第1詩集、65頁。作者は50歳となるが、20代の頃からの作品17編を収める。
巻頭に置かれた「このまま」は、何かに弱った心が安寧に向かう作品。夜の闇のなかの紫陽花は「ゆっくりと呼吸をくりか」えしているのだ。そして闇のなかでも私のなかの紫陽花は花をひらく音を伝えてくるのだ。静かに今の自分を肯定することによって励ましているようだ。最終連は、
紫陽花は
今夜も
闇に受けとめられ
その内側をあたためつづけ
「橙色の魚(1)」では、私はどぶ板の下におびただしい数の小魚の死骸を見つける。腐って白く濁った魚を夫と一緒に土に埋めていく。「これはあの時の私/これはその前の/これは・・・・・・」と、私は夫にひとつひとつ説明していく。どんなに辛いものを抱えて生きてきたのだろうと思わされる。そんな私のすべてを夫は包み込んでくれているようなのだ。
私も腐った臭いがしない?
と問うと
夫は黙ったまま私を抱きしめ
もう終わったからと
おだやかにほほ笑んだ
このように、この詩集の作品は弱いものとして寄りそわれ、また弱いものに寄りそっている。自分が弱いことを知っている者は、弱い他者に気持ちを沿わせることができるのだろう。作者は未熟児病棟での医療従事者であるようなのだが、潰える小さな命への思いも優しい。
巻頭に置かれた「このまま」は、何かに弱った心が安寧に向かう作品。夜の闇のなかの紫陽花は「ゆっくりと呼吸をくりか」えしているのだ。そして闇のなかでも私のなかの紫陽花は花をひらく音を伝えてくるのだ。静かに今の自分を肯定することによって励ましているようだ。最終連は、
紫陽花は
今夜も
闇に受けとめられ
その内側をあたためつづけ
「橙色の魚(1)」では、私はどぶ板の下におびただしい数の小魚の死骸を見つける。腐って白く濁った魚を夫と一緒に土に埋めていく。「これはあの時の私/これはその前の/これは・・・・・・」と、私は夫にひとつひとつ説明していく。どんなに辛いものを抱えて生きてきたのだろうと思わされる。そんな私のすべてを夫は包み込んでくれているようなのだ。
私も腐った臭いがしない?
と問うと
夫は黙ったまま私を抱きしめ
もう終わったからと
おだやかにほほ笑んだ
このように、この詩集の作品は弱いものとして寄りそわれ、また弱いものに寄りそっている。自分が弱いことを知っている者は、弱い他者に気持ちを沿わせることができるのだろう。作者は未熟児病棟での医療従事者であるようなのだが、潰える小さな命への思いも優しい。