和田まさ子の個人誌。14頁。表紙絵は軽快でおとぎ話のような雰囲気のフィリップ・ジョルダーノの作品。毎号楽しい。
「イヴの抽斗」はゲストの井坂洋子の作品。それぞれ「ある日、」ではじまる4連から成る。抽斗の中には4つの日の出来事が入っていて、それは亡くなった人の詩を読むことだったり、覚醒と睡眠の間にいることだったりする。ある日、ゆで栗の甘皮をむいて食べると、
絹雲のセロファンがはがされ
何くわぬ顔の
充益した無があらわれる
うすあおい空は
無辺際の柩のようだ
何気なく生活しているようで、実は自分はこんなにも切実なものを抱えていたのだと思わされる。感覚を研ぎ澄ませれば、自分が主人公になった物語で毎日が紡がれていることがわかる。
和田は3編を載せているがその中から「窓を増やす」。読書をしていた部屋には陽が差し込み、「からだはあやうい川を渡るのを免れたが/薄いシーツにつまず」くのだ。言葉だけではない実生活では、いろいろなことが起きるのだ。
耳の迷路で歩きまわり
手を熱くしながら
窓という窓に石を投げる
割って割って、どんどん家に穴を開ける
灰汁のような夜の水があふれ出てきた
この作品でも、自分がこの世界で生活しているということを見つめ直せばこんなにも物語が溢れているのだということに気づかせてくれる。そのためには、その日の出来事とただ向き合うのではなく、それが自分に突きつけてくるものを見つめなければならない。しかし、その物語が自分にとって大切なものなのか、それとも気づかない方がよかったものなのかは、誰にもわからないことではあるのだが。
「イヴの抽斗」はゲストの井坂洋子の作品。それぞれ「ある日、」ではじまる4連から成る。抽斗の中には4つの日の出来事が入っていて、それは亡くなった人の詩を読むことだったり、覚醒と睡眠の間にいることだったりする。ある日、ゆで栗の甘皮をむいて食べると、
絹雲のセロファンがはがされ
何くわぬ顔の
充益した無があらわれる
うすあおい空は
無辺際の柩のようだ
何気なく生活しているようで、実は自分はこんなにも切実なものを抱えていたのだと思わされる。感覚を研ぎ澄ませれば、自分が主人公になった物語で毎日が紡がれていることがわかる。
和田は3編を載せているがその中から「窓を増やす」。読書をしていた部屋には陽が差し込み、「からだはあやうい川を渡るのを免れたが/薄いシーツにつまず」くのだ。言葉だけではない実生活では、いろいろなことが起きるのだ。
耳の迷路で歩きまわり
手を熱くしながら
窓という窓に石を投げる
割って割って、どんどん家に穴を開ける
灰汁のような夜の水があふれ出てきた
この作品でも、自分がこの世界で生活しているということを見つめ直せばこんなにも物語が溢れているのだということに気づかせてくれる。そのためには、その日の出来事とただ向き合うのではなく、それが自分に突きつけてくるものを見つめなければならない。しかし、その物語が自分にとって大切なものなのか、それとも気づかない方がよかったものなのかは、誰にもわからないことではあるのだが。