ミャンマーチーク屋さんのわが道を行く

日々の出来事と旅と愚痴と文句を勝手に語る日記。

怒られる

2008-10-01 16:44:33 | 仕事
「世の中、お前を中心に回っているんじゃねんだよ…」

こう、怒鳴られたのは他でもない私である。サラリーマン時代の
ことだが、怒られたのは、自分の会社の上司からではなく、
営業先の会社の部長さんからである。それも、営業先の社内で、
しかも多くの従業員が見ている前である。

これほど、怒られるのに辛い環境はないのではないか、というくらいの
場所である。

もちろん怒られるからには、それなりの理由があった。

当時、私は通信機器のメーカーに勤めていて営業を担当していた。
さほど数字に厳しい会社ではなかったが、支店単位での最低目標が
あり、それを私の課の上司が統括していた。

その月は、たまたま前月の数字が良過ぎたこともあり、営業担当の
全員が、不振を極めていた。月末になっても一向に改善の余地は
見られず、だんだん不機嫌になっていく上司の影響で、課の雰囲気も、
めずらしく悪くなっていた。

月末が数日後に迫ったある日、突然、緊急営業会議が行われ、
上司から、「なんとか、最低この数字だけはやりたい」と、
現実的な最低ラインが示され、営業社員ひとり一人の抱えている
案件の掘り起こしが行われ、その中から可能性のありそうなもの
3つが対象となった。

この3つの案件を月内に決めれば、なんとか目標数字の最低のバーに
到達するということである。

そして運悪く、この3つの中に私の担当する案件がひとつ含まれていた。
含まれなかった方々は呑気なもんである。

私の案件は、来月なら確実に成約が見込まれるものだったのだが、
ここまで来るのに1ヶ月半近く要していたものであった。
それは、営業先の担当者である年配の部長さんがやや曲者で、
全くこちらのペースで動いてくれないからであった。とにかく
何をするにも時間を要する方で、極めて要領が悪い。
急がせれば、機嫌を損ねる可能性があり、あえて時間をかけた
ところもあったのだ。すでに本社の稟議は通っていたので、
後は導入に当って細部を詰め、工事日程を決めて契約書を
頂くだけである。

しかし、これを3日でやらねばならないのである。もちろん
担当者次第で充分やれる時間なのだが、何と言っても私の場合、
相手が悪かった。あの方相手では限り無く不可能に近い。

まずは正攻法でとりあえず電話をしてみた。しかし、案の定、
「1週間後に…」であった。

しかし、これでは私の上司が許してくれない。2日目はアポなしで、
直で会社に行って見た。

しかし居なかった。終日、外出中であった。

3日目、今日が最後の日である。他の2人の案件は話がまとまり
残すは、私の案件のみである。しかも本日しかない。
完全に諦めモードであるが、会社では上司に「わかってると思うけど、頼むよ」
とさらにプレッシャーをかけられて会社を出た。
朝いちで相手先の会社へ向かう。もちろんアポ無しである。

窓口で聞くと、今日は居るではないか。
呼んでもらうことにしたが、「机まで来てくれって、言ってますよ」
という返答であった。いつもなら、別室のはずなのに…。

恐る恐る入ると、20人近くの従業員が働いている。想像以上に大きな
オフィスであった。今日は、正直にありのままを言いお願いしようと
決めていた。というかそれしか思いつかなかった。

担当者はアポなしで来たので、少々びっくりしていたが、事情を説明し、
何とかお願いします、と話し終えた直後に、先の雷が落ちたのである。

「世の中、お前を中心に回っているんじゃねんだよ…」

ついでに、「この話は無しだ。帰れっ」と最悪の一言まで
付いてきたのであった。社内は一瞬、凍りついたような雰囲気
になった。皆に注視された。ちなみに、ここは私の会社ではない。

「ガビーン」である。

さすがに心がポキっと折れた。しかし悪いのは、全てうちの
会社であり、上司の命令ではないか。なんでこんなことに…。

帰り際、恨みつらみの言葉がいくつも出てきた。そして
「会社へ帰って上司に何て言おう…」そればかり考えていた。
足が重かったが、1時間ほどしてお昼ごろ恐る恐る会社へ戻った。

すると、上司がにこにこ笑っているではないか…?

「…」

「今、先方の担当者から電話があったよ」「三田さんに謝っておいて
くれって言ってたぞ」と。
そして、「契約書、午後いちで持ってきたら、すぐ書いてやるって…」

「まじっすかー」と思わず出た、一言であった。

何とも、最後はフィクションぽいが、これがすべて実話なのである。
本当に、こんなこともあるのである。

今思うと、良い経験だったと思う反面、冷静に考えるとやはり、
人から大声で怒鳴られるのは、嫌なものである。

そして思うのは、「世の中、お前を中心に回っているんじゃねんだよ」
ではなく、
「世の中、会社を中心に回っている」のではないか、ということである。


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