新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

天橋立に咲く(5)トベラ:扉の木

2005-06-16 06:22:50 | 植物観察1日1題
海岸などによく生える高さ3-4mほどの常緑樹のトベラ:海桐花、扉木、扉の木(トベラ科トベラ属)は、昔節分や大晦日に戸口に挿して鬼払いした風習から“扉の木”から転訛してこの名があるといわれます。枝先に集まってつく箆のような葉が裏側に巻くことが多いのでわかりやすい木です。
最近は、公園や道路わきの緑化樹として街中で普通に見られることから格別の注意を払われることがないようですが、写真のように、海岸で樹一杯に花をつけた成木を見るとなかなか美しいものです。
枝や葉に独特の臭気があり、これが魔よけの使われた理由だと思いますが、枝先にびっしりつく5弁の花は咲き進むにつれ白から黄に変化し、強い芳香があって捨てがたいものがあります。

天橋立に咲く(4)ハマヒルガオ

2005-06-15 06:29:43 | 植物観察1日1題
海岸に咲く花といえば、ハマナスについで知られているのはハマヒルガオ:浜昼顔(ヒルガオ科)でしょう。
海岸の砂に生える多年草で、白く太い地下茎を砂の中で伸ばし広がってゆきますが、他の草木に巻きつくことはあまりありません。
丸くて艶のある葉は、酷熱や乾燥など海岸特有の過酷な環境の中で水分の蒸発を防ぐようになっています。
5~6月ごろ咲く花は、葉より長い花柄を持ち、ラッパ状の花冠は直径4~5cmmで、淡い紅色です。萼片は5個、オシベ5個とメシベ1個は花冠に納まって付いています。
白い縞の入ったピンクの花は艶やかな濃い緑の葉とよく合って似合って素敵です。

天橋立に咲く(3)変な名前のマンテマ

2005-06-14 07:17:43 | 植物観察1日1題
マンテマ(ナデシコ科)、この変わった名前の花は、江戸時代にヨーロッパから渡来したといわれ、渡来時船員がマンテマンといっていたのが変わってマンテマになったという説がありますが、そもそもそのマンテマンとは何かどの本にも説明はありません。
海岸の砂地に生えることが多く、茎の高さは20~30cm、茎や葉には粘り気のある毛があリます。茎の頂に穂状花序がつき、5個の円形花弁を持った6mmくらいの小花をつけます。
花は暗赤色で、白い縁取りがありなかなか綺麗です。全体につく毛がかさかさした感じでドライフラワーを思わせ、野生化した今も昔庭に植えられていたというのがうなずけます。
これよりずっと後に渡来したといわれる同類にシロバナマンテマ(5月1日付け拙ブログ参照)があります。こちらは、乾燥地にも強く大きな道路の側などでも見られます。

天橋立に咲く(2)コウボウムギ(弘法麦)

2005-06-13 07:02:21 | 植物観察1日1題
橋立の砂浜を歩き出すと直ぐ足元に変な形の草に目が向きました。コウボウムギ(カヤツリグサ科)です。葉の丈は10~20cm、何よりも変わっているのが、砂浜から直接立ち上がっているような穂(実)です。この実を触ると手が痛いくらいの硬さです。
この穂の形を「弘法は筆を選ばず」の弘法大師の筆に擬してこの名があると思われますが、
弘法大師が本当にこんな固い筆でも使いこなしたのかどうかはわかりません。
因みに、ムギはイネ科で、コウボウムギはカヤツリグサなので異なる種類です。



天橋立に咲く(1)ハマナス(浜茄子)

