個人詩誌3冊を紹介する。
「地上十センチ」は和田まさ子発行。18頁で表紙絵は毎号カラフルで楽しいフィリップ・ジョルダーノのもの。今号のゲストは尾久守侑だった。
「新宿」和田まさ子。マッサージをしてもらうと皮膚がやわらかくなり苔が発育してきた。世間と接触するには、皮膚よりも苔の方が快感なのでおとこに水を掛けてもらう。そして胞子を飛ばして女子学生たちも苔玉にしてやる。東京の中でも猥雑な街である新宿に出現した苔が楽しい。
新宿
ゴッホの自画像は苔むしている
ざらりとした世界の果てに生きながらえて
ニンゲンたちを
呼び止めては立たせ
冷え冷えと見ている
「CROSS ROAD」は北川朱実発行。16頁で表紙写真は今はなくなったというジャズ・カフェの夜景である。毎号、ジャズプレイヤーと作家についてのエッセイが載る。今号はディジー・ガレスピーと高井有一だった。
「三月の砂」北川朱実。公園の砂場では男児が丸い玉を作っては「バクダン!」と叫んで崩していた。人は、どうしようもなく何かを壊す生きものなのだろうか、と思えてくる。夕暮れになり私も帰る。
男児はあれからどうしたのだろう
小さな泣き声が
ゴッホの黄色のような
ことばにできなかったものを連れて
淡い光の中を歩いていく
話者のなかにもある破壊衝動が見つめられている。
「空離須」は吉田広行発行。A4用紙を三つ折りにした体裁。
「EIGA・栄華の日々」と題したエッセイでは、ビクトル・エリセ監督の新作「瞳を閉じて」を紹介していた。あのアナ・トレントも55歳になったとのこと。観なくては。
「春のらせん」吉田広行。春には何人もの人が発っていく。らせんのような激しい風も吹くのだ。
だが わたしたちはどこへも
たち去らない
この光の
澱のなか
別れるべき息を送りだし
なにかあたらしい
空間へ
切り開かれてゆくことを希望いながら
春という季節のなかでどこか途惑っている話者がいる。明るく軽やかな季節の中に潜んでいる死のイメージが切ないものを連れてくる。
「地上十センチ」は和田まさ子発行。18頁で表紙絵は毎号カラフルで楽しいフィリップ・ジョルダーノのもの。今号のゲストは尾久守侑だった。
「新宿」和田まさ子。マッサージをしてもらうと皮膚がやわらかくなり苔が発育してきた。世間と接触するには、皮膚よりも苔の方が快感なのでおとこに水を掛けてもらう。そして胞子を飛ばして女子学生たちも苔玉にしてやる。東京の中でも猥雑な街である新宿に出現した苔が楽しい。
新宿
ゴッホの自画像は苔むしている
ざらりとした世界の果てに生きながらえて
ニンゲンたちを
呼び止めては立たせ
冷え冷えと見ている
「CROSS ROAD」は北川朱実発行。16頁で表紙写真は今はなくなったというジャズ・カフェの夜景である。毎号、ジャズプレイヤーと作家についてのエッセイが載る。今号はディジー・ガレスピーと高井有一だった。
「三月の砂」北川朱実。公園の砂場では男児が丸い玉を作っては「バクダン!」と叫んで崩していた。人は、どうしようもなく何かを壊す生きものなのだろうか、と思えてくる。夕暮れになり私も帰る。
男児はあれからどうしたのだろう
小さな泣き声が
ゴッホの黄色のような
ことばにできなかったものを連れて
淡い光の中を歩いていく
話者のなかにもある破壊衝動が見つめられている。
「空離須」は吉田広行発行。A4用紙を三つ折りにした体裁。
「EIGA・栄華の日々」と題したエッセイでは、ビクトル・エリセ監督の新作「瞳を閉じて」を紹介していた。あのアナ・トレントも55歳になったとのこと。観なくては。
「春のらせん」吉田広行。春には何人もの人が発っていく。らせんのような激しい風も吹くのだ。
だが わたしたちはどこへも
たち去らない
この光の
澱のなか
別れるべき息を送りだし
なにかあたらしい
空間へ
切り開かれてゆくことを希望いながら
春という季節のなかでどこか途惑っている話者がいる。明るく軽やかな季節の中に潜んでいる死のイメージが切ないものを連れてくる。
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