新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
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物想う寄生植物、ナンバンギセル:南蛮煙管 

2005-09-17 07:06:11 | 植物観察1日1題
ススキの叢の根元で、葉を持たない、肌色の花茎に紅紫色の筒型の花を横向きにつけているのがナンバンギセル:南蛮煙管(ハマウツボ科)です。
ススキなどイネ科の根に寄生する、肉質無毛の活物寄生植物で、全体に赤みを帯び、葉は退化して自らは光合成する能力がなく、ごく短い茎は地表面近くに隠れています。
秋、直立する20~30cmの花の柄を出し、上端に1個の花をつけます。花は横向きに咲き、やや押された形の長さ3~5cmの筒形で、うすい紅紫色となり、萼は方形で先は尖ります。
卵形のさく果の中に詰まっているのは、ごく細かい種子ですが、寄生で成長するので、種自身に無用の栄養を蓄える必要がないということでしょう。
ナンバンギセルは、花の全形が昔の南蛮船の船員のマドロスパイプに似ているからつけられた名ですが、別名に俳句などでよく用いられる「思い草」があります。横を向いた花の様子を物思いにふけっていると見立てたのだという人もいますが、元をたどれば、万葉集の「道のべの尾花が下の思草今さらになぞ物か念はむ」の思草は何を指すのか種々論議があった中で、明治36年に出た前田曙山の「園芸文庫」という本で、ほかの花はススキの原にも生えるが、尾花の下にしか生えないものナンバンギセルのみである主張してより、万葉の思草はナンバンギセルであるとのいうのが定説になったというのが正しいようです。