邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

ドラマ「飢餓海峡」のすごい脇

2007年01月30日 | ★人生色々な映画
ドラマ版は
山崎・若山・藤の中心人物だけではなく
素晴らしい役者たちがすごい芝居をしている。

犬飼からもらった金で
東京に出てきた八重が頼っていく親友に新橋耐子が扮し、
圧倒的な存在感を見せる。
「わたすはジョーとカリフォルニアっつうとこさあ行くだよ。
そこで百姓するだァ~」


まるで美しい歌を聞くようだ。

唐突ながら、この人は美輪明宏に似ていると思う。
いえ、顔の濃さ・長さが似ているというわけではなく、
次どんな行動にでるか、固唾を呑んで見守る芝居のスケール、
大輪の華(鼻ではない)を感じさせる貫禄が、である。
可笑しくてやがて哀しい女。いつまでも見ていたかった。

犬飼が樽見京一郎として成功していく過程で妻になる
三条泰子もまたくわせもの、いやしたたかな女で秀逸だった。
「絵島生島」でも上手い人だなあと思ったが
絶妙な台詞の「間」、すばらしく通る美声は
舞台(文学座)で培われたのだろうか。

美貌と色っぽさも群を抜いている。
秘書とも通じていながら、
冷たい顔で何事も無いようにお茶を入れたりしている。
終始和服を着てつんとすまし、夫婦間であっても他人行儀な会話を交わす故、
山崎努に「気取りやがって!」と押し倒されるシーンには
誰もが思わず身を乗り出してしまうことでしょう!

この濡れ場の演出はそれはもう
たいへんなものでした。

愛されなかったために愛することが出来なかったのか。
憎んでいた?
でも愛していた。
ラストに見せる涙がそう語っていたように思う。
やはり
男女のことは深い深い、底が見えない谷間のようである。

八重(藤真利子)を取り巻く男たちもなかなかの面子である。
八重と一緒になりたいがために
人の金に手をつけて御用となるダメ男役に森本レオ
この方、なんだか妙にラブシーンは上手いわ。(爆)

再び娼婦になった八重に入れあげる客に殿山泰司、河原崎長一郎
二人とも持ち味生かした役どころでした。

弓坂警部補(若山富三郎)の家庭の様子も細やかに描かれているが
つましい暮らしをささえる妻に八木昌子。
地味なたたずまいながらいつも印象に残る人。
ここでもじんわりと暖かい味を出していました。

企画:今村昌平
監督:恩地日出夫、浦山桐郎
脚本:石堂淑朗、富田義朗
音楽:真鍋理一郎

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「まだそんなに老けてはいない」?

2007年01月29日 | ★TV番組
題名からして
開き直っている山田太一ドラマは、
友人と賭けたとおり、
主人公(中村雅敏)と女(余貴美子)の間には何もなかった!のでアル。

山田太一と不倫とくれば当然
「岸辺のアルバム」と比べてしまうのが人情。

時代を切り取るドラマにしては
すこぶる歯切れが悪いものだった。
衝撃は?ひねりは?と期待するほうが悪かったのか。

台詞も不自然で、
“まだそんなに老けてはいない“主人公や女たちの
ずるさといやらしさばかり目についてしまった。
女は都合よく外国に旅立つし。

登場人物の誰にも共感できない話というのも
久しぶりだなあ。

まだ、「チョイモテたいオヤジ」が
右往左往するようなシャレたコメディの方が正直で断然面白そうだ!
(企画)

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ドラマ「飢餓海峡」冒頭

2007年01月29日 | ★人生色々な映画
衣食足りて、
礼節は地に堕ちましたが
おかげさまで「飢餓」は無くなった日本です。
犬飼が八重からもらった握り飯の美味さは
私たちには到底理解出来ないのかもしれません。

極貧の環境で育った主人公犬飼太吉は
嵐の夜に強盗・放火犯の一味に加わる。
青函連絡船沈没の騒ぎに便乗、
盗んだ船に乗って沖に出たところで
仲間二人を殺して大金をせしめる。
逃亡中、飛び乗った汽車の上で
娼婦の杉戸八重に出会う。

まだハタチそこそこで少女のような藤真利子。
美しさ瑞々しさが緑の中で際立ち、思わず見とれてしまう。
かたや、八重が手渡した握り飯を貪るように食べる犬飼はひげボウボウ。
途中で汽車を飛び降りた犬飼だったがその後花街で偶然二人は再会。

「熱狂的な」一夜を過ごす。

この一夜の契りが運命を決定することになるとは!!

