著者は16冊の詩集を出しており、すでに「花」「泉」「風」という3冊の自選詩集も出している。今回の詩選集は340頁という大冊に、16冊の詩集からの作品79編と長編詩1編を収めている。圧巻というほかはない。
私事になるが、私(瀬崎)は昭和46年の第4詩集「教室詩編」を持っている。おそらく「現代詩手帳」年鑑に掲載された詩集の中の作品を読んで、詩集がほしくなり購入したのだろうと思う。同誌集は私家版となっているので、(記憶にはないのだが)林氏に手紙を書いて送ってもらったのかも知れない。それから30年が経ち、再び詩を書き始めた私は10年前ほどにはじめて林氏にお会いした。ああ、この方が「教室詩編」の林嗣夫氏かと思ったものだった。
作品はどれも少し怖ろしい物語を伝えてくる。しかし作品は、単に異界を提示するだけではなく、それとともにやわらかな抒情性をも伝えてくる。そこが独特の魅力となっている。詩集「教室詩編」から「試験期」の最終部分を紹介しておく。
試験の当日になると、少女たちの出血は、まるで潮が引くようにいつの間にかやんでい
る。時に長びいてとまどっている少女を見うけることもあるが、それはまれだ。(略)そ
うして答案を書きあげた順に、少女は堅く変色して死んでいくのである。試験を受けてい
姿勢のままで、あるいは立ち上がろうとしてついよろけ、腰掛けにもたれて息絶える。や
っとのことで教室を走り出た少女は、手洗いの横の廊下に倒れていたり、ネコのように行
方不明になったりする。
私事になるが、私(瀬崎)は昭和46年の第4詩集「教室詩編」を持っている。おそらく「現代詩手帳」年鑑に掲載された詩集の中の作品を読んで、詩集がほしくなり購入したのだろうと思う。同誌集は私家版となっているので、(記憶にはないのだが)林氏に手紙を書いて送ってもらったのかも知れない。それから30年が経ち、再び詩を書き始めた私は10年前ほどにはじめて林氏にお会いした。ああ、この方が「教室詩編」の林嗣夫氏かと思ったものだった。
作品はどれも少し怖ろしい物語を伝えてくる。しかし作品は、単に異界を提示するだけではなく、それとともにやわらかな抒情性をも伝えてくる。そこが独特の魅力となっている。詩集「教室詩編」から「試験期」の最終部分を紹介しておく。
試験の当日になると、少女たちの出血は、まるで潮が引くようにいつの間にかやんでい
る。時に長びいてとまどっている少女を見うけることもあるが、それはまれだ。(略)そ
うして答案を書きあげた順に、少女は堅く変色して死んでいくのである。試験を受けてい
姿勢のままで、あるいは立ち上がろうとしてついよろけ、腰掛けにもたれて息絶える。や
っとのことで教室を走り出た少女は、手洗いの横の廊下に倒れていたり、ネコのように行
方不明になったりする。