邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

華岡青洲の妻(2)”嫁と姑”

2005年01月29日 | ★TV番組
いよいよ、雲平(谷原章介)が京から帰って
姑と嫁の本格的な戦いが勃発!

姑於継(田中好子)の冷たい言葉に驚く、加恵(和久井映見)。

誠実だが、いかにも天才医者らしく日常のことには
無頓着風の雲平。
初めての床入りで、加恵の懐に手を入れた瞬間
「外科医の目だった」と、渡辺美佐子の絶妙なナレーションが入って笑った。

身なりも構わず兄のためにつくす妹ふたり(中島ひろ子・小田茜)、
思いっきり息子バカの豪放磊落な華岡直道(石田太郎)もよかった。

とにもかくにも雲平さん中心に回る華岡家と、
その様子にとまどう加恵。
だが一番のとまどいは姑の手のひらを返したような冷淡さだった!

幼い頃に憧れた於継の象徴である白い曼荼羅華の花を
泣きながらむしりとる加恵。(同情)
夫のいいつけに張り切る加恵。(可愛い!)

出産のため実家に帰り実母にぐちをぶちまけるシーンでは、
完全に加恵と一体化する自分!
「あんなにひどいひとはいない!うわべと中身が違うのや!」
(そうやそうや!そのとおりやよし!)(もっと言ってもいいのやのし!)

だが、加恵の母の言うことにゃ・・・
「嫁と姑いうたら所詮そんなもんやしてよし。
昔から変わらへんし、これからも変わらへんですやろ。
そやから加恵、泣いたかて、無駄。
里に帰って私の前でメソメソしたかて、なんにもならへん。」
(う~ん参った)

けっして甘くない有吉ワールド!
昨今の癒し、優しさブームと相反する厳しさがここに。
感銘受けました。
根岸季衣の気負いのない、だけどきっちりとした芝居、
そしてその母の言葉を聴く和久井映見の姿にも!

ええもん見させてもらいました。
子供を抱き、再び華岡家に入っていく加恵には
新たな決意の表情が。

日本映画界の重鎮であり、増村保造監督の映画にも参加していた西岡善信
美術を担当している。

加恵の実家のしつらえの美しさ、
華岡家のセットの素晴らしさを思うと大納得!
箪笥、鏡台、裁縫箱(垂涎)など、細かいものも厳選された本物を使っている。
映画好きも必見の作品だと思う。

来週はとうとう人体実験が始まるのか?

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「回路」

2005年01月26日 | ★恐怖!な映画
甘く見ていた私がばかでした。

怖かったです。
音が、声が闇が影が~~~!!

だけど、一番恐いのは
孤独な「死」を考えた時。

黒沢監督の映画は心の奥底にある不安をあぶりだす。
ハリウッド式の派手な演出はないし、
「CURE」もそうだったように、恨み、怨念という概念もない。
そこにあるのは漠然とした大きな不安。

我々を必ず待つ死。
死を考えるのは誰でも恐い。
誰も経験したことが無い世界。
人はみなバラバラなのか・・もし死んでも孤独だったら?
ひとりぼっちだったら?
あの世とこの世に果たして境界線はあるのか?

黒沢監督が脚本書いています。

あの世をつなぐ回路が開かれた時、
がらがらと世界は崩れていき、
街は死の匂いに満ちていく。

パソコンの画面に突然現れる「なにか」の画像、
フリッツ・ラングに強い影響を受けたという「影」の威力も存分に発揮されていた。
ガムテープで封印された「開かずの間」。
次々と死に取り付かれていく人々・・

お、おまえもか~~~!お、おれもだ~~!

恐怖映画や小説にも決まりごとみたいなものが存在していて、
いつのまにか頭の中に既成概念が出来てしまっていることに気づく。

霊は気体のようなもの・つかめない・喋らない・・
だが、この映画では~~~!

