邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「夫婦善哉」

2005年06月28日 | ★愛!の映画
大阪船場にある大店の若旦那柳吉(森繁久彌)
芸者蝶子(淡島千景)と駆け落ちして勘当されてしまう。

蝶子は柳吉にとことんつくす可愛い女だ。

勘当という言葉も今はあまり聞かなくなった。
親としてのけじめのつけ方があった時代。

蝶子が身を粉にして働いた金を
一晩で飲んでしまった挙句、
病に倒れる柳吉。
泣く暇も無いくらい苦労の連続の蝶子。

淡島千景、綺麗ですよ。

森繁がどうしようもなくだらしない
ボンボンにはまっている。

勘当された身でありながら実家に赴いて
虚勢を張ってみたり、金を無心してみたり。
だらしないくせに見栄っ張り。
蝶子にみせる甘えた顔、
うろたえた様子、どれもこれも人間国宝の芸!

「風情」、「人情」という言葉頭の中に漂う。

柳吉の妹・筆子(司葉子)が迎えた婿養子に山茶花究
この人はやくざ、役人、商人どんな役をやっても最高!

「キチガイのようにきれい好き」で、
几帳面な商売人を演じていて見ものです。
じっと見ていたくなる俳優さんだ。
森繁との台詞の間も抜群。

柳吉を勘当した父に小堀誠 、
置屋のおかみ、浪花千栄子、ちゃっかりした柳吉の腰巾着に田中春男、
本物のてんぷらやのような蝶子の父役、田村楽太 など

脇も芸達者がそろっている。

「夫婦善哉」の店、
当時ハイカラの象徴だった、「ライスカレー」が出る食堂。
巨匠伊藤熹朔による法善寺横町や大阪の商店などの美術、
ため息が出るほど素晴らしい。

思うひとがいて思われる人がいる。

この二人、すったもんだしても最高に幸せなんだろうなあ。

雪の法善寺横町を寄り添って歩く二人。
「道行」などという言葉も思い出す。

こんな上質の映画を
なかなか映画館で見られないのは残念で不思議。

1955年 豊田四郎監督作品  脚本八住利雄 美術 伊藤熹朔
 原作 織田作之助 音楽 団伊玖磨

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「嗤う伊右衛門」

2005年06月26日 | ★愛!の映画
京極夏彦原作 蜷川幸男監督作品「嗤う伊右衛門」を見た。

笑ったことが無い男、伊右衛門(唐沢寿明)は
勝気で情熱的な岩(小雪)と結ばれるが・・

唐突でわかりにくい筋運びは意図的なのだろうか?

そしてお岩さん迫力あって凶暴!
現代的なムスメ。

小股くぐりの又市も登場して二人に関わっているが
「怪」シリーズでお馴染みの田辺誠一とは違って、
男臭く現実味のある又市(香川照之)。

衣装は普通の坊主のいでたちで、
やっぱり「怪」でのスタイリッシュな又市ファッションは、
京極のビジュアル口出しだったのだと思われる。

お梅の肌露出多し。

汗まみれの肌の質感、べたつく血の感触が
画面からぬるぬると感じられるよう。
これを不快と思う向きもござろう。

終盤どんどん陰惨味に加速度がついてきて、
伊右衛門の隣人役・池内博之は体当たりの熱演だったが、
延々続く残酷描写にちょっと辟易したりもした。

椎名桔平、珍しい悪役。
六平直政 は「忠臣蔵―四谷怪談」に続き、
本作でも宅悦を演じていた。

斬ったり騙したりわめいたり恨んだりの浮世の惨劇も、
ラストで一気に昇華・・の演出は素晴らしかった。

最近は純愛の物語が流行っているようだけど、
これは狂熱の愛の物語。

ヘビーです。

さて伊右衛門はいつ嗤ったのでしょう・・・・?