2005-06-12 19:04:22 | 植物観察1日1題
6月初め宮津天橋立を歩きました。宮津は何回も行っていますが橋立を歩き通したのは初めてです。4キロ足らず、ゆっくり歩いて一時間ほどのウオークです。
砂浜には海辺特有の植物が迎えてくれます。しばらくシリーズで紹介しましょう。
海岸を歩くときまず探してしまうのは、知床旅情であまりにも有名になったこの花でしょう。ハマナス(別名:浜梨)は、バラ科で、紫紅色の芳香のある5弁一重の花をつけます。
葉は、奇数羽状複葉で、枝幹に毛や刺が密生します。
日本では北海道、東北、北陸、山陰の海岸に自生し南限は島根県とされています。
偽果は扁平な球形で赤熟し、生食かジャムにします。花や実が美しく多くの園芸種がつくられ白花や八重咲きもあります。

花かと紛うマタタビの白い葉

2005-06-11 06:23:04 | 植物観察1日1題
丹後半島波見地区の谷筋の道からあちこちに白い花をつけたような木が見えました。
マタタビ(木天蓼)の葉です。マタタビ科のこの木は、山地の林縁に生えるつる性植物で,よく分枝して、絡みつくものがないと藪状に茂ることもあります。雄花しか付かない
雄株と果実のつく両性花の株があり、花の咲く頃枝先の葉が部分的に白くなるのが特徴です直径2cmほどの花が葉に隠れるように下向きに咲きます。目立たない花のために葉を
白く染めて虫を誘っているのかもしれません。
マタタビの名はアイヌ語のマタタムブに由来するという牧野説と、実を食べると旅に疲れた人もまた旅が出来るからだという2説あります。
猫にマタタビはよく知られていますが、葉、茎、実に含まれる揮発性のマタタビ酸が、猫科の神経を刺激し酔ったような状態にするのだそうです。
秋に熟す直径2cmの実は独特の辛味と芳香があり食用や果実酒にされます。またムシコブになった果実は漢方薬として鎮痛剤などに使われます。
(追記:この記事を書き込んだその夕方、滋賀県浅井町野瀬の友人宅でマタタビ酒を賞味しました。マタタビの実と蜂蜜と焼酎で造ったというその酒は実に芳醇で、猫ならずとも陶然としてしまいました)

思いがけない出会いに興奮:トキソウ

2005-06-10 05:33:43 | 植物観察1日1題
丹後半島の某所の湿地でトキソウの群落に出会いました。
案内してもらった人からも事前に聞かされてなかった思いがけない出会いにすっかり興奮してしまいました。
一昔前までは日本の何処にでも見られたというトキソウは、盗掘、湿地の開発、植生遷移などによって激減し、いまでは絶滅危惧Ⅱ類に分類される希少種になっています。
トキソウ:朱鷺草、鴇草(ラン科)は、山の日当たりのよい酸性湿地に生える多年草で、茎長15~20cm、茎の頂に一個の花をつけます。花被1個が直立し、他は唇弁を包むようつきます。中央の1枚は広く縁に鋸歯があります。
花の色が鳥のトキの羽の朱鷺色(淡紅色)に似ているのでこの名があります。
シャッターを切りつつ、この花が、絶滅した朱鷺と同じ運命をたどることがないようにと念じたことでした。
このトキソウに真っ赤な胴のハッチョウトンボも止まっていて、立ち去りがたい湿原のひと時です。

