MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

佐藤=ロスベアグ・ナナ『文化を翻訳する:知里真志保のアイヌ神謡訳における創造』

2011年04月04日 | 翻訳研究

佐藤=ロスベアグ・ナナさんの『文化を翻訳する:知里真志保のアイヌ神謡訳における創造』(サッポロ堂書店)(定価2000円+税)を頂いたのでとりあえず内容を紹介します。本書は著者の学位申請論文「知里真志保のアイヌ神謡訳における創造-アイヌ文化とパフォーマンスを翻訳する」(2007)を基に、加筆修正をしたもの。藤井貞和さんによる推薦のことばと目次はこちら

知里真志保はアイヌとして初めてアイヌ研究を行った「ネイティブ人類学者」である。著者によれば、本書の主題は「知里真志保が、1950年代から精力的にはじめる、アイヌ神謡の文化的背景をも含みこんだ翻訳」とその周辺であり、既存の真志保研究とは「異なる観点から考究するひとつの冒険的試み」である。
全5章の構成は、「第一章では真志保の伝記的な側面と、真志保とアイヌ語、そしてアイヌ文化との関係、…アイヌの世界観」を論じ、「第二章では、第二次世界大戦後の日本における近代主義再評価の流れの中での、真志保の詩人との関係について、詩人たちの詩論と翻訳論に言及しながら考察する」。「第三章では、(…)彼が想定したアイヌのシャーマニズム(…)、アイヌ神謡の「原作」としての「起源」(…)、真志保と折口信夫との接点(…)、アイヌ神謡からアイヌの歴史を読み解こうとした、真志保の試みにも踏み込む」。「第四章では、真志保の50年代までの翻訳を(…)アピア・クワメ・アンソニーの「厚い翻訳」の概念を用いて考察し、真志保の創造性を織り交ぜた、パフォーマティヴ・トランスレーション」を、そして「第五章では、翻訳者としての真志保の可視性と、彼が行った神謡の文化翻訳が生み出す未来性について検証する」。

なお、本書は一般書店では購入しにくいかもしれませんので、購入希望の方はサッポロ堂書店まで直接連絡して下さい。メールアドレスは以下の通りです。sapporodo@jeans.ocn.ne.jp


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