武産通信

東山三十六峰 月を賞で 雪を楽しみ 花に酔う

植芝盛平伝(5)

2013年07月09日 | Weblog
 合気道開祖植芝盛平の守護神『建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)』物語

 八岐の大蛇(やまたのおろち)

 天照大神の弟の須佐之男命は高天原から追放され、遠い出雲の国に降りました。
 出雲の簸の川を歩いていると川上から箸が流れてきたので上流には人が住んでいると思い、歩いて行くと美しい少女と老夫婦が泣いていたのでその理由を聞きます。
 老人は「私は大山津見神の子で足名椎(あしなづち)で、妻は手名椎(てなづち)、娘の名は櫛名田比売(くしなだひめ)といいます。私たちには八人の娘がいましたが、この地には恐ろしい高志の八岐の大蛇という大蛇が毎年出てきて、娘を一人ずつ食べてしまうのです。いままたその時期となりこの娘も食られるかと思うと、悲しくて泣いているのです」と言います。
 須佐之男命はその八岐の大蛇はどの様なものか尋ねると、足名椎は「その身体は一つで、頭が八つあり、尾が八つあり、身体には苔や桧、杉が生い茂り、目はほおずきのように赤く、その長さは八つの谷と八つの峯にわたるほどで、腹はいつも全体に血が流れ真っ赤にただれています」と言います。
 それを聞いた須佐之男命は「それならその大蛇を退治してやろう、安心しなさい。私は天照大神の弟で今高天原からここに降りてきたばかりだ。そなたの娘を私の嫁にくれないか」と言うと、老夫婦は「それならば、おそれ多いことですが娘をさしあげましょう」と言いました。
 須佐之男命は少女を櫛に化身させて自分の髪に刺し、足名椎と手名椎に強力な酒を作らせ、垣で囲み、垣に八つの門を作り、それぞれの門に八つの棧敷(さじき)を作り、その棧敷ごとに酒が入ったかめを置いて大蛇が来るのを待ちました。
 間もなく天地をとどろかせ、空の曇り、生臭い風があたりをつつみ大蛇が現れました。大蛇は大好物の酒の臭いで八つの門に頭をつっこんで酒を飲み干し、酔いつぶれてぐっすりと寝込んでしまいました。
 須佐之男命は大蛇に忍び寄り、十拳剣(とつかのつるぎ)を振って大蛇をずたずたに切り刻みました、なおも尾の方まで切り進んでいくと中から一振りの太刀が現れました。
 大蛇のいた所にはいつも叢雲がたなびいていたのは、この剣のためであったかと思い、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と名づけ、のちに天照大神にお詫びとしてこの太刀を献上しました。

 この天叢雲剣は、のちに草薙剣(くさなぎのつるぎ)とよばれ皇室の三種の神器のひとつになる。
 因みに、岩間の合気神社に建速須佐之男命とともに奉祭される速武産大神(はやたけむすおおかみ)は、またの名を天叢雲九鬼沙牟波羅竜王(あめのむらくもくきさむはらりゅうおう)という。

 石見神楽(いわみかぐら)

 石見神楽は、島根県西部の石見地方に古くから伝わる伝統芸能である。五穀豊穣に感謝し、毎年秋祭りに氏神様に奉納されてきたが、時代とともに石見人の気質にあった勇壮にして華麗な郷土芸能へと進化した。活発華麗な舞と、荘重で正雅・古典的な詞章が特徴で、方言的表現、素朴な民謡的詩情とともに独特のものをつくりあげている。
 廃れ忘れられていく伝統芸能が多い中、石見神楽は老人から子供まで大人気。そのスケールの大きさとダイナミックな動きに圧倒される『大蛇(オロチ)』」を含め演目は30種類以上にのぼり、例祭への奉納はもとより各種の祭事、祝事の場に欠かすことのできないものとなっている。
 大蛇は「石見神楽の華」と称されるほどの花形演目で、多くの神楽上演において最終演目として披露される。日本神話における須佐之男命の八岐の大蛇(やまたのおろち)退治を題材とした内容で、数頭の大蛇が須佐之男命と大格闘を繰り広げる。

 石見神楽の中にあって一種特別な特徴を持っている大元神楽(おおもとかぐら)。邑智郡一帯に伝わるこの神楽は、大元神を祀る各社祠において、五年、七年、もしくは十三年に一度行われる式年祭に際して舞われる。よって神楽自体も極めて神事色が強く、祭礼神事に加えて神事的な舞の部分については基本的には神職がこれを担い、そして着面による神話劇風な能舞部分についてはそれぞれの地の一般有志から成る石見神楽団が演じるという混成型の神楽となっている。本来神楽とは、場を清め、神を招き、神の出現を経てお告げを受ける、という意味を持った神事である。他ではほとんど見られなくなったこの「お告げを受ける」を現出する場面が、ここでは『綱貫(つなぬき)』という演目で現される。このような稀有な特徴と、江戸時代初期の元和元年(1615)まで確実に遡る確かな由緒などから、神職が担う神事的な舞の部分が国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 祇園祭の宵山に八坂神社で石見神楽の奉納がある。午後6時30分開演。
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