邦画ブラボー

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「網走番外地」

2005年07月05日 | ★ハードボイルドな映画
極寒の地、網走に降り立った男たち。
その両腕にはガッチャン!と
手錠がはめられていた。

高倉健、田中邦衛、南原宏治、待田京介、嵐寛寿郎・・

このメンツ!
登場場面がいい。
それぞれの顔をアップで抜く、
「らしい」登場の仕方でワクワクする。

ここから一瞬たりとも退屈させない、
男たちの世界が繰り広げられる。

雑魚寝状態の雑居房には
古参の牢名主(安部徹)がのさばっていた。

何をやって入ってきたか、刑期は何年かが自己紹介だ。
ひとりひとり名乗っていくが
なぜか最年長のアラカンだけは口をつぐんでいる。

その素性が明らかになる大見せ場があるのだが・・・
それはあ・と・の・お・楽しみ!

アラカン凄い!

高倉健は親身になって面倒を見てくれている保護司(丹波哲郎)にも
心配をかける「馬鹿な」やつ。

時々不幸な生い立ちが追憶形式ではさまれ、哀れを誘う。
だけどヤッパリ馬鹿なやつ。

シリアスなドラマなのだけど、
深刻なテーマをどこかユーモラスに描いている。

高倉健が歌う主題歌「網走番外地」がずんと響く。
音楽の入り具合もイイ。

渡哲也、小林旭、鶴田浩二・・、
スターの歌には誰も真似できない味がある。
(例外もたまにあるが)
この歌は受刑者の間で歌い継がれていたものが採譜、編曲されたそうで
放送禁止の憂き目にあったとか。
反社会的だというのが理由だそうだ。

大雪原の中を走るSL。
クライマックスは手に汗を握る!

追記:
大ヒットしたシリーズの記念すべき第一作目。
この作品を入れてなんと18本作られた。

石井輝男監督作品 10本、
マキノ雅弘1本、佐伯清1本、降旗康男、6本。

1964年 石井輝男監督作品 脚色 石井輝男 原作 伊藤一 

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「おふくろ……」 (オリイ)
2005-07-06 22:10:16
 私もつい先日観ました。個人的に、実はやくざ映画の

類は苦手なのですが、この作品はそれとは違う痛快さが

あって、アクション映画と称されることもあるのも

うなづけました。

 おっしゃるように、アラカンと健さんが良いですね。

アラカンの正体は予備知識があったのですが、最初の台詞

が良かったです。この作品の健さんは、おっしゃるように

ちょっとバカな若者ですね(笑)。

 その他、悪役陣では南原宏治の汚な作り(?)のメイク

が凄いと思いました。それゆえ最後のどんでん返しが

効果的で、それは知らなかったので「おぉっ」と思って

しまいました。



 ネット上で検索してみて、この作品に先立って日活で

1959年に同題の作品が作られていたということを知って

驚きました。同じ原作に拠っているらしいですが……。

日活版はどんな作品なのか、機会があったら観てみたい

ものです。
返信する
日活版 (spok23)
2005-07-07 09:16:01
日活版というのがあるのですか!

知りませんでした。それはぜひ見てみたいような・・



南原宏治のしつこさには参りましたね。(笑)

メイクのこと・・なるほど!



まったく予備知識がなかったので

アラカンの場面も

「くるぞくるぞ・・キタ~!」というかんじでとても楽しめました。



あと、「おふくろ」の偉大さも感じました。(笑)
返信する
タカオ・カンベとは。 (さすらい日乗)
2005-07-10 08:25:47
日活版と東映版は全く違うようです。と言うより、題名だけ借りて石井輝男が話を創作したようです。

そして、この主題歌の作詞者タカオ・カンベ、他では全く聞かない名ですね。それもそのはず、彼は東映の大部屋の役者で、ギターの弾き語りが上手い事から石井監督の命で書いたのだそうです。本名は神戸孝夫でしょうか。
返信する
そうでしたか (spok23)
2005-07-10 08:37:45
この作品は全体にタイトにまとまっていて

盛り上げるところもあり、

笑わせるところもあったりと

劇画のようにドラマチックで楽しめました。



歌の入りのタイミングもよかったです。



歌詞も映画にぴったりあってますが、

そういうところで調達したとは。

返信する
カッコ良かったです。 (晴薫)
2006-04-22 22:23:13
>スターの歌には誰も真似できない味がある。

>(例外もたまにあるが)

