邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「新宿泥棒日記」

2007年05月26日 | ★愛!の映画
花園神社でよく紅テント見たことを
思い出した。
客席に森下愛子がいて、
根津甚八が私のそばを駆け抜けたあの空気を。

新宿は特別な「気」がたちこめる街だ。

大島渚監督の映画は
わかりにくいから嫌だという人もいるがそんなに恐れることも無いと
私は思う。
ただ時々、「ハレ?」と思うけれども。

もちろんこの映画にはストーリーらしいものは無いし
冒頭で唐十郎がフ●ドシ一丁になって
お腹の刺青を見せたり、
新宿のデモ風景が挿入されたかと思うと
突然状況劇場の舞台が賑々しく
再現されたりするのでびっくりする奥方たちもいるかと思う。

横尾忠則が紀伊国屋書店で
ジュネの泥棒日記やらをごっそり万引きし、
引っ立てられた社長室にふんぞりかえっているのが
田辺茂一で、その後の台詞でドン引きさせようが
女装した四谷シモンが「ボタン雪じゃないのお!!」と叫んで
高橋鐵が直々に「眼をそむけちゃいけない」性講義をしても
怯えることはないのだ。

佐藤慶と渡辺文雄は酒を飲みながら、
堂々巡りの●ックス談義を繰り広げ、
戸浦六宏が時折カメラを見ながら行う、
長くしつこい濡れ場に手に汗を握った諸氏は
横尾が横山リエと延々と事を始める頃には
免疫が出来ていることだろう。
デモ隊の衝突映像は本物である。

まんま、新宿なのだ。

猥雑な60年代の新宿にタイムスリップしたよう。
性にこだわり続けた大島監督の
観念的な世界は
最近の「癒し」とかとは程遠く、
過剰なほどにエネルギッシュであるなあ。

監督 大島渚
助監督   小笠原清
脚本 田村孟 佐々木守 足立正生 大島渚
撮影 吉岡康弘 仙元誠三
美術   戸田重昌

*映画の中のイイおんな
横山リエ:モデルのように均整のとれたプロポーションを見せつけています。
こんな方と絡んだ横尾忠則はまさに役得!
色っぽい人ですが特にきらきら光る目が最高。
梶芽衣子主演「女囚さそり」でも印象的な役柄でしたねえ。

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「帝都幻談」:週刊ブックレビュー

2007年05月20日 | ★TV番組
日曜の朝、
のろのろと起きだしてコーヒーを一杯飲みながら
いつも見逃す
BS2の「週刊ブックレビュー」にチャンネルを合わせたら、
今日のゲストはなんと荒俣宏
ワイドショーやクイズ番組ではない番組で
荒俣先生が見れるとは嬉しい。

それも待望の新作「帝都幻談」について語っていた。
魔人「加藤」が江戸の街に出没。
江戸がゆれるほどの妖怪対戦が勃発する・。
平田篤胤や平賀源内など
歴史上の人物もふんだんに登場するそうな。

江戸時代には各町内にひとつの妖怪が存在したくらい、
人々の暮らしに妖怪は身近な存在だったそうだ。
妖怪にかこつけて
現代の日本のあり方に一石を投じる、広大な構想であるようだ。

本はもちろん読みたくなったが
荒俣宏の物書き人生に触れたくだりも面白かった。

小説を書く喜びとひきかえに代償も大きかったとかで
普通の生活や平凡な喜びとは無縁の人生を送ってしまっているそうだ。
膨大な資料を購入することによって周りの人がどーんとひいてしまう。
特に女性から「ひかれる」という言葉には爆笑。

もうひとつは「加藤」について。
加藤は決して悪い人間ではなく、
幸せに暮らしたかったけど出来なかった人間の悲しみが
怨念と化した、
象徴のような存在であると。加藤に同情したり同感したりして。

人生論もちょろっと。
結局人間は「短い人生の中で何をやったか」と言うことよりも
「幸福」「心の安定」が一番大事なんじゃないですかね、
8勝7敗でとんとんと思わなきゃ、と
荒俣宏のような人にそう言われるなんて。
「結局そうなのか~~」「そうなのかもね~~」

さあ本屋に走ろうっと~~

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「黒い画集 あるサラリーマンの証言」

2007年05月19日 | ★人生色々な映画
松本清張「黒い画集」から

監督は堀川弘通、
助監督に恩地日出夫、
カメラは「野良犬」「蜘蛛巣城」など黒澤映画でおなじみ中井朝一
脚本が橋本忍 

中堅どころの繊維会社課長石野(小林桂樹)は
持ち家で妻(中北千枝子)、子供二人と平和に暮らしていた。

会社が終わるとビアホールでちょっと一息入れて
パ××コ屋で50円を資本に暇つぶし。
「味の素」とたばこをしとめる。
その後向かった先は自宅ではなく、
新大久保の裏通りにある小さなアパートだった。

