彦四郎の中国生活

中国滞在記

トランプの置き土産❷「台湾保証法」トランプ米大統領署名、「米台往来自由化」ポンペイオ長官表明

2021-01-15 16:44:46 | 滞在記

 2021年1月6日、米国トランプ大統領は中国習近平主席に、「民主主義の恥、民主主義の凋落」を深く全世界に印象付ける米国連邦議会への暴動示唆という置き土産を送る結果となった。中国政府はこれを嬉々として受け取った。

 そしてもう一つの置き土産もこの年末年始に中国と台湾に送った。「台湾保証法」への大統領署名である。これは台湾の蔡総統は喜びをもって受け取ったが、中国政府はこの置き土産に対して猛烈な抗議を表明した。

 2020年1月上旬の「台湾総統選挙」で、蔡総統は大きな支持を得て再選した。同年3月、米国のトランプ政権は台湾を外交面で支援する「台湾支援法」に大統領署名、蔡政権に対し、台湾の安全や繁栄を脅かす行動をとった国に、経済面などで待遇見直しなどの検討と実施を行うことを表明した。同法は米国国務省に対し、台湾との外交強化の取り組みについて議会に毎年報告を要求。台湾の国際機関への加盟やオブザーバー資格での参加を支援すべきだとも強調しており、昨年のWHOへの台湾加盟の働きかけも国連で行った。

 そして、2021年1月20日のトランプ大統領の退任を前にして、2020年12月27日、新たな「台湾保証法」に署名し成立した。この法案は、「台湾への武器売却の常態化や台湾の国際組織への参加支持を米国政府に促すほか、米国国務省への台湾との関係見直し(関係強化)などが盛り込まれている。同法は、1970年代の米台国交断絶後の台湾との関係を定めた「台湾関係法」を基礎に、さらなる関係強化を目指すことが目的とされる。

 武器売却の常態化で台湾の自己防衛能力の強化を支援する立場が示され、また、国務長官には成立から180日以内に、台湾と米国の高官による相互往来・交流を促す「台湾旅行法」の実施の状況などについて、上下両院の外交委員会に報告することを求めている。台湾側は翌日の28日に、「米国の行政機関と議会の超党派の友人が具体的な行動で台湾への支持を示してくれた」と謝意を表明。今後の米台関係強化に期待を寄せた。

 2021年1月9日、米国ポンペイオ国務長官は、台湾との高官級の接触規制を撤廃(廃止)すると表明した。声明でポンペイオ氏は、国務省では外交官などによる台湾側との交流に関する複雑な規制が数十年の間につくられたと指摘した上で、「米国政府は北京の共産党体制(政権)をなだめる目的でこのような措置を取り続けてきた。本日、私はこうした自主規制を全て解除すると発表する」と表明した。

 台湾はポンペイオ長官の発表を歓迎。台湾の駐米代表は「数十年にわたる差別が解消された。米台関係にとって意義深い日だ。どのような機会も大切にする」とツィッターに投稿した。また、台湾の安全保障関連当局者は、近年の米国の対台湾政策の中で最大の修正だと評価した上で、「地域問題や国際問題について米台が協力を強化している現状を反映している」と述べた。

 この米国の対中・台湾政策の一環として、米国国連大使のケリー・クラフト氏(女性)が、台湾を年始早々に訪問する予定だった。この訪問は、1972年以降では最高官の訪問となる。諸藩の事情で結局台湾訪問は中止されたが、1月14日に台湾の蔡総統とビデオ通話で会談した。蔡総統とのビデオ会談でクラフト大使は、新型コロナウイルスとの闘いにおける台湾の成功をたたえ、中国が台湾を国際機関から締め出していると非難した。

 中国はこの会談を非難。外交部の趙立堅副報道局長は記者団に対して、「中国はいかなる形式であれ、米国と台湾の公式交流には断固反対する」と述べた。

 トランプ政権は、バイデン次期政権が発足する前に、対中国強硬策を改めて打ち出しており、年末年始の今回の措置はその一環。トランプの最後の台湾、中国への「置き土産」だった。これに対して、中国外交部の趙立堅副報道局長や華春瑩報道局長は、「干渉、中国内政!抗議」「対台湾軍 米国常態化 不能容認」「特朗普 署名 "台湾保証法" 台湾謀 将促」「最後的"瘋狂"美国(米国)宣布対台湾驚異決定!」などと激しく会見で批判した。

 このトランプ政権下の4年間、国務長官のポンペイオ氏と副大統領のペンス氏の二人の最高官閣僚が、1972年以降から50年近く続けられてきた融和的「対米政策」を、根本的に変更をした立役者であった。トランプ大統領は弾劾裁判で有罪に値する人だが、「ポンペイオロス、ペンスロス」という2人を評価する声は国際的にもしばらく続くかもしれない。

 このポンペイオ氏とペンス氏に代わって、対中国・対台湾政策の舵(かじ)をとる人物が2日前の1月13日に発表された。バイデン次期大統領の政権移行チームは、国家安全保障会議(NSC)にアジア政策を統括する重要ポスト「インド太平洋調整官」を新設し、アジア通で知られるカート・キャンベル元国務次官補をこの大役に据えることを発表した。

 このキャンベル氏はかなり早い段階から中国の覇権拡大を警戒し、同盟国や友好国と連携して、中国の動きを封じる戦略を提唱していた人物として知られている。また、米国の2大政党「民主党」「共和党」の超党派の「対中国政策」の合意形成に尽力してきた人物でもあるようだ。バイデン次期大統領のアジア重視を示した人事との見方が強まっている。

 ※前号のブログで、「香港で52人を逮捕」という内容を記しました。この逮捕を昨年12月としましたが、「今年1月上旬(6日)」の間違いです。訂正します。