彦四郎の中国生活

中国滞在記

日本の新型コロナ疫情と菅政権、中国の疫情―台湾「民主的政策での成功を世界で誇りに思う」と元旦

2021-01-11 11:03:07 | 滞在記

 この年末年始、日本ではついに感染爆発が起きてしまった。12月24日のクリスマス前後の人出の多さがこの年末年始の感染爆発につながったとの報道もあった。11月・12月の二カ月間の第3波感染拡大でなんと10万人超の新規感染者があったが、大晦日から年明けにつれてさらなる感染爆発が起き完全なステージ4に。年末には菅首相や二階幹事長らの肝いりで推進してきた「go  to travel」は中断を余儀なくされた。感染してかなり症状が深刻になってきていても、病院に入院できず自宅で一人耐え忍んでいる感染者も多くなりつつあるようだ。入院できず、一人で自宅で苦しむ感染者のようすの記事などを見ると心が痛む。東京では医療崩壊が起きてきているようだ。

 一日の新規感染者数が7757人という日もこの一週間であった。「1万人越え」もそう遠きくないかもしれないと思えて来た。東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県に「緊急事態宣言」が1月7日に出されたが、それに引き続いて、おそらく関西の大阪府・兵庫県・京都府、さらに愛知県や福岡県などにも緊急事態宣言が出される可能性が高くなってきている。1月2日に京都市内の丸善書店の雑誌コーナーの『ZAITEN』という雑誌の表紙には、菅首相・二階幹事長・竹中平蔵の3氏の妖怪のような姿に鬼滅の刃の主人公が立ち向かう絵が描かれていた。

 菅内閣の支持率は11月頃から急落し始め、今はどの世論調査も40%前後まで落ち込んでいる。11月下旬の三連休を経て、12月上旬からの感染者が激増し始めた時期に、何の対策もとらなかった菅政権なので、支持率の急落はいたしかたがない。二階幹事長ら8人での都内の高級レストランでの菅首相の会食は、「5人以上の会食を国民の皆さんは控えてほしい」と会見したその日の夜の会食だったために、一気に菅氏への人間的信頼をも失った感もある。この会食に竹中氏も参加していれば、まさに雑誌表紙の絵となるのだが、他には政財界関係者やみのもんた氏、杉良太郎、王貞治氏らだった。

 東京の「PCR検査センター」に並ぶ人の行列。3万円くらいで検査が受けられるようだが、感染対策の基本はやはりこのPCR検査の広範な国民への無料実施だと私は思う。無症状感染者(陽性)などを減少させない限り、感染拡大状況はいつまでも続き、好転していかない。もちろん「三密回避」の国民意識も重要だが。イギリスでは一日に5万人の新規感染状況が続いていて、「もうどうしようもない」という悲鳴が聞こえてくる。変異種株の新型コロナウイルスの蔓延で深刻も深刻だ。このPCR検査の即時実施と危機感をもっての迅速な対応で、その都市や地区の感染拡大を抑制し、小規模でもクラスターが起きるたびに対応している中国の方式は日本政府も見習うべきこともあるかと思う。

 年明けとなった日本では、年末にイギリスから入国した30代男性が、自宅隔離中に都内の飲食店で友人・知人と会食し、会食をともにした男女2人がイギリス型変異種に感染していることが判明した。市中感染だ。この帰国者との濃厚接触者は10人ほどらしい。また、ブラジルから入国した男女4人の空港検査での陽性結果は、イギリスや南アフリカ発症の変異種株とはまた違った変異種株と発表されている。ブラジルでは1日の新規感染者は20万人と報道されていた。(※1月10日時点で、日本国内で確認された変異種株の感染確認は34人。)

 中国では自国製ワクチンの接種が始まり、年末までにはすでに900万人超の人への接種が行われたと報道されていた。まず、主に医療関係者や公共交通関係者、輸入冷凍食品を扱う関係者を優先しての接種のようだ。北京市内で接種を受けるために、接種会場に向かう長蛇の列の動画が配信されていた。

 その中国でも、北京市に隣接する河北省の石家荘市で、新型コロナウイルスの変異種の陽性反応の感染者が見つかってきた。イギリス型でも南アフリカ型でもない、ロシアからの変異種らしいと変異ウイルスの写真とともに報道されていた。

 中国では年明けになって、約8カ月ぶりに「都市封鎖」が行われている。北京市を取り囲むように位置する河北省。その省都「石家荘市」に「戦時体制」が通告され、都市封鎖の措置がとられている。昨年の11月ごろから、遼寧省の大連市や瀋陽市、北京市などで地区封鎖は行われていたが、都市封鎖までとはいかなかった。石家荘市の感染者数は1月2日からの6日までで150人を超えた。