脚本 筒井ともみ 蜷川幸男監督作品 美術 中澤克巳

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「猫と庄造と二人のをんな」

2005年06月24日 | ★人生色々な映画
堪能しました。

海に近い芦屋の通り。
りり~という猫を異常に可愛がる庄造(森繁久彌)を巡って
女たちが争う。原作は谷崎潤一郎。

この映画は
「猫と庄造と三人のをんな」というべき内容。

三人とは、
アプレなふくちゃん(香川京子)、
前妻品子(山田五十鈴)そしてもうひとりは庄造の母(浪花千栄子)。


香川京子が形のいい脚を勢いよく投げ出したり、庄造をヒステリックにいじめたりする。
清楚なイメージを気持ちよくぶち壊す体当たり演技。

めまぐるしく変わる女心の機微を面白おかしく、
時に恐ろしく演じているのは山田五十鈴。
猫なで声、甘え声、ヒステリー・・七色の声色を使い分ける。
ほんとにこの人は汚れ役をやるとすごい。

息子を女手ひとつで育て上げた母、
浪花千栄子とダメ息子森繁の絶妙な台詞の応酬は
そのまま一流の掛け合い漫才のようだ。

リリーの名演にも注目。

豊田四郎監督の腕で
名人の演技、昭和の芦屋の風景がピタと
谷崎の世界にもつながっている。

鯵のとれとれ~~を売るおじさん、
夏・・海・・雑貨屋。
砂埃が舞う道。自転車。雨の浜辺。
関西弁で構築される豊潤な世界。

ラストもまた素晴らしく余韻が残る。

森繁・豊田四郎で「痴人の愛」も見たかった。

他に山茶花究 横山エンタツ、都家かつ江 、三木のり平など

1956年  豊田四郎監督作品 脚色  八住利雄 美術 伊藤熹朔 
 撮影 三浦光雄 原作 谷崎潤一郎

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「怪」七人みさき

2005年06月22日 | ★妖しい映画
「怪」シリーズ映像化第一号。

冒頭から女性の半裸登場。
危険信号発令!
白昼見るのはマズそうだ。
もう一度夜中にトライしてみる。

4作中危険度ナンバーワン。
「妖しい度」も一番。

ある城下町で残酷な連続殺人事件が起きる。
七人死ぬと祟りが鎮まるという「七人みさき」伝説とは?

「みさき」というのは成仏していない死霊のこと。

限りなく怪しい「鬼畜ご落胤」登場!するに
いたって物語のボルテージはあがるばかり。
子供時代のトラウマか、はたまた忌まわしい怨念のせいか、
狂ったように残虐非道な行いを繰り返す殿様に
又市らの御行の鉄槌がふりおろされる。

夏八木勲、御行一味に加わって大見得きるも、
全然強そうでない小松政夫に斬られ、あえなく絶命!

スプラッター描写、成人向け描写が多く、
週末家族で見るなどはもってのほかです。
かなり気まずい注意報。

見るときは
ひとりでをおすすめします。

冒頭に京極夏彦本人がちらりと出ている。

殿様、北林弾正(四方堂亘)は
ダンジョン(地下牢)にて(シャレ)なりふりかまわぬ熱演。
目をそむけるも良し、じっと見入るも良し・・

脚本が京極本人ということで「怪」シリーズは
一貫したトーン。
頭からずぶっとはいり込んで見られる。

2000年 酒井信行監督  原作・企画・脚本:京極夏彦

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「怪」赤面ゑびす

2005年06月18日 | ★妖しい映画
船の難破により久しぶりに戻った娘は
「戎島、赤面ゑびす」と言って息絶える。

つかみから一気に摩訶不思議な異次元に突入!

強盗事件に巻き込まれた百介(佐野史郎)はやっとのことで
島に「歩きついて」、異様な光景を目の当たりにする。

その島こそ戎島。

あちこちに置かれているゑびす像。
ゑびすの顔が赤くなると島が滅びる!

奇妙な因習をかたくなに守る島民は
狂乱の領主・甲兵衛に盲従していた・・・

シリーズ最強キャラ・甲兵衛に本田博太郎。
伝説となった?「北京原人」、そして「ジャズ大名」に続く
本作での怪演は本田ファン必見!

異様な台詞廻しとテンションで
全開してます!

本田博太郎を見るだけでも一見の価値は充分あるが、
重い宿命を背負った徳次郎(火野正平)が
算盤をはじいているのを見ていたら、
トニー谷という人がいたことを思い出した。

「怪」シリーズ4作の中でこの作品がもっとも
濃くて不気味!(で、好き)と言うファンは多い。

出演:田辺誠一、佐野史郎、遠山景織子、火野正平、
本田博太郎、西崎 緑、上杉祥三、桜井センリ、笑福亭松之助

2000年 酒井信行監督  原作・企画・脚本:京極夏彦

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