邦画ブラボー

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「女経」(じょきょう)

2006年02月28日 | ★人生色々な映画
3人の監督による三話のオムニバス。

●第一話「耳を噛みたがる女」:増村保造 監督

貧乏な家に育った紀美(若尾文子)はお金だけが命。
キャバレーに勤め、言い寄る男たちを手玉に取る毎日。

ドライで可愛らしい女をやらせたら
日本一の若尾文子が主演。
どきっとするような色っぽい台詞も
彼女が言うといやらしく聞こえない。
友達役で左幸子が出演。さらりと爽快な結末。

●第二話「物を高く売りつける女」:市川崑監督

売れっ子小説家(船越英二)が失踪。
切り立った岸壁にたたずんでいると
どこからともなく美しい女(山本富士子)が現れる。
誘われるまま女の家に入るが・・
ミステリアスで先が見えないストーリーが楽しい。

何かが取りついているかのような不思議な雰囲気の女は
「爪子と申します」
名前が変わっているならしゃべり方も変。

山本富士子、メイクが濃く、尋常でない美人にぴったり。
あっけらかんの台詞に爆笑。
船越英二が下心みえみえの男を面白く演じている。

●第三話「恋を忘れていた女」吉村公三郎監督

京都が舞台。
お三津(京マチ子)は夫に死なれてから
女手ひとつで旅館をきりもりしている。
お金の勘定に追われるだけの毎日だったが、
昔の恋人(根上淳)に再会し
お三津の心に変化が現れる。

派手な展開もないがしみじみ見せる。
「な、わしと寝てえな。」中村鴈治郎 がいやらしい舅役で◎

市田ひろみが女優だったことも再確認した。
宮川一夫のカメラが撮る、京マチ子の着物姿も麗しく
後味がさわやかな傑作。

三人共、したたかに生きる女たちだけど、
女の色っぽさ可愛さ、計算高さ、すべてひっくるめて魅了する。

あなたはどの女、お話がお好きでしょうか?

楽しいメロディに乗せた
エンドロールのイラスト(アニメ)が、作品を見事に表して最高!

元になったという村松梢風の「女経」も読みたい。

1960年:増村保造 市川崑 吉村公三郎監督

美術: 山口煕 第一話「耳を噛みたがる女」
渡辺竹三郎 第二話「物を高く売りつける女」
  柴田篤二  第三話「恋を忘れていた女」

撮影: 村井博   第一話「耳を噛みたがる女」
    小林節雄 第二話「物を高く売りつける女」
    宮川一夫 第三話「恋を忘れていた女」

脚本: 八住利雄
音楽: 芥川也寸志  

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「226」

2006年02月27日 | ★人生色々な映画
2月26日に見た。

日本史上まれにみる大規模なクーデターであり
今なお謎が多いこの事件を、
若き将校たちからの視点で描く。

脚本は「肉体の門」で五社監督と
コンビを組んだ笠原和夫。

昭和11年二月二十六日、
安藤輝三大尉(三浦友和)、野中四郎大尉(萩原健一)、
栗原安秀中尉(佐野史郎)、丹生誠忠中尉(宅麻伸)、
磯部浅一(竹中直人)、坂井直中(加藤昌也)、
香田清貞大尉(勝野洋)、高橋太郎少尉(鶴見辰吾)、
村中孝次(隆大介)、中橋基明中尉(うじきつよし)ら皇道派の将校たちは
部下を率いて首相官邸を襲撃、陸相官邸、警視庁を占拠した。

すべてうまくいったかのようにみえた。
だが刻々と彼らを取り巻く空気が変わっていく。
国を憂い、信念を持って革命を起こそうとした彼らは
山王ホテルに立てこもり、逆賊として次第に追い詰められていく・・

テンポよく構築された脚本に引き込まれた。
笠原和夫らしく、綺麗ごとばかりは並べない。
将校たちの、焦り、哀しみ、
下士官たちのとまどいも書き込まれていた。
当時を詳細に再現した西岡善信による美術が素晴らしい。

追い詰められた将校たちの脳裏に浮かぶ
「愛しいひと」との哀切きわまる思い出シーンを見るのは
たいへん照れくさかったが(ここは笠原和夫テイストではない)
そんな思いを吹き飛ばすくらい、
女性たち
(安田成美・名取裕子・有森也美・藤谷美和子・賀来千香子・南果歩)
が美しかった。やっぱり五社監督の映画ですね。

兵隊の中に川谷拓三の顔を見るだけで
胸がぐっときてしまう自分が情けない。
もっくん・本木雅弘 の好演も光っていた。

仲代達矢、丹波哲郎、田村高弘らびっくりするくらいベテラン陣も多数出演。
思わぬ拾い物をした感じ。

長い間封印され、めったに聞くことがなかった「軍歌」は
純粋に「歌」として聞くと、とてもいいものが多いんですね。

お金かかっていて華やかだけど、題材が題材なだけに
それでいいのかと思ったりもする。

監督 : 五社英雄 
原作 : 笠原和夫 脚本 : 笠原和夫 
撮影 : 森田富士郎 音楽 : 千住明 
美術 : 西岡善信

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「網走番外地・望郷篇」

2006年02月23日 | ★ハードボイルドな映画
シリーズ三作目。
舞台は網走とは遠く離れた長崎。

故郷に戻った橘(高倉健)が
人情に厚い親分(嵐寛寿郎)の元で
真面目に働こうとするが、
たちまちというか、待ってましたと言うべきか、いざこざに巻き込まれてしまう。

