詩と思想新人賞叢書の1冊。110頁に27編を収める。
「あとがき」には大きな活字でただ1行、「-この物語は虚構の形をした真実である。」と書かれている。前詩集「割れたトマト」でも、作者が社会生活を送るうえでの不自由さをかかえていることはうかがえた。本誌集でも私は街の光景の中で、それはすなわち他人が形づくるものなのだが、抗いつづけている。
「私の中心」は、「今 私の中心に私はいない」と始まる。そして「私の真ん中」を探してスーパーのゴミ箱や彼とはぐれたバス停をさまよう。
一生懸命探しまくった私の姿をみた彼は
「予想以上に汚かったね」と、いうと
私の中心をポケットから 取り出して目の前で
嗤いながら 握り潰した
この不様とさえ思える必死さを露わにしなければならないほどに、話者は抗っている。それは自分自身を規定するものに対してなのだろう。
「レンタル長女」もすさまじい。ここにも、ある性に規定されてしまっていることへの抗いがある。
真っ赤な月が出ています。アソコには、あなた方が望んだ長女がいるか
もしれません。それとも、私が探している少女が、もしかしたら・・・。
月が余りにも、赤いのです。まるで何かを裏切るように、空には反逆の
目玉が光っています。
ここには、自分を創り出した父母へ対する恨みと、それ故に同時に存在する依存が葛藤しているようだ。
詩集を読み終えると、「あとがき」に書かれた1行があらためて作者から突きつけられてくる。
「あとがき」には大きな活字でただ1行、「-この物語は虚構の形をした真実である。」と書かれている。前詩集「割れたトマト」でも、作者が社会生活を送るうえでの不自由さをかかえていることはうかがえた。本誌集でも私は街の光景の中で、それはすなわち他人が形づくるものなのだが、抗いつづけている。
「私の中心」は、「今 私の中心に私はいない」と始まる。そして「私の真ん中」を探してスーパーのゴミ箱や彼とはぐれたバス停をさまよう。
一生懸命探しまくった私の姿をみた彼は
「予想以上に汚かったね」と、いうと
私の中心をポケットから 取り出して目の前で
嗤いながら 握り潰した
この不様とさえ思える必死さを露わにしなければならないほどに、話者は抗っている。それは自分自身を規定するものに対してなのだろう。
「レンタル長女」もすさまじい。ここにも、ある性に規定されてしまっていることへの抗いがある。
真っ赤な月が出ています。アソコには、あなた方が望んだ長女がいるか
もしれません。それとも、私が探している少女が、もしかしたら・・・。
月が余りにも、赤いのです。まるで何かを裏切るように、空には反逆の
目玉が光っています。
ここには、自分を創り出した父母へ対する恨みと、それ故に同時に存在する依存が葛藤しているようだ。
詩集を読み終えると、「あとがき」に書かれた1行があらためて作者から突きつけられてくる。