MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

ぬかるみ続く

2009年07月06日 | 雑想
更新が少し間遠くなってしまったが、「「翻訳学入門」を読む」の授業の準備が大変なのだ。おそらく最大の難関である第10章「翻訳の哲学的理論」はGeorge Steiner, Ezra Pound, Walter Benjamin, Jaques Derridaを扱う。準備する側にとっても受講者にとっても悪夢であろう。まあデリダはあの調子で仕方ないが、スタイナーもベンヤミンもちょっとひどくないか。特に問題なのはベンヤミンの例の「翻訳者の使命(課題)」(デリダのDes Tours de Babelはその「翻訳」(もちろん比喩だが)ということになっている)というテクストだ。ドイツ語原文は読めないので2種類の英訳と4種類の邦訳を付き合わせながら論理を辿ろうとして分かったのが、これはちゃんと書いていない。論理的に書こうとしていない。とりわけ逐語訳という方法を導き出すところの記述は混乱を極めている。それでもおぼろげながら言いたいことは分かる。ただ、そこを翻訳研究の視点から主題的に扱ったものは見たことがない。(Jacobsやde Manの論考は的はずれに思えるし、もっとも長いと言われるAndrew Banjaminのものもあまり感心しなかった。)それから一つ疑問に思ったのは、ベンヤミンは果たしてソシュールを呼んでいただろうかという点だ。読むことは可能だったはずだが、どうも読んだ形跡がない。
そんなことをぐだぐだやっているのですが、まあしかし、QuineやDavidosonが出てこないだけでもましかもしれない。

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