邦画ブラボー

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「死の十字路」

2008年05月31日 | ★愛!の映画
会社社長の省吾(三國連太郎)には
美しい愛人(新珠三千代)がいる。
二人は深く愛し合っていた。
ある晩、密会の場所に踏み込んできた妻(山岡久乃)を
誤って殺してしまう。
思い余った挙句、
死体を毛布にくるみ
車のトランクに押し込んで走り出すが、
悪いことは重なるもので・・

山岡久乃の目を剥いた死に顔が強烈である。
今まで死に顔俳優といえば
西村晃が私の中のベストであったが・・
真に迫っていて思わず目を背けたくなる恐ろしさ。
毛布の隙間から真っ青な顔がのぞいて・・

ぎょえ~~~~!

乱歩原作といえども
グロはこの顔だけで、さほどエグイ場面は無い。
人のいいおっちゃん役が多い
大坂志郎が二役を演じており
三國を脅す小悪党ぶりが意外にはまっている。

恐怖、後悔、焦り、畏れ、絶望。
犯罪を犯してしまった人間の極限状況を三國連太郎が
リアルに表現。
後の「飢餓海峡」にも通じる見ごたえ抜群の演技だ。

恋人にすがる新珠三千代も、
雨にうたれる紫陽花のように儚く、淡く、最高に美しい。

「嵐を呼ぶ男」「女は夜化粧する」「黒蜥蜴」・・
井上梅次の映画って、どこか洒落た欧風の香りがする。

この映画は1956年製作。
三國が住んでいる洋館の様子だとか、
最新のファッションに身を包んだ新珠三千代のアパートのインテリアは
畳にカーテンに応接セット・・と言う具合に
当時の最新ハイカラ趣味がうかがえる。

不幸な恋人たちの究極の恋愛映画とも取れる
ラストが秀逸だ。

1956年 
監督 井上梅次
原作江戸川乱歩  
脚色 渡辺剣次
撮影 伊藤武夫
音楽 佐藤務
美術 中村公彦

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