邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「五瓣の椿」

2004年08月30日 | ★愛!の映画
子供の頃に読んだ名作を大人になって読み返すことはよくありますが、
映画の場合はそれきり・・になってしまうことが多い。

野村芳太郎監督作品の「五瓣の椿」はぜひもう一度見返してみたい映画です。

なぜこのような大人っぽい映画を子供が見たのでしょうか・・・

そんなことどうでもいいですね。

前半の、燃え盛る火の中で助けを求めて叫ぶ母(左幸子)と、
炎を見つめる、凄艶な美しさの岩下との対比が強烈。

以後、テレビなどで火事の映像を見るとフラッシュバックのように
そのシーンが頭に浮かぶ。

当時の岩下志麻の類い稀な美貌と、ショッキングで哀しい物語の故に、
いつまでも忘れられない映画となりました。

先ごろNHKでドラマ化されたと聞いて勇んで見たのですが、
「ちゅらさん」の童顔の女優さんが主人公の「おしの」を演じていて
映画とはまったくの「別物」、の感でした。
子供時代の強い思い入れはそう簡単には崩れないのかもしれません。

あのドラマを見た方はぜひ機会があったら
この岩下版もご覧になってみてください。。

他の出演者は 加藤剛、西村晃、岡田英次、田村高広、小沢昭一、左幸子(妖艶)、
伊藤雄之助など。

辛いストーリーの中、同心役の加藤の存在が清清しく、
ほっとさせられた記憶がある。

原作は「深川安楽亭」(いのちぼうにふろう物語)の山本周五郎です。

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「白夜の妖女」

2004年08月25日 | ★恐怖!な映画
高野山の高僧が懺悔話をする・・「わしは若い頃美しい女に迷うたことがある・・・」
泉鏡花の「高野聖」を題材にしたなんとも妖しい物語です。

若い僧が山中で道に迷う。
ぽつんと一軒灯りがともる民家を訪ねると
そこにはきらびやかな着物をまとった、美しい女が住んでいた。
ところがその女は、言い寄る旅人を牛馬に変える、
恐ろしい妖怪だったのだった・・・
ヒヒ~ン!

女には夫があるが、様子が普通ではない。
どうやら白痴のようである。
犠牲的精神で夫につくす女・・しかしその裏には秘密が・・

美しい女と、妻にへばりつく子供のような夫・・の異様なコントラスト。
家畜小屋につながれた哀しげな表情?の
尋常ではないシチュエーションに期待が高まります。
・・・そして僧の運命は・・!

この映画の白眉は
女の白痴の亭主が大声で歌う「木曾節」の幻惑的な
響きです。

♪木曽のナー 中乗りさん
木曽の御岳さんは ナンジャラホーイ
夏でも寒い ヨイヨイヨイ
  ヨイヨイヨイノ ヨイヨイヨ~イ・・・♪

映画を見終わる頃には、
この歌詞が哀しく耳に響いて離れなくなります。


女は月丘夢路
高僧に滝沢修
青年時の僧には葉山良二。昭和32年度作品。

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「祇園囃子」

2004年08月24日 | ★人生色々な映画
「小津が愛した女優たち」という番組の中で
若尾文子は、「監督の求めている役になりきることだけを
いつも考えているんです」と言っていた。
「何かの役を演じている時の方が、自分でいるより楽なんです・・」とも。

溝口健二監督作品・「祇園囃子」では、若尾さんはまだ初々しい10代で、
あの「刺青」の主人公と同じ人とは思えません。
様々な女性を演じ分け、常人の何倍もの人生を生きているようで羨ましい。

今にも崩れ落ちんばかりに頼りなげな木暮実千代もいい。
口元のほくろ、美しい横顔。
大輪の花のような華やかさがある女優さんでした。
台詞まわしが艶っぽすぎてどきりとしてしまいます。

