多くの翻訳詩集を出しているたなかの第4詩集。140頁に24編の自作詩と4編の翻訳詩を収めている。
硬質のイメージが無駄を排した言葉で書きとめられる。そこでは曖昧さや柔らかさを拒否したような世界が展開されている。影の淡いにかすむような部分はなく、すべてが陰と陽にくっきりと描かれる。
たとえば「鶏卵と喉笛を瞬時に変換するかのように/バサッと幾何学の外へ断ちおとされる風景」と始まる「闇の線」でも、提示される事物は無機質な光沢を放っている。するとそこに巨大な工場群に感じるような美しさがあらわれてくる。最終部分は、
かっての夜行列車が通過したばかりの
冬の駅がくるぶしのようにそこに点滅する
それとも冬の花屋の店頭で
造花ならぬ人造トンボがしきりに旋回する
詩集後半には人名が冠された作品が並ぶ。それは画家であったり、写真家であったりする。画像と対峙することによって言葉を引き出すことを試みているのだろうか。
作品「声の痣」から終連の美しい詩行を書き抜いておく。
ギュスターヴ・モローまで逆行する鉈どころか
その逃げ水までも
しきりについばむめす
(略)
あの昼さがりの獲物は
隕石よりも焦げくさい
硬質のイメージが無駄を排した言葉で書きとめられる。そこでは曖昧さや柔らかさを拒否したような世界が展開されている。影の淡いにかすむような部分はなく、すべてが陰と陽にくっきりと描かれる。
たとえば「鶏卵と喉笛を瞬時に変換するかのように/バサッと幾何学の外へ断ちおとされる風景」と始まる「闇の線」でも、提示される事物は無機質な光沢を放っている。するとそこに巨大な工場群に感じるような美しさがあらわれてくる。最終部分は、
かっての夜行列車が通過したばかりの
冬の駅がくるぶしのようにそこに点滅する
それとも冬の花屋の店頭で
造花ならぬ人造トンボがしきりに旋回する
詩集後半には人名が冠された作品が並ぶ。それは画家であったり、写真家であったりする。画像と対峙することによって言葉を引き出すことを試みているのだろうか。
作品「声の痣」から終連の美しい詩行を書き抜いておく。
ギュスターヴ・モローまで逆行する鉈どころか
その逃げ水までも
しきりについばむめす
(略)
あの昼さがりの獲物は
隕石よりも焦げくさい