男か女か、墓に絡む恋の執念:テイカカズラ

2005-06-09 06:21:14 | 植物観察1日1題
林の中にテイカカズラ:定家蔓(キョウチクトウ科)の白い花が咲いています。
いわくありげなこの名は、謡曲の「定家」に由来しているようです。
都に上がった旅の僧が、千本のあたりで時雨に会い雨宿りしていると、里の女が来て、ここは藤原定家卿の時雨の亭だといい、僧を式子内親王(後白河天皇第三皇女)の墓所に案内して、定家と密かに深い契りを結んでいられた内親王が亡くなってから、定家の執心が蔓となって墓に這い纏わりついているのだと話します。女は実は内親王の亡霊で、定家は恋の亡霊となって成仏しきれないでいるから回向してほしいと頼みます。これが謡曲定家のあらすじです。式子内親王は“玉の緒の絶えなば絶えねながらへば・・・”などの多くの優れた和歌から感情豊かな恋もわかる女性として知られていますが、幼くして斎宮に上がり、下りて後も一人暮らしを通しています。最近、定家は内親王のサポ-ターであって二人の間には色恋沙汰はなく、内親王の意中の相手は実は法然であったとの論考があります。(「式子内親王、面影ひとは法然」石丸晶子) 別の話では、定家は美男でモテモテであったので、死後彼を慕う女性たちの霊が蔓となって墓に纏わりついたというのですが、定家は若いとき疱瘡に罹り“この卿けしからずみめわろき人なりければ・・・”(謡曲拾葉抄所引より)とあるのでこれも根拠のない伝説ということになります。
ともあれ、5つの花弁の先がスクリュウの形にねじ曲がり、白からやがて黄色に変わるテイカカズラの花を見ていると、男か女かの詮議は別として激しい恋に迷う執念の象徴として、この名前はぴったりだと思えてきます。

ヤブ中とは限らない:ヤブムラサキ

2005-06-08 06:57:19 | 植物観察1日1題
林の中にヤブムラサキ:藪紫(クマツヅラ科)の小さい花が咲いています。
藪に生える紫式部という意味でしょうが、藪の中よりは普通の林の中に生える落葉低木です。秋に紫色の実を付け紫式部の仲間となっていますが、花自体すでに秋の実に負けない綺麗な紫色です。
枝、葉、花序の萼に軟毛が生えるのが特徴で、特に若葉は、上面に単純短毛、下面に星状毛があり、ビロードのような柔らかい手触りなのでムラサキシキブと区別できます。
ところで、ムラサキシキブとして園芸店で売られているのは、多くはコムラサキといわれる種類であることが多く、他にも斑入りのアマドコロがナルコユリの名で売られていたり、フジバカマは、同属の近縁種であるなど、業者は平気で通りのよい名で売っていることが多いものです。本物ではなくてもそのほうが見栄えがよかったりしますのですこし困りものです。

金銀綾なして:スイカズラ(忍冬)

2005-06-07 06:46:11 | 植物観察1日1題
山辺を歩くと、あちこちで金色と白色の花をつけた蔓を見かけます。
スイカズラ(スイカズラ科)です。
日本、朝鮮、中国に自生する常緑の蔓性木本で、初夏、各葉腋に白色または淡紅色の花を2個づつ並べてつけ、花の色は後に淡黄色に変わります。このため一本の蔓に白と黄色の花が並んでつくので、金銀花ともいわれます。
花の形は細長い筒型で、花冠は5浅裂して唇形になっています。本では、この形が、花の付け根に口をつけて蜜を吸う時の唇に似ていることから“吸蔓”(すいかずら)の名がついたとしていますが、私は、田舎で子供ちがよくこの花の蜜を吸っていたので、もっとストレートに、“吸う蔓”といったのではないかと考えています。冬も葉が枯れないので忍冬ともいいます。
この花、中国や欧米では家の庭によく植えられるそうですが、芳香を持ち綺麗な花なのになぜか日本では庭に植えられることが少ないようです。

近づけば洒落れた意匠:ユキノシタ

2005-06-06 06:56:10 | 植物観察1日1題
庭の片隅にユキノシタが長い花茎の先に白い花を付け、かすかな風に揺れています。
花茎から分かれた小花梗につく白い花をよくよく見ると、5弁の内、下の2弁が足を踏ん張るように長く伸び、ごく小さい上の3弁には、紅い4個の斑点模様が散りばめられていています。雄蘂も四方に張っていて、なかなか洒落た意匠です。
ユキノシタは、普通雪の下と書き、葉の白いまだら模様を雪に見立てたという説や、白い下の2弁を舌に見立て雪の舌から来たなど諸説があります。漢名の虎耳草は縞目のある毛の生えた丸葉を虎の耳にたとえたものです。
なじみの深いこのユキノシタ、観賞用だけではなく、しもやけ、火傷、かぶれなどに良く効く薬草として用いられ、葉をてんぷらにしてもいけるという、なかなか重宝な植物です。
植物分類上、ユキノシタ科には、ユキノシタやダイモンジソウなどの見るからに近縁の草本類のほか、アジサイやウツギの仲間などおよそ縁遠いような木本類も含まれています。花の形から来たものだそうですが、この辺はなかなか素人にはわかり難いところです。

