「人参嫌い」吉田義昭。
人参の皮を苦労して剥いている。そして「皮の厚さと身との境界の曖昧さに」苛立っている。それは自分の心のようだと。おまけにその固さは老化を自覚させるのだ。「いつも誰かに添えられていただけの引き立て役」の人参だと言い、ユーモアのある描き方の中に、しみじみとした人生の重さのようなものもふーっと伝えてくる作品。比喩が自然にうなずけるものになっている。最終章は、
尖端の尖り方は水を求め深く潜ろうとしたからですか
土の中には守るべきものなど何もなかったくせに
皮を厚くして身を守ろうとした姿勢がいじらしく
子どもの頃は人参の甘さが微妙に苦手でしたが
今は厚い皮と攻撃的な楔形の尖り方が少し嫌いです
「夜火」萩野なつみ。
昨年発行された萩野の詩集「遠葬」の感想で、私(瀬崎)は「張りつめた言葉が感覚神経をふるわせているようだ」と書いた。この作品も、雨の深夜にひとり置き去りにされているかのような感覚が、風景をきりりと撫でている。他者はどこにいるのだろうか。最終部分は、
いま
ただれた声に追われて
しなやかに巻き取られる
淘汰された心象
あけ渡すかかとの下で
街は白く焦げていく
編集をしている山田兼士が、この1年間にTwitterに書いてきた短い詩集評を「詩集カタログ」として掲載している。135冊の詩集が取り上げられており、タイトル通りにカタログとして有用だ。
人参の皮を苦労して剥いている。そして「皮の厚さと身との境界の曖昧さに」苛立っている。それは自分の心のようだと。おまけにその固さは老化を自覚させるのだ。「いつも誰かに添えられていただけの引き立て役」の人参だと言い、ユーモアのある描き方の中に、しみじみとした人生の重さのようなものもふーっと伝えてくる作品。比喩が自然にうなずけるものになっている。最終章は、
尖端の尖り方は水を求め深く潜ろうとしたからですか
土の中には守るべきものなど何もなかったくせに
皮を厚くして身を守ろうとした姿勢がいじらしく
子どもの頃は人参の甘さが微妙に苦手でしたが
今は厚い皮と攻撃的な楔形の尖り方が少し嫌いです
「夜火」萩野なつみ。
昨年発行された萩野の詩集「遠葬」の感想で、私(瀬崎)は「張りつめた言葉が感覚神経をふるわせているようだ」と書いた。この作品も、雨の深夜にひとり置き去りにされているかのような感覚が、風景をきりりと撫でている。他者はどこにいるのだろうか。最終部分は、
いま
ただれた声に追われて
しなやかに巻き取られる
淘汰された心象
あけ渡すかかとの下で
街は白く焦げていく
編集をしている山田兼士が、この1年間にTwitterに書いてきた短い詩集評を「詩集カタログ」として掲載している。135冊の詩集が取り上げられており、タイトル通りにカタログとして有用だ。