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武産通信

東山三十六峰 月を賞で 雪を楽しみ 花に酔う

奥の細道(8)  飯塚

2009年08月30日 | Weblog
  柿衛本 「おくのほそ道」  飯塚

月の輪のわたしを越えて瀬の上と  云宿(しゅく)に出(い)づ。佐藤庄司が旧跡は

左の山際(やまぎわ)一里斗(ばかり)にあり。飯づかの  さと鯖野(さばの)と聞て尋(たづね)/\行に

丸山と云(いう)所に尋あたる。是、庄司が  旧跡也。梺(ふもと)に大手(おおて)の跡など人の教

にまかせて泪を落し、又、かたはらの  古寺(ふるでら)に一家の石碑をのこす。中

にも二人のよめがしるし先哀(あはれ)也。  女なれどもかひ/゛\しくも名の世に

聞えつる物かなと、袂(たもと)をぬらしぬ。堕涙(だるい)の  石碑も遠きにあらず。寺に入て

茶を乞へば、為(ここ)に義経の太刀(たち)  弁慶が笈(おい)をとゞめて什物(じゅうもつ)とす。

  笈も太刀もさつきに飾れ帋幟  (おいもたちも さつきにかざれ かみのぼり)

五月(さつき)朔日(ついたち)の事也。其夜(そのよ)飯塚にとまる。  温泉(いでゆ)あれば湯に入て宿を借て

土座(どざ)に莚(むしろ)を敷てあやしき貧  家(ひんか)なり。燈(ともしび)もなければいろりの火(ほ)かげ

にね所(どころ)をまうけてふす。夜に入りて  雷(かみなり)鳴、雨しきりに降てふせる上

よりもり、蚤(のみ)蚊にせゝられて眠らず。  持病さへおこりて、消(きえ)入斗(ばかり)になん。

みじか夜の空も漸(ようやく)明れば、また  旅立ぬ。猶(なお)夜の余波(なごり)心すゝまず。

馬かりて桑折(こおり)の駅に出(いづ)る。  はるかなる行末をかゝえて

かゝる病(やまひ)覚束(おぼつか)なしといへど、羇旅(きりょ)  辺土の行脚、捨身(しゃしん)無常の観念

道路に死なん、是(これ)天の命(めい)也と気力  聊(いさゝか)とり直し道縱横(じゅうおう)に踏て伊達(だて)

の大木戸をこす。


句:弁慶の笈や義経の太刀がこの寺にあるというが、もう端午の節句だから紙幟を立て、笈や太刀を飾って祝ったらよいだろう。

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合気道技法(1)

2009年08月27日 | Weblog
 気勢を充実し足を六方に開き半身入身合気の姿勢を以て相手に対す。
 総て構えは時、位置、土地の高低、其の時の勢等に因り自然に起るものにして常に構えは心にあるものとす。
 足の踏み方には外六方、内六方及び外巴、内巴あり。

 練習に際しては相手の構え、相手との間合を考へ左或は右の構えを用ふ、動作の終りし時両足は常に六方に開きある如く練磨するを要す。
 相手に正対するは隙多きを以て不利とす。


一、座り業 正面

仕  右手刀で面を打ち左で脇突く同時に腰上げる

受  右手で相手の右手を受ける

仕  相手の受けた右手首をとり左手で左肘掴み同時に左膝少し進めながら右手引倒し左手で肘おさへる


資料:植芝盛平「武道練習」昭和7年

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奥の細道(7)  須賀川

2009年08月22日 | Weblog
  柿衛本 「おくのほそ道」  須賀川

とかくして越行まゝに、あぶくま川  をわたる。左に会津(あいづ)ね高く右に

岩城(いわき)、相馬(そうま)、三春(みはる)の庄、常陸(ひたち)、下野(しもつけ)の

地をさかひて山つらなる。かげ沼と  言所を行に、けふは空くもりて

物かげうつらず。すか川の駅に  等窮(とうきゅう)といふものを尋(たずね)て四五日も

とゞめらる。先(まづ)白川の関いかにこえ  つるやととふ。長途のくるしみ身

心つかれ、且(かつ)は風景に魂うばは  れ懐旧に腸(はらわた)を断て、はかばかし

うおもひめぐらさず。

  風流の初やおくの田植歌  (ふうりゅうの はじめやおくの たうえうた)

無下(むげ)にこえんもさすがにと語れば  脇、第三とつゞけて一巻となしぬ。

此宿(しゅく)のかたはらに大(おおき)なる栗の木  かげを頼(たのみ)て世をいとふ僧あり。橡(とち)拾ふ

みやまもかくやと静(しずか)に覚えられて  ものに書付侍る。其詞(そのことば)

    栗といふ文字は西の木と書て西方  浄土に便(たより)ありと行基菩薩の

    一生杖にも柱にもこの木を用ひ  給ふとかや。

  世の人のみつけぬ花や軒の栗  (よのひとの みつけぬはなや のきのくり)
 
等窮が宅を出て、五里斗(ばかり)、桧皮(ひはだ)  の宿を離れてあさか山あり。道

よりちかし。此あたり沼おほし。かつみ  刈比(かるころ)もやゝちかうなれば、いづれの草

か花かつみとハ云ぞと人々に  たづね侍れども更(さらに)に知人なし。沼を

尋(たづね)人にとひかつみ/\と尋ありきて  日は山のはにかかりぬ。二本松より

右にきれて黒塚の岩屋一見し  福嶋に泊る。明ればしのぶもぢずり

の石を尋て忍ぶのさとに行。遥(はるか)山陰  の小ざとに石の半(なかば)土にうづもれて

あり。里の童(わらべ)来(きたり)て教ける。むかしは  此山のうへに侍しを往来(ゆきき)の人の麦

草をあらして此石を試(こころみ)侍をにくみて  此谷につきおとせば石の面(おもて)下ざ

まにふしたりといふ。さもあるべき事也。

  早苗とる手もとやむかし志のぶ摺  (さなえとる てもとやむかし しのぶずり)


風流の句:陸奥への風流の第一歩は、ひなびた田植歌から始まった。いかにも奥州らしい趣である。

世の人の句:栗の花は地味で目立たず、世人の目にとまらない花だが、その栗の花を軒端に咲かせているこの庵の主は、いかにもゆかしいことである。

早苗とる句:早苗をとる早乙女たちの手つきを見ていると、昔、このあたりでしのぶ摺りをした手つきもあんなであったろうかと偲ばれる。

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