第6詩集。「アンフォルム群Ⅱ」と副題が付いて、173頁に35編を収める。前詩集は2017年発行でそれ以後の作品とのこと。
通りすがりの少年たちの口々から高性能な補聴器を通じて
耳寄りな話の炎天下のトランクルームの猛烈な照り返し
《なんだかアレはパラシュートの布地みたい》
耳が砂漠の空気摩擦で火ぶくれ刺創
(「25編のアルテファクト」より)
ジョルジュ・バタイユによれば、アンフォルムは定まった理想の形をもたず、何かの象徴として詩的な言葉に置き換えられることのないようなものであるとのこと。ここで話者が書き留めているものは、果たして形にたどり着くのだろうか。それとも、たどり着こうとする行為そのものを見ればよいのだろうか。
2章の「静かなるもののざわめき」の作品タイトルには「P.S.」という言葉が添えられている。前詩集の追伸ということなのだろう。その前詩集の感想で私は「物、あるいは事物を絶えず写生して(略)そのような描写がやがては話者の内側を塗りこめていくのだろう」と書いた。
日射しの無造作に差し込むアルファベットの学名を字義通りに解読するために
よもやくるぶしの化石をアンドロメダ星雲の図版と誤読しにために
まずはこの葉書の絵柄のストロークをじっくり参照のこと。
コヨーテ掲載誌の配達先にさりげなく佇む
池田学の描く《コヨーテ》の耳をいずれ担架に鞣すだろう
(「P.S.(d)ぐねぐね暁の死線(デッドライン)どころか、辞書の断層」最終2連)
散乱している夥しい名詞。名付けられながらもその名を拒否しているような事物たち。それらに取り囲まれて身動きができなくなっていく私は、やはりまた眩暈に襲われている。
通りすがりの少年たちの口々から高性能な補聴器を通じて
耳寄りな話の炎天下のトランクルームの猛烈な照り返し
《なんだかアレはパラシュートの布地みたい》
耳が砂漠の空気摩擦で火ぶくれ刺創
(「25編のアルテファクト」より)
ジョルジュ・バタイユによれば、アンフォルムは定まった理想の形をもたず、何かの象徴として詩的な言葉に置き換えられることのないようなものであるとのこと。ここで話者が書き留めているものは、果たして形にたどり着くのだろうか。それとも、たどり着こうとする行為そのものを見ればよいのだろうか。
2章の「静かなるもののざわめき」の作品タイトルには「P.S.」という言葉が添えられている。前詩集の追伸ということなのだろう。その前詩集の感想で私は「物、あるいは事物を絶えず写生して(略)そのような描写がやがては話者の内側を塗りこめていくのだろう」と書いた。
日射しの無造作に差し込むアルファベットの学名を字義通りに解読するために
よもやくるぶしの化石をアンドロメダ星雲の図版と誤読しにために
まずはこの葉書の絵柄のストロークをじっくり参照のこと。
コヨーテ掲載誌の配達先にさりげなく佇む
池田学の描く《コヨーテ》の耳をいずれ担架に鞣すだろう
(「P.S.(d)ぐねぐね暁の死線(デッドライン)どころか、辞書の断層」最終2連)
散乱している夥しい名詞。名付けられながらもその名を拒否しているような事物たち。それらに取り囲まれて身動きができなくなっていく私は、やはりまた眩暈に襲われている。