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愚か者の哲学 (竹田青嗣 著)

2004-12-19 10:04:33 | 書評
プチ哲学は流行ってしばらくたつが,この本も哲学的バックグランドが,現代を我々が生きていくことに対しての助言を過去の偉人の言葉を引用しつつしているという意味ではその類いかも知れない。
人生を「子供」「若者」「大人」の三つの段階にわけ,その時の心情,行動をうまく説明していると言える。わたしもすでに大人になってしまっているから,逆に子供の頃の心情をこのように表現されると強く納得させられるものがある。
たとえば子供がイタズラをするのはルールをおぼえるためのものであるとか,子供には誉められたいという自己愛があるとか…。そういうのを「すべての人間は生まれながらに,しらんことをほっす」というアリストテレスの言葉,「自己愛は,あらゆるおべっか使いの中でもっとも強力」というラ・ロシュウフーコーの言葉など。挙げるときりがないので止めておくが,多くの言葉が引用されている。そういえば,説得力がある文章を書く人は,多くの引用をするが,単純に結論を言うよりも,多くの引用を挙げていくということは重要なのかも知れない。
ところでこの本は序章で「愛せない場合は通りすぎよ」というニーチェの言葉を挙げているが,最後の章の大人の哲学では,多くの失望や怒りに対してどう向かい合うか?…に多くのページを裂いている。それは結局のところ人間は子供から若者という成長を通りすぎた後は多くの失望が待っている…ということで,そこで如何に自分を見失わずに生きていけるか?…と言うことなのかも知れない。事実自分の周りで同じ年代の人達を見るとルサンチマンをもって生きている人というのは意外に多い。そして彼らは決して幸せのようには見えない。そういう意味では,ルサンチマンをもたないため,そしてニヒリズムを克服するために,こういう本を読むということはいいのかも知れない。
そういう意味では体系的なちゃんとした哲学の本ではないが,実践学という意味で,ここに書かれていることを頭にいれておくのはいいことかも知れないと思う。
コメント
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