邦画ブラボー

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「太地喜和子」:邦画を彩った女優たち

2011年11月25日 | ★TV番組

思わず身を乗り出して

かたずを呑んで見てしまう演技だったそうだ。

「俳優座養成所」時代のひとり芝居を見た

先生が言っておられました。

人を一瞬のうちに惹きつけてしまう、

強い求心力のある芝居・・をする女優さんだったそうだ。

稀有の才能を持ちながら

無残にも事故死してしまった天才女優。

まだ50前の美しい盛りに亡くなり、

その類まれな才能とあっけない最後で伝説になった人だ。

「白い巨塔」のゴロ~ちゃんの愛人も良かったですよね♪

彼女にとって生きていることが演じていることだった。

 

冒頭の三國連太郎との恋話はショックだった。

名優同士の恋は

ライバルのような関係でもあったのだ。

しかも名優三国連太郎が、太地の才能を見抜き

コンプレックスを抱いたなんて

なんともすごい話である!!

太地喜和子は俳優としての三国を愛したので

一緒にいて、普通の男としての三国を見るうち

興味を失ってしまったのだろう。

 

聖女のような天女のような女。

自分が無くなってしまうほど役になりきってしまう。

最後の作品「唐人お吉」になりきりすぎていたという

話も気になった。

今生きていたらどんな芝居を見せてくれていたのだろう???

 

バイオリニストの佐藤さん、久しぶりに見たけど

彼女もシャーマンっぽかったですね(爆)

しかし、

「飢餓海峡」を

 三國連太郎と太地喜和子で見たかったな~~

ものすごいことになったでしょうね!!!

考えただけで鳥肌ものだ。そしてそれはもちろん、内田吐夢演出でお願いしたいです!

●関連記事 「飢餓海峡」感想


「若尾文子」:邦画を彩った女優たち

2011年11月24日 | ★TV番組

大女優

若尾文子の軌跡をインタビューをはさんで

構成。

各コーナーを

インタビューの内容を抜粋した

「若尾文子は□□である!」という言葉で締めくくる

モダンな切り口 で見せていた。

 

演技開眼の代表作として、

増村保造監督との

「妻は告白する」がやはりクローズアップされていた。

若い愛人に捨てられそうになった

人妻がずぶぬれで会社に乗り込むシーンは何度見ても鬼気迫る迫力で

かつ色っぽいが、

なんと映画はこのシーンから撮影されたとか。

プロですよねえ。

 

さらに溝口監督

「祇園囃子」の愛くるしい姿は天使のよう。

撮影当時は名前を覚えてもらってなくて

監督からは

「子供、こども」と呼ばれていたそうだ(笑)

 

「私が出ているものをごらんになって皆さんが何か感じてくださったなら

私の存在意義があるというもの・・だって 家族もいないですしね、それしかないじゃありませんか」

「自分がやりたいものが必ずしも『合っている、いいものになる』とは限らない」

 

淡々と飾り気無く語る様子から

女優若尾文子の人となりが浮かび上がった。

 

舞台の稽古に徒歩で向かう姿を写した映像があったけど

路上でいきなり

ショールをさらりと肩にかけた和服姿の若尾文子に会ってしまったら

心臓がバクバク言いそうだ!!

 今後の

更なるご活躍をお祈り申し上げております!


「大原麗子」:邦画を彩った女優たち

2011年11月23日 | ★TV番組

「居酒屋兆治」の薄幸のヒロイン

「さよ」になぞらえ

孤独に生きた女優「大原麗子」を

クローズアップさせていた。

華やかなイメージとは裏腹に

あまりにも寂しい晩年、

複雑な家庭環境を知って

スクリーンの中の大原麗子が

よりいっそう美しく思えた。

 

俳優の「演技」について語っていた

石坂浩二の話も興味深かったです。さすがへいちゃんですね。

 

大原麗子と石坂浩二の共演は

「おはん」が印象的だったけど

その撮影の裏に役作りについて大変な苦労があったということも

初めて知った。

上手い女優さんだと思っていたけど

ご本人は演技についても悩んでいたらしい。

「孤独」という言葉が散りばめられた

哀しい番組でした。

 

「居酒屋兆治」は未見だけど、

今見たら泣いてしまいそうだな~~~


「悪人」

2011年11月07日 | ★愛!の映画

閉塞感いっぱいの寂れた地方都市で

孤独な男女が

出会ったのは「出会いサイト」。

出会いサイトっていう言葉自体が

うら悲しいです。

登場人物一人ひとりの内面を

抑えた演出で細密に表現していて

見ごたえがあった。

 

国道沿いの紳士服店に勤める

深津絵里が接客しているシーン。

客の足元にひざまづき採寸していると

裸足が見える。何か感じる深津・・

その後、それまで映りこんでいなかった客の妻が出てくるシーンも上手かった。

 

時々

どきっとするような台詞も含まれていた。

妻夫木くんに連れ込まれたホテルで深津絵里が言う

「女だってそういう気持ちになるときがあるとよ。」

赤裸々な女性目線の性欲表現でどきりとしましたね。

 

さらに深津が無邪気に

「いいね。海のそばに住んでいるとでしょう?」と言うと

暗い目の妻夫木君が言うには

「目の前に海があると、そこから何処へもいけないんだって思う。」

 

脱出不可能のアルカトラスの囚人のような言葉で

びっくりした~~~~!

ともかく主人公の祐一はそんな男なんですね。

 

娘を殺された柄本明の悲しみもよく伝わってきた。

怒りのこぶしは振り上げるけど、

打ち下ろすことは出来ない男であるところが悲しさに追い討ち。

妻夫木くんを育てたばあちゃん(樹木希林)の呆然とした

表情も悲しかったですね。

年取った弱いばあちゃんから金を騙し取るものもいたりして。

 

悲しい 暗い 悲しい 映画でした。

ずっと雨降っていたし。

雨の演出、よくありますが

 

ざあざあざあざあ・・

 

滅入ります。

 

久石譲の叙情的な調べが

さらに傷に塩をすり込むようにつらかったです。

 

「誰が本当の悪人なのだろうか?」

というキャッチコピーがありましたが

本当の悪人なんて誰が判別出来るのでしょうか?

 

人間の中には

常に善と悪が存在しており

そのせめぎあいの中で他者と折り合いをつけながら

危うく生きている・・のではないでしょうか?

さらに

他者を攻撃することによって

かろうじて自分を保つ弱い存在であり

その攻撃は卑怯にも常に弱いものへと向かっていく。

 

殺された女の子も人を小馬鹿にするような嫌な性格でしたが

それを上回るような冷酷な男(生田斗真君ナイス良かったです)に夜中の道路に蹴り出され

懲りたかと思いきや

助けに来た妻夫木くんを見下し・・という負の連鎖で、たまったものじゃないです。

 

でもそんな娘も柄本さんにはかけがえのない唯一無二の存在だったりします。

妻夫木くんも別れた生母から金をせびる面があるかと思えば

ばあちゃんにスカーフを買ってあげたりする優しさも持った青年です。

 

深津絵里が

自分に言い聞かせるように言っていた

最後の言葉は

色んな解釈があると思いますが

私は

自分にとってはかけがえのない善人でも

他人にとってはとんでもない悪人であることを

遺体発見現場で手を合わせる柄本明を見て

他者の傷みを見て

改めて(初めて?)自覚した言葉ではなかったのかなと思います。

 

何か現代の若者の閉塞感と心の貧しさを見せ付けられた作品でした。 滅入った~~~