ハーフの孤児との暖かい触れ合いもつかの間、
やっぱり網走に逆戻りというストーリー。

橘は何処へ行っても馬鹿なやつだった!
ほろりとくるけれどぐっとくるけれど、やはり馬鹿なやつだった

いたってシンプルな構成ながら
健さんの魅力とキレのいい演出で楽しく見られる。

随所に響く「網走番外地のテーマ」が
物語を絶妙に彩り抜群の効果。

回想シーンで「懐かしい」網走刑務所の
エピソードが挟まれるサービスもあり。

クセのある俳優陣もそろっている。
やくざの極悪親分役の安部徹
すごめばすごむほど可笑しくて最高。

杉浦直樹が「えっ?」という役で出演していたり
網走仲間・田中邦衛のアクの強い演技も楽しめる。

せっかく不敵に絡んでいた街田京介は
妙にイイやつで拍子抜けした。(ワルのキョウスケが見たかったよ)
石橋蓮司がペ~ぺ~のチンピラ役(やせすぎ)で出ているのも見もの。

健さんの歌は何度聴いてもいいですわ。

シリーズ一作目
■「網走番外地」の記事はこちら

1965年 石井輝男監督作品 原作 : 伊藤一 
脚色 : 石井輝男  撮影 : 稲田喜一 
音楽 : 八木正生 美術:藤田博

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「華岡青洲の妻」

2006年02月22日 | ★人生色々な映画
有吉佐和子の原作を
増村保造が撮ったらこうなるのかと興味深く見た。
脚色は新藤兼人。

名医華岡青洲が日本で初めて
麻酔薬を使った手術を成功させた影には、
嫁と姑の激しい人体実験合戦が隠されていたとは
お釈迦様でも知るまい。

増村監督はこの物語を
一人の男(市川雷蔵)を巡って生みの母(高峰秀子)
(若尾文子)が命がけで競い合うという
現代まで通じる永遠のテーマに置き換え、
ドライなタッチでテンポよく描く。

ナレーションが杉村春子。

ぎょっとするような手術のシーンや
動物実験の様子など大胆な演出が光るが、
お産のシーンやつわりのシーンも
なんとなくエッチ(死語)だなあと感じるのは先入観のなせる技か。

二人の大女優が共演しているので
さぞかし美しさも競い合っているだろう・・と思いきや、
若尾文子は完全に高峰秀子の引き立て役に徹している。

於継の完璧な美しさに比べ、加恵はおどおどと伏し目がちで、
若さだけが取り柄のようだ。
撮り方によって女優さんも変わるものだ。
終盤ようやく美しく撮られているのが皮肉。

だが、演技ではビリビリした渡り合いを見せていて
見ごたえあります。

森鴎外の名作「雁」も二人が演じているのを思い出す。
高峰版は豊田四郎、若尾版は池広一夫監督だった。

研究一辺倒ではなく情もある青洲を市川雷蔵が、
青洲の二人の妹を原知佐子と渡辺美佐子が演じている。
華岡家のすべてを見てきた妹の、
病床での独白は恐ろしい。

その渡辺美佐子は
去年NHKでドラマ化されたとき
ナレーションを担当し、
美術の西岡善信も生家をロケに提供するなどして参加していた。

争いあっていた姑と嫁だけど、
心底気持ちが判るのはお互い同士だったのではないか?

青洲の父を伊藤雄之助が演じているが
アクが強すぎて笑ってしまった!

監督 : 増村保造 原作 : 有吉佐和子 
脚色 : 新藤兼人 撮影 : 小林節雄 
音楽 : 林光  美術 : 西岡善信

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「氷点」

2006年02月20日 | ★人生色々な映画
氷点=水が氷結するとき

北海道旭川にある総合病院の院長宅。
昼下がりにショパンを弾く夏枝(若尾文子)。

出張を早く切り上げた啓造(船越英二)を優しく迎えるが
夫の目に映ったのは、テーブルの上におかれた
「ふたつのコーヒーカップと灰皿」だった。

そそくさと片付ける夏枝を見る夫の疑いのまなこ。
船越英二は微妙な感情表現がとにかくうまいです。

その日の夕方、遊びに出かけたまま帰らなかった幼い娘ルリ子が
河原で絞殺死体となって発見される。

駆けつけた医師の中には
妻と密会していたっぽい村井(成田三樹夫)の姿もあった。
娘の亡骸を抱きしめながら怒りと嫉妬に燃える夫!

世間で人格者として通っている啓造は
なんと娘を殺した犯人の娘を引き取り、
育てることを決意する。

「汝の敵を愛せよ」

ここからが大悲劇の始まりなのです。

それは娘をほったらかして
男と会っていた妻への恐ろしい復讐だった。

何も知らない妻は、女の子を溺愛するが、
あるとき書斎で夫の日記を読んでしまう。

天使のように清らかな心を持つ
養女洋子(安田道代)に向けた夏枝の憎しみ。
船越英二の妻へのまなざし。
兄(山本圭)の妹を気遣う目。

複雑な感情を表現する俳優さんと
監督の意を的確に汲むカメラ。

「女は子宮でものを考えるのさ」なんていう、
問題発言もある脚本(水木洋子)も素晴らしい。

旭川の自然と真っ白な雪が人間の罪深さを際立たせる。

同時期にテレビドラマにもなって大変な人気を博した。
ドラマでは洋子を内藤洋子が、夏枝を新珠三千代が演じた。

残酷であると同時に再生の希望も見える。
とてつもなく重いテーマを山本監督が
サスペンスタッチで見せてくれます。若尾文子が美しい。

1966年 山本薩夫監督作品 原作:三浦綾子 :脚本 : 水木洋子  撮影 : 中川芳久
音楽 : 池野成 美術 : 間野重雄

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