 6日未明からの2日間で、全市民1100万人のPCR検査を実施、その結果このPCR検査で新たに354人のウイルス陽性者をあぶりだしている。8日からは全市民の7日間の自宅からの外出禁止、市街への移動禁止措置(市街への車の移動禁止、市内の公共交通も停止)を実施している。市当局が10日に発表したⅠ日の新規感染判明者は46人。現在、濃厚接触者など11700人を集中隔離している。また、第二回目のPCR検査を全市民対象に実施する予定だとしている。

 石家荘市では昨年12月、市長や市副書記が規律違反の罪で更迭されている。市長代理となった人が陣頭指揮をとって感染抑制に強力に取り組んでいることが中国のインターネット記事が連日掲載されている。1月8日の「日本文学作品選読」のオンライン授業で、この河北省出身の学生と話した。帰省は1月18日に予定したようだが、感染状況が心配だと話していた。

  香港での感染拡大は12月から深刻化してきていて、1日の新規感染者が100人を超える日もあったが、少し鎮静化しつつあるようだ。一昨日は一日の新規感染者数が40人程度となったと報道されていた。

 中国での今年の春節は2月12日からだが、2週間前の今月の28日あたりから帰省ラッシュや旅行などの「民族大移動」が始まるもようだ。昨年の春節開始日は1月25日だったので、その2週間前の1月10日頃から民族大移動が始まっていたこととなる。中国政府が「ヒト―ヒト感染」を発表したのは、1月20日だった。そして武漢閉鎖は1月23日、ほぼ「春節」を挟んでの民族大移動の前半が終了するころだった。2019年の12月20日頃には、「ヒト-ヒト感染のSARS型新型コロナウイルス」であることが武漢では判明していたようなので、まさに失われた1か月間の対応だった。

 2003年の「SARSコロナ」と2012年の「MARSコロナ」の場合は、東南アジアの一部地域での感染拡大に抑制できたのだが、今回は世界的爆発的感染パンデミックとなっている。この教訓もあり、今回の石家荘市での都市封鎖はかなり迅速で強力な対策がとられている。

 河北省に取り囲まれる位置にある北京市でも再び防疫対策が強化されてきている。今回、再びの「都市封鎖」をしてでの感染抑え込みができれば、中国としてはもワクチン開発や経済復興でウイズ・コロナの世界における救世主として印象付ける絶好の機会となる。北京や河北省での対策厳格化にはそんな事情もあるようだ。

◆このような世界の第2波~4波感染爆発パンデミック、新型コロナウイルスの変異種の急拡大、日本の「緊急事態宣言」、中国の感染状況、という1月上旬。このため、中国の大学からの、私への中国渡航要請は早ければ「2月上旬に渡航してほしい」かと予測もしてきているが、コロナの状況の変化で、またまた不透明になってきている感がある。

 12月30日、台湾の蘇貞昌行政院長(首相)は、台湾の新型コロナウイルス対策について、いち早い情報の公開が成功の鍵となり、一方的で強引な方法を用いた中国に「差をつけた」と述べ、台湾の一員であることを誇りに思うと称賛した。また、蘇氏は「過去には政治的な理由で台湾を見下す国もあったが、今回のコロナ対策を通じ、民主的で自由な情報公開をする国家が未知の感染症に対抗する上で、どれほど役に立つかを世界に知らしめたとした上で、今後も一致団結して自分や家族、そして国を守ろう」と国民に呼びかけた。

 1月1日、台湾の蔡総統は中国政府に、「対等な関係での対話」を呼びかけた。しかし、中国政府はこれに対して無視を決め込んでいるし、中国国内のさまざまなメディアは「何を言うか、この台湾独立分子の親玉が!何が対等だ!」という論調だ。

 中国での昨年11月から今年にかけてのインターネットのさまざまな局(サイト)や記事を毎日閲覧しているが、アメリカのトランプ大統領と台湾の蔡総統への非難記事が連日溢れている。昨年の11月24日、中国の安徽省の裁判所では、中国と台湾の学術交流など長年関わってきていた台湾の著名な学者(台湾師範大学元教授の施正屛氏)にスパイ罪の罪状で懲役4年の実刑判決を言い渡している。施氏は2018年8月から「行方不明」となっていた。

 「新型コロナ抑制克服勝利と経済復興」を世界のどの国よりいち早く成し遂げたことを挙げ、中国の政治体制が「西欧の民主主義」より優れているというキャンペーンを昨年の後半から強化してきている。このため中国国民も改めてこのような意識を強く持ち始めてきているようだ。

 昨年の9月下旬、日本の自民党内の有志たちが、「武漢発の新型コロナウイルスの拡散、その隠蔽によって、これだけ世界が大被害を受けているなもかかわらず、反省の色が全く見られない。本来は謝罪すべきではないでしょうか」と会見に臨み、習近平主席の"国賓来日"の中止を求める決議を行っているもようが日本のテレビで報道もされている。さあ、2021年、日中関係はどうなっていくのか。