べんりや日記

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古民家に学ぶ・・ 寺泊町 越後匠の家普及協議会

2009-09-07 23:05:56 | 伝統構法について
新潟県版長期優良住宅の仕様を検討するために、県の建築組合有志とチーム・テラ(長岡の建築士グループ)により「越後匠の家普及協議会」を結成し、まず100年以上建っている古民家から長期優良住宅のヒントを得ようと、県内各地の古民家を回っています。
今回は寺泊町でした。




今回、視察させて頂いた民家
軒までの高さは4mと通常の家よりも2mも低い。
海からの強風に耐えるためにわざと低くした?
3間×12間という鰻の寝床です。


玄関・
昔は土間が打ってあったらしいです。(現在は板敷き)
天井が低い

玄関から外を眺める
明るい光が入ってきます。



2階の客間
5尺(1.5m)しかない骨組みから昇り天井によって部屋の高さを確保しています。
最小限の高さです。


2階から前の道路を望む
建物が低いので、街道の人並みが近くに見えたでしょう。
暗がりの部屋から明るい外の眺めが良い感じです。


中引(なかびき)と梁が交互に重なっています
囲炉裏で燻された梁は黒光りして、渋い感じです。
梁の曲がり具合も良い。


ケヤキの差鴨居
この家を支える差鴨居(さしがもい)です。
4.5寸×1尺2寸(135×360㎜)、それを受ける柱は5寸(150㎜)
何百年も支えてきた・・


この家の最大の特徴は、梁間方向の壁が無いことです。
3間(5.4m)の間に柱が3本立ち、その間を差鴨居で結び、その上の土塗り壁で、横からの力を受けています。
この辺は海からの強風が一番の荷重なので、海側に向かって伸びている形として、強風の荷重は桁方向の壁で受けています。
梁間方向は家を連ねて風が横から入らないようにしています。

それでも、地震はどの方向から揺れるか分かりません。
雪が少ない地方なので、雪が屋根に乗った状態で地震が来る心配も無く、差し鴨居から上の壁で、もたせることができすようです。
新しい地震では、新潟県中越沖地震、その前の新潟地震が横からの荷重だったわけで、それでも耐えているのですから、驚きです。

建物の高さを低く抑えることも、地震時の力を増大させない効果を得ています。(風に対しても有効です)

構造的な美しさ、意匠的な美しさが重なりあったときが、本当にその建物が美しくみえます。
そういった家をつくっていきたいものです。



ヒアリングの様子
先祖代々、この家を丁寧に守ってこられました。
古民家は「宝の山」です。


町並みの様子
階段から見下ろすと、山と浜辺のわずかな空間に街道が通り、
その両方に家が密集して町並みを形成しています。
昔は道に面する長さで「年貢」が決められたため、間口が狭く、
奥行きが長い家になっています。


寺泊は漁港として栄えた町で、裕福な家が多かったようです。
その名の通り「寺」が50mごとにあるのも、この町の特徴です。
立派な山門のお寺も発見!でも時間が無いのでゆっくり見れませんでした・・



古民家を見ると、次の家の設計に意欲が沸いてきます。
どうやって、応用しようかと言うところ。
特に、今回は、最小限の高さでも十分に活用できる構造を学びました。
構造材がすぐ目の前にあることで、木材がもっと身近に感じられ、守られている感じがします。
3間梁間×2間桁行きの最小限のユニットを上手く活用できる間取りも参考になります。
私の設計のヒントは、こういった古民家や社寺建築にあります。
(下手に大手のモデルルームへ行くよりもインスピレーションが沸きます)


また、今回の古民家でも、昔の大工の工夫が発見できました。
そういった工夫が必ず建物にあるものです。家を建てることは工夫の集大成です。
「これでいい」というものはなく、どんな建物にも大工の工夫があり、それを発見する楽しみがあるのです。

「何故、こうなっているのか」
それには、ちゃんと理由がある。

普段から木に携わっていると、共感できるところもあります。
同じ悩みを抱えていた昔の大工が一つの答えを出して木に挑んでいった姿が目に浮かびます。
そういった先人の知恵と勇気と経験を新潟県版の長期優良住宅に活かしたいところです。


つづく・・・



大工~伝統技術について・・
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