想像をはるかに超えたものを見てしまうと、
人の心はもろくも壊れてしまうのかもしれませんね。
そして、つながろうとすると・・

黒沢清(回路)と清水崇(呪怨)と中田秀夫(リング)・・
Jホラー三羽烏(!?・・と呼ばせていただきます)は海外での評価が高い。

清水監督と中田監督はハリウッドデビューを果たした。
熱いオファーはもう来ているのだろうが、
黒沢作品こそ、海外でどういう風に受け止められるのか興味が湧くところ。

CM「たまにはババンと!」の加藤晴彦が自然な演技。
生命力にあふれているはずの若者たちが、死にとりつかれるという設定もリアル。

他に麻生久美子、武田真治、小雪、
役所広司(ちょっとだけ)、哀川翔(ちょっとだけ)、風吹ジュンが(ちょっとだけ)出ている。

部屋を暗くしてみない方がいいです。
怖いですから~~

デヴィッド・リンチ,、またクローネンバーグがそうであるように、
黒沢監督の作品には一貫した黒沢的世界がある。
好き嫌い・賛否両論はあるけど、稀有な表現者・アーティストだと思う。
黒沢はクロサワを超えるかもね!

2000年 黒沢清監督作品 
脚本 黒沢清
撮影 林淳一郎 音楽 羽毛田丈史
音楽プロデューサー和田亨
歌 Cocco コッコ

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「華岡青洲の妻」”夫のいない婚礼”

2005年01月22日 | ★TV番組
日本初の麻酔手術が成功した影には
嫁と姑の命がけの戦いがあった・・・

これまで何度となく舞台化され、映画化もされた有吉佐和子の原作。
今回はNHKドラマで
和久井映見と田中好子の戦いとなった!

有吉佐和子は女の心理を鋭くえぐる。
女ならではの視点からの傑作が多い。
この作品も嫁と姑のドラマを究極までつきつめている。

女として、姑の於継に憧れる加恵が愛らしい。
嫁を見る於継の目はすでに何か不穏な気配が見え隠れ。
婚礼の様子、
青洲の二人の妹、医者の父など、
華岡家の様子が丁寧に描かれていた。

傍目には人もうらやむ仲のいい理想の嫁姑だったが、
勉学のため京都に行っていた雲平(後の青洲)が
帰ってきた時から状況は一変する・・・

いいところで終わった。
これからの壮絶な戦いの序章!

新妻の視点から描かれているが、
姑の視点からだとまた違う話になりそう。
そんなことを考えるのも楽しい。

紀州の言葉もはんなりと耳に心地よい。
脚本は二人で分割。古田求(1・2・6話) 
森脇京子(3・4・5話)となっている。

ナレーションは渡辺美佐子。落ち着いた語りがまたよい。

ドラマがヒットすると、
「蝉しぐれ」のように
映画化のチャンスもあるかもしれないなどと考える。

過去に増村保造監督の傑作があるが(若尾文子と高峰秀子のバトル!)
平成版も見てみたい。
女が見たい映画になりそう。

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「里見八犬伝」

2005年01月21日 | ★ぐっとくる時代劇
再見。

こんなにテンション高かったっけ?
というのが最初の印象。
なにしろ千葉真一、真田広之、志穂美悦子などが所属していた
JAC(ジャパンアクションクラブ)がもっとも勢いがあった頃。
そして角川映画も。

特撮がしょぼいなんて言わないで。
老婆が顔をバリバリひん剥いたと思ったら目玉がびよ~~んと飛び出し、
あっという間にむかでの化け物に変身するなど・・文句なしに・・
楽しい。

滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」をベースにした
深作欣二監督・鎌田敏夫原作脚本の新八犬伝。

八犬士と妖怪集団との戦い。
悪者、いいもの、どちらも魅力的。

妖怪軍団の女王、夏木マリ
血のお風呂に入ると若返るというていたらく。
この映画の体当たり演技で妖怪キャラに開眼したと思われる。

夏木マリが溺愛する息子に、
妖しいメーキャップでますます濃い目黒祐樹
蛇の精?、妖の介に萩原流行(ながれとよんで)

八犬士は苗字にみな「犬」がつくのだ!!
真田広之(犬江親兵衛)、千葉真一(犬山道節)
寺田農(犬村大角)、志穂美悦子(犬坂毛野)
京本政樹(犬塚信乃)、大葉健二(犬飼現八)
福原時浩(犬川荘助)、苅谷俊介(犬田小文吾)

どうでしょう。このまがまがしさは!

