何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

ルポ医療事故

2009-09-25 21:32:46 | Book Reviews
「ルポ医療事故」 出河雅彦・著、朝日新書、2009年3月30日

p.45 「危険を内在しているシステムは、その危険が直ちに事故に結びつかないように多重の防護壁を備えているのが普通です。しかし、本事故を見ると、どこにもそれが見えません。唯一の防護壁は、『看護師による薬剤投与における①準備時、②実施時、③終了後の3段階において間違いなく薬剤を投与しているかを確認する』というものです。すべてがこの『確認』するという唯一の行為に依存しています。これは驚き以外のなにものでもありません。このような脆弱なシステムの存在が許されるのでしょうか。
 本来ならば医療システムのような、患者の命に直結しているために高い安全性を確保しなければならないシステムでは、ヒューマンエラーの発生防止とヒューマンエラーによる影響の拡大防止の対策をシステムとして考え、組み込んでおかなければなりません。

p.53 しかし、自分たちの組織を守るためなら、嘘を言い、患者家族の人権を傷つけても平気でいられる。こんなことができるのは、『先端医療で長く生きられたのは幸運なのだから事故で死んでも仕方ない。医療の進歩のための犠牲だ』という、患者への差別意識が医療者側にあるからとしか思えない。

p.53 非を認め、誠心誠意謝罪してくれた人が1人もいない。医療者は『事故の再発防止システムの重要性』を口にするが、誤りは認めようとしない。だから、自分たちを守りたくて言っているように聞こえてしまう。

p.189 公表する以上、他施設の医療安全の役に立たなければ意味がありません。

p.315-6 事故調査は、透明性、客観性が担保され、公正に行われる必要がある。これは医療紛争を回避するための必要条件である。さらに、診療行為が現在の医療水準に照らして妥当であったか否か、事故を回避することはできなかったかどうかを医学的、客観的に評価することが重要である。こちらは同種事故の再発防止策を検討するためのポイントである。

 事故が判明したら、隠さないこと。明るみに出して詳細に分析、検討し、改善につなげることが死に報いることだ。内密に済ませようとするのは、自己保身にほかならないし、死を無駄にすることでもある。当人はもとより、遺族に対してもこれ以上ない失礼な態度だ。そういう判断はけっしてあってはならない。

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