邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「自来也 忍術三妖傳」

2005年05月31日 | ★ぐっとくる時代劇
牧野省三監督、尾上松之助主演で大当たりをとった忍術映画を
マキノ正博監督がリメイク。

かなり古いです。

城を焼き討ちされ、山中で穴の中に突き落とされた若君が
妖術使いに拾われて見事復讐を遂げる。

痛快娯楽特撮白黒映画。

CG無くても充分幻惑的な忍術を楽しめた!
珍しい女侍のヘアスタイルにも感心した。

片岡千恵蔵の
敵を前にしての朗々とした口上は呪文のように長い。
うかつにうっとり聞き惚れていたら
その後に来る凄まじい恫喝にひっくり返りそうになった!

台詞まわしは晩年と変わらないが、この頃は声がすこし高く
先日の「国定忠治」のワレ鐘のような声とはまた違った趣がある。
芸能界ナンバーワンの恫喝力。

あれ?そこにいるのは志村喬!

終始テンションが高い筋運びだが、
後半、口から煙をばくばく吹き出す大蝦蟇(がま)が現れるにいたって
興奮も最高潮!
大ガマの上に乗り敵を威嚇する自来也。

ラストにうろたえる敵を前にしてダメ押しの声が響き渡る。
これはもう絶叫!

「恐ろしくば泣け!わめけ、叫べ!吠えろ!
わは、わは、わはははははあ~!」


ドイツのフリッツ・ラングの映画を思い出した。
「狸御殿」シリーズも思い出した。

1937年 マキノ正博監督作品 〔原作・脚本〕比佐芳武

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「国定忠治」

2005年05月27日 | ★ぐっとくる時代劇
桃屋の江戸むらさきのCMでもおなじみだった
国定忠治は実在の人物だった。

「赤城の山も今宵限り・・可愛い子分のてめえたちとも、別れ別れになる門出だ・・」
よっ!待ってましたっ!
CMではそこでなぜか江戸むらさきの登場・・なんだけど、
この映画はのり平さんではなく、
片岡千恵蔵がこのせりふをたっぷりときかせてくれる。

時は江戸末期。
貧しい百姓たちが飢饉によって苦しむ暗い世相の元、
役人は私服を肥やし悪政三昧。
そこへ弱いものの味方国定忠治が現れ、悪代官を斬って赤城の山にこもり
あの台詞・・

現水戸黄門様、里見浩太郎が可愛い子分(板割の浅太郎・美形)を演じている。
その叔父、御室の勘助に月形龍之介。

史実ではどうあれ、国定忠治は昔から講談、芝居、、浪曲、映画の中に
弱いものを助ける義賊として描かれている。
人情深く、子分思いで、悪いやつらは容赦しない。

歌舞伎の見得に近いオーバーなきめ台詞がびしりと決まるのは
千恵蔵の貫禄によるものだろう。
独特の抑揚、独特の息継ぎによる台詞回しは
聞くものの気分をイヤというほど高揚させてくれる。
(立ち回りにかぶさるドンドコ太鼓も盛り上がりに拍車をかける)

先日進藤英太郎の作品が見たいと書いていたらここで見られた!
忠治に恫喝されびびる腹黒い親分(山形屋)役。
どてらが似合っておられました。
進藤の女房には杉村春子。威勢のいい啖呵が心地よい。
堺俊二(堺正章の父)がちょろちょろ現れ、きっちり笑わせてくれる。

「俺にはしょうげえ(生涯)おめえという、強い味方があったのだ!」

愛刀・小松五郎義兼をかかげて言うこの名台詞には背筋がゾクゾクした。
幼いころに行っていた映画館では
いい場面に差し掛かると、拍手が沸き起こっていた。
映画が大衆の娯楽だった時代。娯楽作がたくさん作られた時代。

今、ひとりで見ながら拍手しています。

ふと、「たそがれ清兵衛」や「隠し剣鬼の爪」が公開された時、
客席の年齢層がとても高かったことを思い出した。
「隠し剣・・」の時など、たぶん私が最年少!だった!

最近映画館に各種割引制度が取り入れられるようになったのはすごく嬉しいけど、
幅広い年代のニーズに答える映画をもっともっと製作、上映してほしいものだ。

1958年 小沢茂弘監督作品 東映

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「娘の冒険」

2005年05月26日 | ★痛快!な映画
川口浩探検隊がブーム再燃らしいけど、
この方はれっきとした二枚目俳優さんだった。

のちに実生活でも結婚することになる
野添ひとみのボーイフレンド役として登場。

「ボーイフレンド」って最近聞かなくなった言葉ですね。
でもこの映画には良く似合う。

上流家庭の女の子・京子(野添)が
やもめの父親(上原謙)の恋を成就させるために奮闘する、コメディタッチの映画。
大映オールスターキャスト。

登場人物のファッションはもとより、ユーモアの表現、
カメラアングル、インテリアのセットにいたるまでアメリカ映画風である。
野添ひとみは立ち居振る舞いまでヘップバーンのよう。

上原謙のバタ臭い容貌はそんな雰囲気にぴったり。
落ち葉が舞う中犬を連れて狩りをする姿は、西洋映画から出張してきた人のようである。
そんな山の中になぜか一分の隙もなく和服を着こなした京マチ子が登場・・
・・というように巧みに和風も入っているところが大映娯楽映画。

洋食ばかりの中に和定食があるとほっとするように
芸者の山本富士子、中村鴈冶郎(粋)、浪花千栄子などの顔が見えると嬉しい。

他にも若尾文子、船越英二、時折英語を喋る京子の祖母(北林谷栄)、
品川隆二、浦辺粂子、
上原の上司十朱久雄(洒脱)などがにぎやかに立ちまわる。

この頃の大映映画には他にも楽しい青春映画がある。
どこかで何本か集めて上映してくれるといいなあ。BOX化も希望!

