体調不良のスカイマークCA、社長一声「交代ならぬ」 朝日新聞 2010.3.10 朝刊
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スカイマークの機長が、体調不良で声が十分に出ない客室乗務員(CA)を交代させようとしたところ、西久保慎一社長と井手隆司会長が認めず、逆に機長を交代させて運航を強行していたことがわかった。
航空法は機長に乗員への指揮権を与えており、個々の運航では機長の判断が最優先される。同社の運航規定でも、安全に対する最終決定権は機長にあると定められている。また、CAは保安要員で、非常時に大声で乗客を避難誘導する役割がある。
機長の判断を経営者が覆したことについて、国土交通省は「前代未聞。安全にとってゆゆしき事態」として文書で厳重注意した。
同省によると、問題が起きたのは2月5日の羽田―福岡便。チーフ格のCAは風邪の治りかけで大きな声が出せない状態だった。出発前に気づいた外国人機長が「避難誘導などに支障をきたす」と交代を指示した。
ところが、事態を聞きつけた西久保社長は「健康上、問題はない」として認めず、安全統括管理者の井手会長も「会社の命令」として交代なしに運航するよう指示したという。機長は「安全が確保できない以上飛べない」と拒否したため、社長らは機長を交代。別の機長がCAの交代なしの運航を受け入れ、約1時間遅れで出発させたという。
この問題で機長と社長らが口論になったといい、機長は、この際に社長らが「手をあげた」などとして警視庁東京空港署に被害届を提出。同署が経緯を調べているという。同社は機長との雇用契約を即日解除した。
一方、国交省に呼ばれた社長と会長は9日、前田隆平航空局長に「申し訳ありませんでした」と謝罪したものの、記者団から「なぜCAの交代を認めなかったのか」と問われても一切答えなかった。スカイマークの広報担当は「CAの体調を確かめたうえで乗務させた。機長を交代させ、欠航を避けた判断は当時としては正しかったと思っているが、国交省の指摘を厳粛に受け止める」としている。
元機長で航空評論家の前根明さんは「CAはサービス要員であると同時に保安要員。万が一を考えて交代を指示した機長の判断は妥当だ。経営者が権威をもって、安全を封じ込めるような体質は改められるべきだ」と話している。
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スタッフがそういうことになることも想定していないのだろうか。代替要員を用意しておくとか。体調管理をしていても、インフルエンザにせよ、気候の変動等で突然体調を崩すこともあろう。いかなる事情であっても交代すらできないというのは、労働環境としても最悪ではないだろうか。
ましてや、それを申し出た機長に対し、強権で対応したのは傍から見ても納得しがたい。その上、機長を即日雇用解除するとは何事だろう。パワハラに抵触しないのか。フライトを強行することと、適切な乗務員に交代することと、どちらが安全運行につながるのか。利用者は、結果ではなく、姿勢を見ているのだ。
乗務員不足のままフライトさせられないし、欠航も出来ない。シャレではないが決行しかないと判断したのだろう。乗客に迷惑はかけられないからではなく、何があろうと売上をあげたかったのではないかと映る。
そういう判断や行為を通じて本音というか腹の中を見せるのは、まったくもって見苦しい。テレビCMを見ても、これからは白々しく見えてしまうだろう。
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スカイマークの機長が、体調不良で声が十分に出ない客室乗務員(CA)を交代させようとしたところ、西久保慎一社長と井手隆司会長が認めず、逆に機長を交代させて運航を強行していたことがわかった。
航空法は機長に乗員への指揮権を与えており、個々の運航では機長の判断が最優先される。同社の運航規定でも、安全に対する最終決定権は機長にあると定められている。また、CAは保安要員で、非常時に大声で乗客を避難誘導する役割がある。
機長の判断を経営者が覆したことについて、国土交通省は「前代未聞。安全にとってゆゆしき事態」として文書で厳重注意した。
同省によると、問題が起きたのは2月5日の羽田―福岡便。チーフ格のCAは風邪の治りかけで大きな声が出せない状態だった。出発前に気づいた外国人機長が「避難誘導などに支障をきたす」と交代を指示した。
ところが、事態を聞きつけた西久保社長は「健康上、問題はない」として認めず、安全統括管理者の井手会長も「会社の命令」として交代なしに運航するよう指示したという。機長は「安全が確保できない以上飛べない」と拒否したため、社長らは機長を交代。別の機長がCAの交代なしの運航を受け入れ、約1時間遅れで出発させたという。
この問題で機長と社長らが口論になったといい、機長は、この際に社長らが「手をあげた」などとして警視庁東京空港署に被害届を提出。同署が経緯を調べているという。同社は機長との雇用契約を即日解除した。
一方、国交省に呼ばれた社長と会長は9日、前田隆平航空局長に「申し訳ありませんでした」と謝罪したものの、記者団から「なぜCAの交代を認めなかったのか」と問われても一切答えなかった。スカイマークの広報担当は「CAの体調を確かめたうえで乗務させた。機長を交代させ、欠航を避けた判断は当時としては正しかったと思っているが、国交省の指摘を厳粛に受け止める」としている。
元機長で航空評論家の前根明さんは「CAはサービス要員であると同時に保安要員。万が一を考えて交代を指示した機長の判断は妥当だ。経営者が権威をもって、安全を封じ込めるような体質は改められるべきだ」と話している。
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スタッフがそういうことになることも想定していないのだろうか。代替要員を用意しておくとか。体調管理をしていても、インフルエンザにせよ、気候の変動等で突然体調を崩すこともあろう。いかなる事情であっても交代すらできないというのは、労働環境としても最悪ではないだろうか。
ましてや、それを申し出た機長に対し、強権で対応したのは傍から見ても納得しがたい。その上、機長を即日雇用解除するとは何事だろう。パワハラに抵触しないのか。フライトを強行することと、適切な乗務員に交代することと、どちらが安全運行につながるのか。利用者は、結果ではなく、姿勢を見ているのだ。
乗務員不足のままフライトさせられないし、欠航も出来ない。シャレではないが決行しかないと判断したのだろう。乗客に迷惑はかけられないからではなく、何があろうと売上をあげたかったのではないかと映る。
そういう判断や行為を通じて本音というか腹の中を見せるのは、まったくもって見苦しい。テレビCMを見ても、これからは白々しく見えてしまうだろう。
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(朝日新聞 2010.4.7 より抜粋)
体調不良のCAを交代させようとした機長に西久保社長が交代を命じた問題は、「機長はかたくなで、よい状態ではなかった」と主張する一方、「機長の権限を侵食したと言われればその通り」とも述べた。「経営陣の現場への介入」との指摘には、「現場を見ない経営はあり得ない」としたが、「(介入が)採算の問題と絡んでいると疑われるのが一番いけなかった」と話した。
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頑ななのはどちらか。安全運行のために、乗客のために、機長は“体を張って守ろうとした”のではないのか。この受け止めの違いはいかに。
判断の誤りは、そのもとにある考えによるのだから、その考えによって航空事業を運営されては、利用者はたまったものではない。
英語力に乏しいCAを乗務につかせていたのも、同じ考えから出ているのだろう。それに異を唱えれば、機長は失職させられる。意見を言えない体質や文化をつくってしまったことも大きい。
退職に追い込まれた機長のコメントをひいてはどうだろうか。