瀬崎祐の本棚

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ユルトラ・パルズ  23号  (2014/09)  東京

2014-10-04 10:43:17 | 「や行」で始まる詩誌
 変形のやや大きな判型で、55頁に8人が集まる。文字色は濃い赤紫様で洒落ている。

 「ジャワ遍歴」阿部日奈子。
 作品である以上は、どこまでが現実の関与した出来事かは不明だが、その心を削るような旅の途上からの手紙は尋常ではない。バックパッカーのような雰囲気の旅で、それだけにその土地を訪ねた日々が、自分の感情との戦いのようなのだ。こんな真剣勝負の旅はさぞかし怖ろしく、さぞかし楽しいことだろう。

「製品になった金属」眞神博。
 とても抽象的な夢の記述がなされている。というよりも、夢の記述を抽象的にしているという方が正しいのか。なにしろ起きてからみた夢なのだ。だから「午睡から覚めると、世界は生まれたばかり」で、金属のようによそよそしいようなのだ。夢によってどこか遠くへ行ってしまったら、夢から覚めても戻ることはできないのだ。

 「なみだ壺」森山恵。
 なにか世界をくつがえすような出来事があり、悲しみだけが取り残されているようだ。「地にしみ入るなみだもあり/天にむけて掲げられるなみだもある」。描かれているのは、なみだ壺の中に溜められたものが見せている光景のようだ。

 「冬の素描」中本道代。
 いくつかの冬の光景が提示される。それは冬の冷気が現出させるものであり、それらの風景が重なって私が生きている時間も重なっていくようだ。「私の年齢の一番妖しい時へ/その儚い雪は吸い込まれていった」
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