第6詩集。105頁に25編を収めている。
詩集タイトルの”ガスパール”はキリストの誕生を祝った東方三博士のひとりの名前だが、作者の「NOTE」によれば、ベルトランの散文詩集「夜のガスパール」からきているとのこと。
詩集全体で森の存在感をあらわそうとしているようだ。森は、そこに在るだけなのに人の生活の基盤に結びついてくる、そんな存在のものである。そして森では、木々やそこに住む動物たちの生命活動が密接に影響しあっている。森全体が一つの生命体であるように比喩される所以だ。巻頭の「森の座」では、そんな森への畏敬の念が描かれる。
まるで地謡の人びとのように
根の張り具合まで一様な樹々が
隙間格子をつくって
夜を吐き出すまで
誰もが森を見 森を知っているのに
誰もがそれに気づかないふりをしている
この作品では代々受け継がれてきた”蛍火の籠”の灯が、「火と闇の境目を朧にしている」と詩う。森との間には、触れてはいけない、明らかにしてはいけない約束ごともあるのだろう。
丘の上に立つ大木を描いた「ふるえる木」。風で揺れながら言葉にならないざわめきを発している木は、作者そのもののようだ。
記憶は音叉のように響く
音叉は大木の枝先にまで達してふるえる
それでも丘の上から
地平のむこうが見える
見れば何かを待つことができる
詩集タイトルの”ガスパール”はキリストの誕生を祝った東方三博士のひとりの名前だが、作者の「NOTE」によれば、ベルトランの散文詩集「夜のガスパール」からきているとのこと。
詩集全体で森の存在感をあらわそうとしているようだ。森は、そこに在るだけなのに人の生活の基盤に結びついてくる、そんな存在のものである。そして森では、木々やそこに住む動物たちの生命活動が密接に影響しあっている。森全体が一つの生命体であるように比喩される所以だ。巻頭の「森の座」では、そんな森への畏敬の念が描かれる。
まるで地謡の人びとのように
根の張り具合まで一様な樹々が
隙間格子をつくって
夜を吐き出すまで
誰もが森を見 森を知っているのに
誰もがそれに気づかないふりをしている
この作品では代々受け継がれてきた”蛍火の籠”の灯が、「火と闇の境目を朧にしている」と詩う。森との間には、触れてはいけない、明らかにしてはいけない約束ごともあるのだろう。
丘の上に立つ大木を描いた「ふるえる木」。風で揺れながら言葉にならないざわめきを発している木は、作者そのもののようだ。
記憶は音叉のように響く
音叉は大木の枝先にまで達してふるえる
それでも丘の上から
地平のむこうが見える
見れば何かを待つことができる