「将軍家光の乱心・激突」では大いに空回りしていた
京本政樹のテンションの高さも、この映画ではちょうどいい。
それほどみんな狂おしいほどに派手で熱い!のだ。
京本と岡田可愛のカップルも屈折していてよい。

そしてこの映画で最も光っているのは、
真田広之はまあ置いといて、
現長渕剛の妻で芸能界引退してしまっている、
志穂美悦子!

切れのいい抜群のアクション、
確かな演技力、宝塚スターのような美貌と
三拍子揃った才能を持ちながら引退してしまった。
若くて一番綺麗な頃の作品が見られるからいいか・・
あらためて長渕剛をうらめしく思った。

真田広之ははじけてます!後ろ回し蹴り、飛び蹴り、
崖登りと、若さいっぱい。
ヒロイン薬師丸ひろ子とラブシーンも。

最近こういう荒唐無稽で楽しい映画があまりないなあ・・

その昔、岡田真澄と契約結婚という変わったことをして
話題になった、パントマイムのヨネヤマママコが「船虫」役で出演している。

「クリムトの間」での”ながれ”と志穂美悦子のからみは見もの!

1983年 深作欣二監督作品 鎌田敏夫脚本 東映

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「陸軍中野学校」

2005年01月19日 | ★ハードボイルドな映画
戦時中実在したという、わが国のスパイ養成学校の話。

想像も出来なかった極秘機関の話だけに、驚きのシーンの連続。

陸軍予備士官学校を卒業し、陸軍少佐になったばかりの三好(市川雷蔵)が
上官に命じられた場所に行くと、
そこには士官候補生が18名集められていた。

草薙中佐(加東大介)が作った陸軍中野学校は、
選りすぐった青年を集めた陸軍初のスパイ養成学校だった。

人気を集めた陸軍中野学校シリーズの第一回目の作品。

スパイになるための訓練は
ここで書くのもはばかれるような過激な内容だ。

拷問を受けた際の訓練、
薬物の学習、爆薬の学習、金庫破り教習・・
暗号解読、変装技術、外国語習得、・・スパイとしての心構え・・
はては社交ダンスの教習、女を悦ばせる実践!訓練まで
各方面からの「専門家」を講師に、
ありとあらゆることを学ぶ・・(結局書いてしまいました)

耐え切れず精神を病むもの、挫折するものなども出る。粛清も・・ある。
笑える箇所もあるのがまたすごいところ。
増村保造監督のパワー全開。

加東大介の情熱的で人間味あるキャラクターと
クールな市川雷蔵のコンビのコントラストが魅力的。
この作品には待田京介が癖のある役どころで出演している。
雷蔵の婚約者役に小川真由美。

誰もが嫌がるスパイという任務について、情熱的に語る草薙中佐。
沸騰するやかんのように熱い!
「死ぬな!絶対死ぬんじゃないぞ!」
「俺は嫌だ!ぬける!」と言ったばかりの青年たちでさえ、
たちどころに納得させられてしまう熱い弁舌!

スパイという生き方。

市川雷蔵ら普通の青年は、
熱いプライドと任務遂行のためには手段を選ばない、
鉄のような意志を持った完璧なスパイへと変貌を遂げていく。

これはあくまでも映画。映画である。映画なの!
と思って見たが、
市川雷蔵は三好になりきっていて、恐いほどだった。

1966年 増村保造監督作品 脚本は星川清司 大映

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