この男には部下の、
若い愛人(原知佐子)がいるんですねえ。

アパートの玄関のドアを開けるとすぐにちゃぶ台っていう環境、現実感がある。
別に貧しいっていうんじゃなく、OL一人暮らしとしては普通だったのだろうなあ。

冒頭のナレーションにこと細かく
主人公の月給、ボーナスの額が説明され、
庶民の生活レベルが浮かび上がる。
このように
一気に物語に引きずり込んでしまうのも橋本忍の妙技。

男は浴衣に着替えて女としばし
いちゃいちゃした後部屋を出る。と、そこで
ばったり家の近所の男に会い
思わず会釈してしまったことから
話はややこしい方向に進んでいく。

男は会社でも如才なく立ち回り、平凡ながら暮らしも安定している。
一見堅実そうな人物でも
ちょっと気がゆるむと人間というのは、隙が出来てしまうのだろうか。

その後ついた嘘によって
自らの首を絞めることになってしまう。
一瞬の判断が運命を左右する。

人間の
少しの心の弱さ、甘さ、隙を
巧みに事件にからめていくのは松本清張の名人芸だ。

小林桂樹はこういう役が本当に上手い。
映画館に行ったという
アリバイを主張するために
映画のプロットを必死に説明するシーンが秀逸だった。

行き届いた配役が嬉しい。
ちょとだけ出る担当刑事も西村晃だったりして、
あんな刑事だったら、とても
逃げられないだろうなと思わせる。

1960年 監督 堀川弘通
脚本 橋本忍
原作 松本清張
撮影 中井朝一
美術 村木忍

*映画の中のイイおんな:
原知佐子:スレンダーで硬質の美しさをたたえております。
フランスの女優さんのように
年を重ねても光っている人だと思っていたけど
この映画では若さいっぱい。
無邪気なOLをはじけるように演じていて新鮮だ。
実相寺昭雄監督の妻としても知られていますね。

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「怪奇大作戦・ゆきおんな」

2007年05月17日 | ★恐怖!な映画
那須高原に
ゆきおんなが出現。
なんでもこの話が「怪奇大作戦」の最終話となったらしい。

ミスター悪役:小松方正が
里心がついた宝石窃盗団の親玉という
ちょっと中途半端な役ですが、やっぱり悪はワル。
悲惨な末路が待っていた。

喫茶店のBGMが
いしだあゆみの「ブルーライト横浜」だったりと、
時代を感じさせる。

見所はなんといってもクライマックスに登場するゆきおんな!
雪原に大きな目玉出現!といえば小林正樹の
「怪談」を思い出すが、
やはり特撮の迫力がすごい。
髪がうねり、悪者を追い回す。

雪の中に
大きなお目目がぎらぎら光って、
怖~~い!


だが、最後のシメ、牧史郎の冷静な説明で、
ゆきおんなのナゾも科学的に究明され、
ちびっこはホッとひと安心するというわけだ。

私が見た「怪奇大作戦」は、(伝説の「狂鬼人間」も含め)
特撮技術を駆使した
怪奇なエピソードで我々を楽しませながらも
世間の底辺から這い上がろうとする人間や、
世の中からはじきだされた人々の苦しみや悲しみを滲ませていた。
時折はっとさせる台詞もあり
社会派ドラマの側面も持つ、欲張りな内容だったと思う。

またいつか再放送して欲しいぞ!

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「怪奇大作戦・氷の死刑台」

2007年05月15日 | ★恐怖!な映画
怪しげな実験室から抜け出した
怪物が人間を襲った!
それは鼻水も髪も凍りついた、恐ろしい冷凍人間だった!
科学者の暴走と、その犠牲者の運命を描く。

おじけづく部下に、
「バカ、実験に犠牲はつきものなんだ」
「犠牲者が出たからと言って、宇宙開発をやめるか?!」

なるほど。

感心していてどうするというご意見もあろうが、説得力がある台詞だ。
冷凍人間の造形と
堅実なバイプレイヤーとして昭和のテレビでおなじみ、
西沢利明がいい仕事してます。
えへへへ・・・最後に気が狂ってしまう演技も見ものである。

怪物は異形であるがゆえに
排除され、攻撃されてしまう。実に哀れだ。
冷凍人間は、
かつて住んでいた自宅付近をうろついているうちに
拳銃をばんばん撃ちこまれ、さらに
牧(岸田森)にサンビーム500という火炎銃をぶっぱなされ、火だるまになる。
彷徨っている魂を冥土に送ったにしては
強烈であった。

あのおじさん、可哀想すぎ~~~!

ラスト、
「科学者である前に人間であれ。」という所長(原保美)の言葉に
はっとした顔で振り向くのはわれらが牧史郎だった!

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