椎の低く後方に傾いた神経棘(アフロヴェナトルの固有形質)、骨化したantarticular (アロサウルスの固有形質)である。
アスファルトヴェナトルを含めた系統解析の結果、基盤的なテタヌラ類の系統関係に大きな変化が生じた。まずメガロサウロイドとアロサウロイドが単系のカルノサウリアをなし、コエルロサウルス類はその外側にきた。またメガロサウルス上科のいくつかのグループは、単系のアロサウルス上科に対して順次外群となった(メガロサウルス上科は多系群となった)。つまりアロサウルス上科へと向かう系統の中から、スピノサウルス科、メガロサウルス科、ピアトニツキサウルス科の順に次々と分岐した形となった。アスファルトヴェナトルは特にアロサウルスと近縁ではなく、ピアトニツキサウルス科とメトリアカントサウルス科の中間段階という、微妙な位置にきている。つまりここではピアトニツキサウルスよりは派生的で、シンラプトルより基盤的ということになる。
ただしテタヌラ類の初期進化・放散の時期には、異なる系統の間で非常に多くの平行進化や収斂が生じているので、この系統関係を正確に推定するのは現在のところ非常に困難であると言っている。伝統的なメガロサウルス上科を保つ分岐図も、確率は少ししか違わないという。そのことが論文のタイトルにも表れている。
いずれにしても世界的に分布していたメガロサウルス段階の原始的なテタヌラ類の中から、同時多発的にアロサウロイド的なものが進化してきたのだろう。そこで個人的に思い出すのは中国の状況で、アロサウロイドに入るか入らないか微妙なものもいる。四川省のレシャンサウルスは最初中国の研究者によってシンラプトル科とされたが、後に欧米の大規模な研究(Carrano et al. 2012)ではメガロサウルス類とされた。しかし中国の研究でもそれなりにアロサウロイドたる根拠を示しているのだから、やはりモザイク的な種類なのではないだろうか。現在どうなっているのかわからないが、アジアのメトリアカントサウルス類(シンラプトル類)はやはりアジアの原始的テタヌラ類の中から進化してきたと考えたい気持ちはある。
参考文献
Rauhut, O.W.M., Pol, D. Probable basal allosauroid from the early Middle Jurassic Cañadón Asfalto Formation of Argentina highlights phylogenetic uncertainty in tetanuran theropod dinosaurs. Sci Rep 9, 18826 (2019). https://doi.org/10.1038/s41598-019-53672-7
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2021 池袋ミネラルショー
昨年に続いて海外の化石業者がほとんど来ないので、期待せずに行ったわけですが。それにしても、宝石とかの海外業者はたくさん来ているのにね。午前午後の入れ替え制でも、200人くらいが長蛇の列をなしていた。かなり密です。
パレオサイエンスでは、アンフィ合同会社さんがたくさん作った3Dプリンター模型を仕入れて、店頭に並べてあり、売れ行きは上々とのこと。1300円ですからね。3Dプリンターのおかげで非常に精巧なものが安く手に入るようになったのは、良いことです。私はとりあえずアロサウルスとサーベルタイガーを買っといた。頭骨の後部にチェーンなどを通す穴が付いているが、これをペンダントとしてカバンにつけてぶら下げたりしたら、素材的にたちまち壊れないか?という声がありました。
棚にもアンフィの骨格模型があり、ティラノ対トリケラは5万5000、ピューマ骨格が9800円。このピューマ骨格は価格の割に非常に精密にできていて、買うかどうか悩んだが、結局後回しにした。コロナ禍で、不要不急のものはなるべく買わないような消極的な癖がついているのかも。まあそのうち買うであろう。ティラノ対トリケラも今はやめておいた。
パレオ以外はハートオブストーンくらいしかなく、買えるものはあまりない。このパキケファロサウルスは43万、ケラトサウルスも44万。ガリミムスがあれば買えたが、残りの1個を所先生がお買い上げになったらしい。私はケラトサウルスが買えないので、アライグマさん頭骨を買った。
3階も厳しい状況で、北海道の化石として首長竜の同一個体の全身化石はあったが。博物館に持ちかけたが全身セットでは買ってもらえなかったという。その他、kasekiya やpaleopix fossilsも覗いてみたが買うものはなかった。
来年こそは、フルに海外業者に来て欲しい。Big John を販売して景気がいいはずのZoicとか、良い化石を持って来てほしいものである。
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