木下恵介監督の
楽しくてちょっと切ない恋愛コメディの傑作。
BSプレミアムの
「山田洋次が選ぶ日本映画100本」で放送されました。
1949年公開。
脚本は新藤兼人。
終戦直後の東京、自動車修理業で財を成した
佐野周二は没落華族のお嬢様、原節子とお見合いをすることになった。
佐野はもちろん一目惚れして、とんとん拍子に事は運ぶが
うまく行き過ぎる話の裏はやはり深い事情があった。
教養も品も無いが
お金を稼ぐことは得意な
佐野周二のキャラクターが最高。少々強引だけど
気が良く弟(佐田啓二)の面倒見も良い。
浮き浮き気分の佐野が
洒落たファッションに身を包んだ佐田啓二をバイクの後ろに乗せ
神宮外苑あたり(たぶん)を疾走するシーンが最高。
「兄貴、何処へ行くの?」
(佐野、手をハンドルから離し、ヒラヒラさせながら)
「天国さ!♪」
(佐田啓二慌ててしがみつく)
原節子は齢 29歳!あの「東京物語」よりも若く、
きらきらと光る瞳は宝石のようであります。
元華族のお嬢様役といえば吉村公三郎監督の
「安城家の舞踏会」を思い出しますね。
これもやっぱり新藤兼人脚本でした。
お嬢様言葉を
こんなにもさらりと自然にこなすことが出来るのは、
彼女と、「美徳のよろめき」(こちらもやっぱり新藤脚本)の
月丘夢路が双璧だと思います。
そして母親役にはあの
東山千栄子ざましょう!!
これは鉄板、押しも押されもせぬ無敵の元華族の配役です!
並なみならぬ
ユーモアセンスが散りばめられていて
原節子の祖母の言動とか
佐野周二の表情など思わず笑ってしまう箇所多数。
かと思うとほろりとさせられたり・・楽しめます。
見事なカメラアングル、テンポのいい洒落た演出は
ほんとに驚嘆の一言です。
佐野の行きつけのバーのマダムには
黒澤明の「八月の狂詩曲」で主役を演じた村瀬幸子。
佐野を励ましながらも
「私がもう少し若けりゃ、ほっときゃしないよ」などと言ってますが
そのわりにはそんなに色っぽくありません(爆)
身分違いの恋を周りの人々が暖かく見守り応援する様子は
あのヒュー・グラント、ジュリア・ロバーツの
「ノッティングヒルの恋人」みたいで
やっぱり木下監督って天才!
時代の先を行っていたんだなと再確認しました。
もちろん音楽は木下忠司。
灰田勝彦の歌声が高らかに「人生の善きもの」を歌い上げます。
後味も爽やかで希望に満ちている。
山田洋次ならずとも日本の恋愛映画のトップ10には入れたい映画です。
これも見てね♪おすすめ♪
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