第4詩集。101頁に28編を収める。
「塔の上」は1連2行、10連の作品。懐かしい街を見下ろす塔のてっぺんに昇っている。そこは、風景とともに、これまで生きてきた時間も眺めわたすような場所なのだろう。
もう共に居て温かいものを口に運ぶことは無いが
夕空に煌めき始めた星を一つ二つと数えてみることは出来る
わたしは風によってここまで押し上げられてきたのかもしれなくて、「汗して歩いた道のさまざまの/匂いが立ち昇って来る」ことも知っているのだ。ここまで昇ってきてしまったわたしはどこへ下りていくのだろうか。いや、ここまで昇ったからこそ、新たに下りていく場所が見つかるのかもしれない。
生活の中で作者の周りにあらわれる事柄も作品の核になっていく。中ごろに収められている作品「今日の食事」では魚のアラを料理しているのだが、「切れそうで切れない」アラは、「固まった記憶/繋がった記憶」で自分のようだという。
火にかけ
甘辛く煮付け
時間をかけて
食べる
作者にも、いつもわだかまっている何かがあるのだろう。それは柔らかくほぐれるまで時間をかけて、ゆっくりと自分が対峙しなければ乗り越えられないのだ。
こうしてまったく背伸びをしない範囲の作品世界が作られていく。だからその世界はどれも確かな手触りをそなえている。
「塔の上」は1連2行、10連の作品。懐かしい街を見下ろす塔のてっぺんに昇っている。そこは、風景とともに、これまで生きてきた時間も眺めわたすような場所なのだろう。
もう共に居て温かいものを口に運ぶことは無いが
夕空に煌めき始めた星を一つ二つと数えてみることは出来る
わたしは風によってここまで押し上げられてきたのかもしれなくて、「汗して歩いた道のさまざまの/匂いが立ち昇って来る」ことも知っているのだ。ここまで昇ってきてしまったわたしはどこへ下りていくのだろうか。いや、ここまで昇ったからこそ、新たに下りていく場所が見つかるのかもしれない。
生活の中で作者の周りにあらわれる事柄も作品の核になっていく。中ごろに収められている作品「今日の食事」では魚のアラを料理しているのだが、「切れそうで切れない」アラは、「固まった記憶/繋がった記憶」で自分のようだという。
火にかけ
甘辛く煮付け
時間をかけて
食べる
作者にも、いつもわだかまっている何かがあるのだろう。それは柔らかくほぐれるまで時間をかけて、ゆっくりと自分が対峙しなければ乗り越えられないのだ。
こうしてまったく背伸びをしない範囲の作品世界が作られていく。だからその世界はどれも確かな手触りをそなえている。