私もそう思います!
返信する
いいですよね (ブラボー)
2006-04-22 23:08:18
晴薫さん、こんばんは。



この歌すごくイイのに

放送禁止の憂き目をあったらしいですよ。

健さんはやはり味がありますねえ。
返信する
東映ドル箱シリーズの記念すべき第1弾 (mirage)
2023-02-23 12:39:25
大スター・高倉健が大ブレイクするきっかけとなった、東映ドル箱シリーズの記念すべき第1弾が、この 「網走番外地」ですね。

チャンバラ時代劇から任侠映画路線への転換期に生まれた、1960年代の東映プログラム・ピクチャーの記念碑的大ヒット作品でもあり、石井輝男の脚本・監督で、娯楽映画として、素晴らしかったと思います。

「日本侠客伝」シリーズ(1964年~1971年)、「昭和残侠伝」シリーズ(1965年~1972年)と並んで、大スター・高倉健の絶大な人気を支えた、東映のドル箱シリーズとして計18本が製作され、この映画は60年安保闘争が終わって5年後の1965年に、その第1弾として公開され、単独の作品として観てみても傑作だと思います。

そして、この「網走番外地」という映画は、2本立て興業が全盛の中、もともと、この2本立ての添え物として製作されたものが、予想外の人気を集めた事によって、結果として合計18本に及ぶ、大人気シリーズになったのです。

因みに、この映画は1965年公開の日本映画としては、市川崑監督の「東京オリンピック」、黒澤明監督の「赤ひげ」に次いで、この年の興行成績で何と3位の大ヒットとなったのです。

伊東一の原作から、題名と舞台設定を採り入れて、スタンリー・クレイマー監督、トニー・カーティス、シドニー・ポワチエ主演の「手錠のままの脱獄」をインストールしたアクションを描こうとする、奇才・石井輝男監督の試みは、網走刑務所に収監された受刑者の現在と回想シーンで、巧みに起伏をつけながら、クライマックスの大脱走へとストーリーを盛り上げていると思います。

極貧の不幸な家庭環境に育ち、ヤクザの道に入った主人公の橘真一は、暴力的な男の後妻になった母親が、ガンになったと聞き、死ぬ前に一目だけでも会って、これまでの極道を詫びたいとの一心から、仮出所を目前にして、脱獄の企てに乗ってしまいます。

当時の日本映画界において、例えば、日活の石原裕次郎が上流階級、小林旭が中流階級といった雰囲気を醸し出していたのに対して、高倉健は最下層のどん底の境遇に育った主人公を演じる事によって、この大ブレイクのきっかけを掴んだのです。

北海道の雪原が、大自然の猛威を奮う零下30度の過酷な風景や、新宿の歌舞伎町を足早に急ぐ高倉健を、ゲリラ撮影で追跡した夜の新宿の生々しいビジュアル感。

東映の上層部が、製作費の関係でモノクロ作品に格下げした製作規模にも少しの妥協も許さず、暗鬱なスクリーンに映し出された、"白と黒のイメージ"がとてつもなく感動的ですらありました。

そして、甘い声の石原裕次郎、甲高い声の小林旭になくて、高倉健の特徴としてあったもの、それがドスの効いた低い声で、それが、彼の演技においても、映画が最も盛り上がる最後の正念場において、腹の底から押し殺した低い声で発する"極め台詞"が、それまでのストイックで寡黙な主人公の最高の武器になるのだと思います。

この「網走番外地」で主人公の橘真一は、しばしば「俺は馬鹿だ」と自嘲的に言いますが、しかし、馬鹿と知りつつ、人間には、男には、やらねばならぬ事がある、やらねばならぬ時がある、というのが、高倉健映画の根本的なテーマでもあるのです。

高倉健は、この映画の同名の主題歌も歌っていますが、その歌い方は決して上手いとは言えませんが、訥々とした武骨な節回しで歌うその歌は、自分は所詮、器用には生きられない----と思っていた、当時の多くの人々の心の襞にしみじみと深く沁み込んで、多くの共感が得られたのだと思います。

橘真一というキャラクターの造形から表現された"日陰者のパトス"で、多くの大衆を魅了した、この高倉健という稀代の俳優が、後に国民的な大スターとしての地位を築いたのは当然の事だと思います。
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mirageさんへ (ブラボー)
2023-02-24 10:10:09
「網走番外地」シリーズの
第一作目は、健さんをはじめとする
一筋縄ではいかない面々がかの地に降り立つシーンから、ワクワクさせられました。
ほんとうに石井輝男監督はとんでもなく面白い映画を作ってくれたものですね!

先日、CSで降籏康男監督の
「新網走番外地 吹雪の大脱走」を
再見したばかりです。
「おふくろさん」がここでも重要なモチーフだったのが印象的でした。
ほんとに主人公はバカな男なんですが
胸を熱くさせられるんですよねえ・・
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