瀬崎祐の本棚

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雨期  63号  (2014/08)  埼玉

2014-10-03 22:11:22 | 「あ行」で始まる詩誌
 創刊から30年以上が経つ須永紀子編集発行の詩誌。58頁の今号には9人の詩、4人のエッセイを載せている。

 「一月」古内美也子。
「冷気に銀の櫛を挿す一月」と、研ぎすまされたような感覚が暗い夜の光景に満ちている。「なか空と/くろい水の上と/ふたつの月がみつめあう/草枕に/融けたひかりの/滋味深い一行が/差しこまれる」

 「銀河水路」谷合吉重。
確かに足をつけている土地があり、そこでの生があり、そこに歴史的な時間の堆積がある。具体的な表記の持つ力は圧倒的で、その背後に抱えたものの重みも押し寄せてきている。

 「青猫はうなる」唐作桂子。
一読すると軽やかな感じなのだが、同時に妙な不安感がつきまとってくる。おそらく、規則だらけの世間のなかではそんなことだらけなのだ。「墓地のあいだにわたしたちは/かろうじて住んでい」て、剥製の青猫が「むおんでうなる」のだ。

 「ガーゴイルⅡ」須永紀子。
怖ろしい形象を持ちながら水を吐き続ける像に仮託して、「口から液体があふれて止まらない/古い感情が吐き出されているのだ」と、話者の思いが巧みにあらわされている。それは自らのぞんだ行為などではなく、「風が止むまで/解けない呪い」でもあるのだ。鋭く向かってくるものがある。
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