第3詩集。113頁に、27編が収められている。
どの作品にも、北海道の厳しい自然の中で生活してきた一族の一員であるという自負が込められている。兄弟をはじめとした一族の者は漁師が多いようで、北の海での漁の様子が「技巧を弄さぬこの天真な言挙げ振り」(新川和江/帯文より)によって描かれていて、迫力が伝わってくる。
家族のことも、また詩われる。「ネクタイ」は、形見わけにもらってきた父のネクタイをしめる作品である。ネクタイには父の匂いが染み込んでおり、そんな父の「存在の大きさは/失ってはじめて気づいた」のだ。しかし、父に対する思いは複雑だ。
年齢と共に顔と性格が
父に似てきたと妻はいう
濃い血のなせるわざか
少年の頃
母に暴力をふるった父を許せず
鏡の中の父の首をしめる
もう一人の父に似た自分がいる
(最終連)
世間の営みの仕組みを未だ知らない純粋な少年の目で見ていた父の姿と、長じて父の年齢に近づいておもう父の姿には、自ずから変化が出ている。血脈のせいで姿形はどうしようもなく父に似てきた自分を鏡のなかに見て、それだからこそかっての父の有り様は容認が出来ず、かといって否定もできずにいる。素直にその断ちがたい思いが伝わってくる作品である。
どの作品にも、北海道の厳しい自然の中で生活してきた一族の一員であるという自負が込められている。兄弟をはじめとした一族の者は漁師が多いようで、北の海での漁の様子が「技巧を弄さぬこの天真な言挙げ振り」(新川和江/帯文より)によって描かれていて、迫力が伝わってくる。
家族のことも、また詩われる。「ネクタイ」は、形見わけにもらってきた父のネクタイをしめる作品である。ネクタイには父の匂いが染み込んでおり、そんな父の「存在の大きさは/失ってはじめて気づいた」のだ。しかし、父に対する思いは複雑だ。
年齢と共に顔と性格が
父に似てきたと妻はいう
濃い血のなせるわざか
少年の頃
母に暴力をふるった父を許せず
鏡の中の父の首をしめる
もう一人の父に似た自分がいる
(最終連)
世間の営みの仕組みを未だ知らない純粋な少年の目で見ていた父の姿と、長じて父の年齢に近づいておもう父の姿には、自ずから変化が出ている。血脈のせいで姿形はどうしようもなく父に似てきた自分を鏡のなかに見て、それだからこそかっての父の有り様は容認が出来ず、かといって否定もできずにいる。素直にその断ちがたい思いが伝わってくる作品である。