山崎努も髭をそって男前だし、絡みシーンは扇情的だ。
映画版の左幸子がみせたような
イタコもどきの神がかり演技はありませんが
若く幸薄そうな藤八重の東北弁、
訴えるような表情はたまりません。

犬飼が別れ際に決心したように新聞紙に包んだ大金を渡すシーンもいい。
よけいな台詞が無く、怒ったようにドスン!と置く。
とてもリアルな演出であった。

八重のあわてふためきぶりもまた臨場感があった。
咄嗟に股の間に隠した包みを
薄暗い小部屋の押入れに
大事に、大事にしまうのである。

ドラマ版はエロティックな部分を強調している。

その後お互い忘れられなくなったと言うだけあって
(再会の時に臆面も無く言ってました)、
二人のシーンは天下一品でした。
八重は恩人としてだけではなく、
生涯たった一人本気で愛した人として
犬飼を慕い続けるのである。
犬飼もまた・・

だけどこの二人、
たった一日ぽっきりの出会いだったのですよ。

男女のことは何しろう~ん深い。深い沼のようだ。

企画:今村昌平
監督:恩地日出夫、浦山桐郎
脚本:石堂淑朗、富田義朗
音楽:真鍋理一郎

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ドラマ版「飢餓海峡」

2007年01月27日 | ★人生色々な映画
録画しておいた
ドラマ版「飢餓海峡」全8話を見ています。
1978年放送。
主人公の犬飼に山崎努、犬飼を慕う娼婦杉戸八重に藤真利子。
企画は今村昌平。
映画版に劣らぬ面白さで丁寧な作り。
終戦直後の庶民の貧困生活や色街の雰囲気も
よく伝わってくる。

監督は浦山桐郎と恩地日出夫、
脚本は石堂淑朗と富田義朗が
かわるがわる担当している。

冒頭は青函連絡船に乗った
年老いた元警官(若山富三郎)の回想から始まる。

内田吐夢監督、三國連太郎主演の映画は
嵐の中での強殺が掴みシーンだったが、
こちらはぐっと叙情的な出だしだ。
ギターの音色が物悲しさをかきたてる。
水上勉って・・なんと暗いのだろうか。
だけどひきつけられてしまう私は日本人ど真ん中。

伴淳三郎が演じた弓坂を若山富三郎が熱演している。

山崎努はもちろんよい。
が、藤真利子が飛び切り上手いのには驚きました。
そして美しいのにも!

企画:今村昌平
監督:恩地日出夫、浦山桐郎
脚本:石堂淑朗、富田義朗
音楽:真鍋理一郎

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「絵島生島」*ドラマ*後半

2007年01月25日 | ★愛!の映画
何が驚いたって、
お役目大事のために親の死に目にも会おうとしなかった
真面目な絵島の
恋狂い、大胆変貌ぶりには
誰でもたまげることだろう。

お世継ぎ生母でもある、
月光院(小畠絹子◎)を落としいれようとする
側室天英院と老中一味が、
スキャンダルをしくみ
二人は見事その術中にはまってしまうのだった。
補足:天英院のスパイ役、
三条泰子が人形のような美しい顔ながら、ワルくて◎

絵島生島事件はでっち上げで、
そのような事実は無かったという説もありますが
この話ではしっかり 男女関係あります。

将軍の病死後も
お側用人(佐藤慶は無表情ながらもエロエロ演技・眉毛無し)と
関係を続ける月光院に刺激されてしまう絵島は
生島恋しさのあまり
ついには公金にまで手をつけてしまう!

前半のキャラとは大いに異なる主人公の姿に
とまどいを感じるが
それだけ愛は激しく強かったのであろう。
だが大奥総取締りとあろうものが
証拠に残る濃厚な恋文を臆面も無く
書きまくったりするだろうか?

こう考えてみました。

腹が減った人間の目の前に
いきなりすごいご馳走が湯気をたてて現れたらどうするでしょう?

食べますね。

もう死んでもいいから食べたい!

そういうことかもしれません。
へんなたとえですみません。

その他、
幼い上様(8歳!)が女中のお乳を触り、
触られた女中が処分されてしまう仰天「お乳セクハラ事件」エピソード
が差し込まれたり、
絵島の後見人で清廉潔白風の御殿医(松村達雄)
があっさり寝返ったりと
中盤の脚本はちょっと意味不明。

だが
そんなドタバタも、
いよいよ絵島生島が捕らえられたあたりからぐっと引き締まる。

特に最終回、
人里離れた山奥に幽閉された絵島が
新五郎の義妹(岩井友見)が届けた舞台衣装に語りかけ、
一緒に踊る一人芝居は感動的
大女優有馬稲子の本領発揮!と言うにふさわしく、大変感じ入りました。

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