山に踊る白い坊さん:ヤマボウシ

2005-06-03 06:11:08 | 植物観察1日1題
この時期山を歩きますと、全体が白くなったような木に出会います。ヤマボウシ(山法師)です。
本州以西の日本と朝鮮、中国の山野に普通に生育するこの木は、5-6月に短枝の先に20~30個の黄色小花からなる頭状花弁を作り、その基部に先の尖った長さ3~6cmの白色総苞を4個つけます。山法師の名は、この中心の蕾の集合を坊主頭に、白い総苞を頭巾に見立たものです。四照葉、団子木、繭玉木などの別名もあって人々に割合なじみの多い木です。
このごろよく町でよく見られるハナミズキと同じ仲間です。
秋の紅葉も美しく、赤く熟す果実は食べられます。(ハナミズキの実は食べられません)

お断り:
 いつもご閲覧有難うございます。
明日から留守をしますので、一時休載し、6日(月) より再開します

初夏の山道ににひっそり:ナツハゼの花

2005-06-02 18:37:02 | 植物観察1日1題
林の道を歩いていると、低木の葉裏になにやら赤いものが見えました。近づいてみると、薄紅を帯びた赤褐色の釣鐘のような小さな花が房状についています。
ナツハゼ(ツツジ科スノキ属)です。うっかりすると見落としそうなこの小さな花ですが、
よくみると、ベニドウダンに似た形もよく、色合いもほどよく混ざり合っていて意外に可愛いいものです。葉に酸味があるのでスノキ属になっています。
夏櫨、夏黄櫨という名は、初夏の紅色の新芽の美しさを、櫨の木の秋の紅葉になぞらえてつけられた名です。いまはその葉も緑に変わっています。
ブルーベリーの1種といわれ、秋に黒色に熟す果実は、食べられるそうです。

卯の花は匂わない。謬説「夏は来ぬ」考

2005-06-01 06:52:02 | 植物観察1日1題
ツクバネ、タニ、ハコネに遅れて、空木の本命、卯の花(ウツギ)が咲き出しました。
唱歌「夏は来ぬ」(佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲) “卯の花のにおう垣根に・・・”
で歌われて誰でも知っている卯の花も、その地味さからか、実物となると案外知らない人が多いみたいです。
卯の花(ユキノシタ科ウツギ属)は、穂状の花序に白い小花を沢山つけ梅雨に先駆けて咲きます。白い蕾は米粒を連想させ、昔は咲き方で米の豊凶を占ったそうです。
ところで、この唱歌調子はよいのですが、私にいわせますと1番の歌詞は不自然で、この高名な詩人は頭の中で考えて作詞したとしか思われません。(1)卯の花は殆ど匂わないこと(2)ホトトギスの忍び音とは、南から渡ってきたばかりの時鳥のまだ練習中の鳴き声で、季節としては合うが、時鳥は普通森林にすみ、家の垣根で忍び音を洩らすなどは考えにくいこと(3)卯の花は落葉樹で枝や葉も疎らであり、美観と遮蔽性をおもんじる垣根に不適当で実際にはあまり見られないこと(ただし広辞苑には卯の花垣として載っている)などです。このように疑問の多い歌詞ですが、この歌の功罪はと問われれば、我が住む高槻の市の花である卯の花をこれだけ広く知らしめてくれた点で功の方を採りたいと思います。
ついでにいえば、広辞苑には、卯の花(おから)を使った料理名が8種類も載っていました。いくつか試してみることにしましょう。