山本富士子の踊りや劇中劇なども挿入され、いたれりつくせり。

「黒い十人の女」「小早川家の秋」の下河原友雄による美術は文句なしに素晴らしい。

1958年 島耕二監督作品 脚色 長谷川公之  大映

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「近藤勇池田屋騒動」

2005年05月24日 | ★ぐっとくる時代劇
BS2で放送されていた。

古いため、放送ぎりぎりのフィルムの状態。
ぶつぶつとノイズが入ることしきり。
だが、このような状態でも放送してくれてありがたい。

芹沢鴨(進藤英太郎)の粛清と池田屋事件が大きな柱。

時折ユーモラスな場面も入れるなど、肩の凝らないつくり。
近藤勇(嵐寛寿郎)と泣き虫の沖田総司(徳大寺伸)の絆、
沖田と町娘(左幸子)のほのかな恋のエピソードなども描かれている。

芹沢が徹底した悪役になっている。
色、酒、金に汚く、新撰組の名を汚し暴走する。
芹沢を斬るべきか否か、近藤は悩む。
脚本は「非情都市」、「赤ひげ」などの井出雅人

進藤英太郎は調べてみたら300本を越える映画に出演していた。
悪役もうまいが、クレージーキャッツの映画など喜劇にも
数多く出演していて大変存在感があった。久しぶりにお顔を見て
俄然、他の出演作も見たくなった。

美しい鴨川べりの風景など、ロケを多用して幕末の京都の雰囲気を再現。

ハイライトはなんといっても後半の池田屋襲撃だ。
新選組方はほとんどアラカンを中心にカメラが回っている。
構えるだけで「絶対デキル」と思わせる迫力、隙のなさはさすが。
乗り込む前、隊員たちを前に
「女子供には絶対に手を出さぬように」と力強く檄をとばしているのにもかかわらず
ついた途端に、隊員のひとりが芸者(花井蘭子 )をばっさり斬っているのにはあきれた。

池田屋の使用人や、あわてふためく侍たちの様子がリアル。

池田屋騒動は色々な作品で描かれているが
特筆すべきは屋根の上と、鴨川へざぶざぶ入っての斬りあい。
どちらも臨場感ある演出だった!

この場面ではいつも新選組よりも攘夷派の斬られる方に目がいってしまう。
アラカンがチョイと刀を振るたび、もんどりうって二階から落ち、
吹っ飛び、転がるさまは芸術的。
階段落ちは何度もあったが
組み合ったまま二人で階段を落ちるシーンがあり、驚いた。

どこか求道者を思わせるような
生真面目な近藤勇は、アラカンだからこその味わいだろう。

1953年 池田菁穂監督作品   脚本 井手雅人  新東宝

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「非情都市」

2005年05月22日 | ★ハードボイルドな映画
ハードボイルド:(固ゆでの意から転じて、冷酷な、非情なの意)
・・第一次大戦後に、アメリカ文学に登場した新しい写実主義の手法。
簡潔な文体で現実をスピーディーに描くのが特徴。
また、
非情なこと。人情や感傷に動かされないで、
さめていること。また、そのさま。(大辞林)

これこそは日本のハードボイルド。

東都新聞社会部の三宅(三橋達也)は蛇のように執念深く、
エネルギッシュに事件を追う辣腕の「ブンヤ」だ。

その度胸のよさ、したたかさはやくざの幹部も舌を巻くほど。
自分が書いた記事が元で人が死のうが、
強引な取材を上司(稲葉義男 、東野英治郎)に非難されようが
いっこうにおかまいなし。
恋人(ものすごく綺麗な司葉子)をスパイに使うことすらもためらわない。

「俺には誰だろうがニュースにしか見えないのさ」

そして財界の大物を巻き込む大スキャンダルを追ううち、
イチかバチかの駆け引きに乗る・・・

逢沢譲のカメラが乾いた都会を映し出す。
新聞社の喧騒、ハイウェイを突っ走る車、大銀行のビルディング。
どきどきするような疾走感がある。

脚本は黒澤映画でもおなじみの井手雅人だ。
たたみかけるような台詞の応酬に引きずり込まれる。

ダーティな三宅と、三宅を取り巻く人物たちも魅力的。
司葉子の美貌には今更ながら驚くが、
クールなやくざ平田昭彦の凄み、中丸忠雄の貫禄も見ものだ。

いきつけの飲み屋のおやじ、上田吉二郎のたたずまい も
「映画の中のイイ味出してる飲み屋の親爺ベスト5」(勝手に作りました)に入ると思う。

「子供はひっこんでろ!」三宅がいうせりふにもあるように、
これは極上の大人の映画である。(ただし辛口)

昔、「事件記者」という大人気TVドラマがあったことも思い出した。


出演:三橋達也 司葉子 稲葉義男 東野英治郎 北沢彪 佐々木孝丸 平田昭彦
   中丸忠雄 松下猛夫 上田吉二郎

1960年 鈴木英夫 監督作品 脚本  井手雅人 原作 三田和夫  撮影 逢沢譲

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