やり手女将の浪花千栄子(適任・適役)のプレッシャーや、
好色なお客の嫌がらせに負けず、
かばいあうように生きる二人の美しくけなげな姿に泣けました。

監督は溝口健二、そして撮影はあの宮川一夫という、
黄金コンビが作り上げた美しい珠のような作品です。

目を見張ったシーンがひとつ。

浪花千栄子さんが洋服姿(あっぱっぱ・古いですね~)になるシーンが
一箇所あるんですが、
とても珍しい歩き方なんですね。

足先がカタカナの「ハ」の字、というよりも
股関節からすでに着物仕様になっているのです!
先日青山の路地裏で見たおばあちゃんがこんな歩き方だった。

1953年 溝口健二監督作品 川口松太郎原作

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「サンダ対ガイラ」

2004年08月22日 | ★恐怖!な映画
いたいけな小学生達を金縛りにした、
フランケンシュタインの怪獣-サンダ対ガイラ」!

フランケンシュタインの細胞が分裂して生まれたサンダ(いいもの)と、
ガイラ(わるもの・要するに2卵生双生児か?)が、
骨肉相食む戦いを展開します!
その兄弟対決が迫力あるのなんのって・・

「やめろ!もうよせ!」(優しい兄のサンダ)
「うるせえ!」(獰猛な弟のガイラ)、
止める兄を振り払い、悪道の限りをつくすガイラ。

「俺にこれ以上ガタガタ言いやがると、兄貴といえども容赦しねえぜ!」
「馬鹿野郎!何度言ったらわかるんだ。腐りきったお前の根性を叩き直してやる!
それでも止めないなら、この兄の手でお前の息の根を止めるまでだ!」
「なんだとお!」バリッ!ドサッ!ベキベキベキッ!
(筆者勝手な脚本)

かくして、世にもおぞましい怪獣兄弟の戦いが始まるのであった・・・
もちろん、映画では二人は喋りません怪獣ですから・・・

暗い海にひそむ海の怪獣ガイラ・・・冒頭から異様な緊張感が漂っています。
大ダコもたじたじの迫力には誰もが息をのむでしょう。
そして、あまりの唐突で乱暴な展開に、
これは普通の怪獣映画ではないなと不安になるのです。

ガイラの残忍さは予想をはるかに上回る。

逃げ惑う人々をむしゃむしゃと食べてしまう恐ろしい姿に
愉快な怪獣映画を見に来たはずの純真な子供達は
何人腰を抜かしたことでしょう。

ガイラは食人鬼だったのだ!

それまでの怪獣たちに比べて動作が速いのも画期的でした。
でかいガタイで飛ぶように走る姿は、見るものの恐怖をさらに募らせたのです。

東宝怪獣映画黄金期に作られた、
「キングコング対ゴジラ」「モスラ対ゴジラ」「怪獣大戦争」
「地球最大の決戦」など、華のある陽気なシリーズとは一線を画す、
カルトムービーだ。

東宝怪獣映画には他にも、
「フランケンシュタイン対地底怪獣」という、
フランケンシュタインの怪物そのものが出演する珍作もあるが、
衝撃度は比べようがありません。
怪獣映画に興味がない方にも、ぜひこの「サンダ対ガイラ」は見て欲しい!
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「切腹」

2004年08月20日 | ★ぐっとくる時代劇
侍ブームと言われていますが、
これを見ずして・・・!と言いたい老婆心。
「いのちぼうにふろう物語」、
「怪談」「上意討ち-拝領妻始末」などの名作を手がけた、
小林正樹監督の最高傑作(と、私は思う)です。

橋本忍の脚本が
最初から最後まで見るものを引っ張り、息をつかせない。

映画を通して貫かれているのは
仲代達矢扮するひとりの侍の激しい「怒り」だ。
その憤怒に圧倒されて、私たちは物語に引きずり込まれていくのです。

幾重にも重なった回想シーンの見事さよ。
美しい映像にも圧倒される。

これを見た後、しばらく放心してしまった。
見るのにも体力が要るかも。が、絶対後悔はしない映画。
ビデオ屋さんの隅にあったら、ぜひ!

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