「ジャコメッティの前に」八木真央。
その折れそうになるまで余分を削り取られた像の前で、話者もまた問われていることを感じているのだろう。本当に必要なものだけを残した線のような存在になれるか、と。その問いかけの厳しさに、話者は像の前で立ち尽くしているようだ。
一本の歪な線として発信する激しさに滲む 孤独
折れそうに直線的である事が内包するかなしみ
それらが横倒れぬように支え受け止める 土台の
重厚な佇まいとバランスに 何時しか 心跪く
「蓑虫」橘しのぶ。
わたしは蓑虫に「一緒に暮らさう」と誘われる。そして「短冊に文字を綴って/貼り合はせて作った蓑」の中で縄跳びをしたりひとつのベッドで眠った。やがて文字には翅が生えてくる。その翅を空っぽのドロップ缶に詰めてゆすると「花の散る音」がしたのだ。最終部分は、
四角い窓から
蛾が一頭、飛び立った
とんでもない。
飛ばない、わたしは、
飛べない。
蓑虫の雄は飛ぶが、翅を持たない雌の生涯は蛹の殻の中だけにあり、やがては地上に落下して死んでいくとのこと。そんな雌雄が特異な生態をとる蓑虫を題材にして、幻想的な愛の物語を作り上げている。
「動力機」松尾静明。
それはエスカレーターを動かす度に「鳴くような泣くような ひとつの声を背負」うのだ。作品にはその”声”が擬音語としてくり返しあらわれて、大変に効果を上げている。作品に絡みついてくるようなその音の感じを損なうことを恐れて、ここではそれは引用しない。
ここを選んだのでもないのに この世界のここへ置かれている
どうしようもない約束のようなこの場所から
昇っていくでもない降りていくでもない ひとつの声を背負っているもの
何か辛い宿命を負った存在のものが描かれているのだが、それは作品を書いた者、また読んだ者にのしかかってくるものでもあるようだ。
その折れそうになるまで余分を削り取られた像の前で、話者もまた問われていることを感じているのだろう。本当に必要なものだけを残した線のような存在になれるか、と。その問いかけの厳しさに、話者は像の前で立ち尽くしているようだ。
一本の歪な線として発信する激しさに滲む 孤独
折れそうに直線的である事が内包するかなしみ
それらが横倒れぬように支え受け止める 土台の
重厚な佇まいとバランスに 何時しか 心跪く
「蓑虫」橘しのぶ。
わたしは蓑虫に「一緒に暮らさう」と誘われる。そして「短冊に文字を綴って/貼り合はせて作った蓑」の中で縄跳びをしたりひとつのベッドで眠った。やがて文字には翅が生えてくる。その翅を空っぽのドロップ缶に詰めてゆすると「花の散る音」がしたのだ。最終部分は、
四角い窓から
蛾が一頭、飛び立った
とんでもない。
飛ばない、わたしは、
飛べない。
蓑虫の雄は飛ぶが、翅を持たない雌の生涯は蛹の殻の中だけにあり、やがては地上に落下して死んでいくとのこと。そんな雌雄が特異な生態をとる蓑虫を題材にして、幻想的な愛の物語を作り上げている。
「動力機」松尾静明。
それはエスカレーターを動かす度に「鳴くような泣くような ひとつの声を背負」うのだ。作品にはその”声”が擬音語としてくり返しあらわれて、大変に効果を上げている。作品に絡みついてくるようなその音の感じを損なうことを恐れて、ここではそれは引用しない。
ここを選んだのでもないのに この世界のここへ置かれている
どうしようもない約束のようなこの場所から
昇っていくでもない降りていくでもない ひとつの声を背負っているもの
何か辛い宿命を負った存在のものが描かれているのだが、それは作品を書いた者、また読んだ者にのしかかってくるものでもあるようだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます