邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「怪談:耳無し芳一」(第11話)

2008年09月22日 | ★恐怖!な映画
キーワード
平家物語
琵琶法師
般若心経
安徳天皇

「日本怪談劇場」は
古典を独自の視点でアレンジしたものが多いが
このお話もまた、これまでの作品とは一味変わっている。

主人公の
芳一はイケメン
しかも由井正雪みたいな総髪(オールバックが伸びたみたいな髪形)だったという設定!

そのため和尚さんが
「髪で耳が隠れているため、お経を書き忘れる」という話に真実味が加えられている。
なるほど、そう言われてみれば不自然でないが
ビジュアル的には坊主のほうが
お経を書かれたすっ裸の姿が異様、壮観である。
この姿こそがハイライトシーンなのだが
ここではそこまでやってません。

琵琶を抱えてさすらう芳一は
美男であったために
平家の亡霊に恋慕され、女の導きで
立派なお屋敷に毎晩通うようになる。

坂田藤十郎が演じているので
現代のイイ男基準からはちょっとはずれているけど
人形浄瑠璃の人形みたいなお顔が母性本能をくすぐったのでしょうか??

ライバルの地元娘と亡霊の恋の鞘当合戦も挿入されているが
別段怖くも無いし恐ろしくも無い。
やはりスタンダードが一番と思う。
浄瑠璃人形が演じる壇ノ浦のくだりは情緒豊かで幻想的。
すすり泣く、集団の亡霊」の気味の悪さ
芳一を呼びにくる、鎧姿の武者は「怪談」の
丹波哲郎にはかなわないけど恐ろしげなメイクで
怖い。

耳をむしりとられてしまう残酷な話だけど、
「耳ですんでよかった」とも言える。

この有名な話を
今回私は芳一の身になって「目をつぶって」聞いたところ
大変臨場感があり不気味に感じました。
新しい鑑賞法としてお勧めいたします。

教訓:亡霊と恋仲になると、確実にひっぱられる
      念には念をいれること! (最終点検)  
   
使える台詞:
「あなた様とわたくしとは
幽明境を異にするものでございます」:亡霊の言葉

幽明とは死後の世界と、現在の世界。
冥土(めいど)と現世に隔たっているという意味

弔辞や追悼文などに多く用いられるが
何かのダメ押しの言葉として使ってみたい。

ブログランキングへ応援オネガイシマス

「笠森お仙幽霊茶屋」(第10話)

2008年09月19日 | ★恐怖!な映画
キーワード

水茶屋
笠森稲荷
美人姉妹

水茶屋で働いている器量自慢の娘が幽霊と一緒に
殺された姉の仇を討つ話。

見所といったらう~ん
朝丘雪路の「白塗りお化け」でしょうか?

いえ、そういうお化けが出るので
朝丘雪路が白塗りお化けという意味ではありませんので、
誤解のないよう。(大汗)
お化けといっても
グロいメーク一切無しのキレイキレイ幽霊で
全然怖くありません。

笠森お仙さんは実在の人物だそうだ。
美人画のモデルになったことで江戸中の評判になった。
今でいうと「ウエイトレス」「看板娘」「アイドル」というところだろうか。
「水茶屋」は”カフェ”?ちょっと違うか。

雪路さまは当時35歳。
有名だけど、意外にテレビや映画では脇役出演が多いので
主役をやっているのを見たのはこれが初めて。
町娘をやるにはだいぶトウがたっているが
そつの無い演技で不自然さは無し。立ち居振る舞いも美しい。

先日、岩井半四郎の長女、岩井友見さんがテレビに出ておられたのを見て
「日本舞踊関係の方は和服を着ての身のこなしが綺麗だなあ」
と思ったばかり。日舞といえば、きりりとした美貌だった花ノ本寿
刺身のツマ程度のちょい役で出ている。
この人、武智鉄二や実相寺昭雄映画に出ていたんですよねえ。

雪路メイクは
和装のメイクの常識をひっくり返す「囲み目」。
・・っていうか、舞台化粧のテイストだ。
真っ白な顔にベビーピンクの口紅。
彼女にしか似合わない化粧である。

教訓:瓜二つといえども姉と妹は別人なのです念のため

使える台詞
「さ、商売、商売!」

話の最後、笠森稲荷にお参りしたお仙が言う言葉。

幽霊も飛び入り参加する血生臭い事件の後、
明るい表情でこのような台詞をサバサバと言ってのける
アメリカ娘のようなたくましさを見習いたい!
色んなシチュエーションに応用が利きそうだ。

ブログランキングへ応援オネガイシマス



怪談:宵宮雨(第9話)

2008年09月18日 | ★恐怖!な映画
キーワード

女犯 (にょぼん )
銭金

今の中村勘三郎の父親
17代目勘三郎の細やかな芸に
伊藤雄之助が絶妙に絡む世話物怪談。

貧乏長屋の風情もたっぷり堪能できます。
二人の江戸っ子弁が最高!

女犯の罪でさらし者になった生臭坊主には
謎の女幽霊が取り付いていた。

甥の家に転がり込むが
100両の金を埋めてあることを明かしたために
金の取り合いになり・・

これって
演出家は果たしてどれだけ口を出せたのだろうか?
それほど
勘三郎が縦横無尽、緩急自在の芝居を見せていて楽しい。
名人落語を聴いているみたいだ。
これに伊藤雄之助の絡みが入るんだから!

二人のとり合わせは
なまずとどじょうみたいで、どっちがどっちと言わないが
強烈なクセがあってやみつきになりそうだ。

加えて
お化けになった勘三郎の特殊メイク
怪談メイクの傑作5本の指に入るんじゃ?と
思うくらいグロテスクで
夜には絶対見たくない迫力の顔である。
伊藤雄之助がお化けになったらどうしようと
怯えていたが、
それは無かったのでほっと安心。

大金が間に入ると
甥も叔父も無くなるのかねえ。

教訓:金は自分で管理しよう
    銭金は他人

使える台詞
「おめえを疑るってわけじゃねえんだけどよ、
銭金は他人だからよお、」
勘三郎が
金をあらためる時に言う言葉。

たとえ親族であっても金のことはシビアに考えなければならない
なるほどね~~と思わせる台詞だ。

ブログランキングへ応援オネガイシマス

「怪談:首斬り浅右エ門」(第八話)

2008年09月09日 | ★恐怖!な映画
キーワード

据えもの斬り
刑場
一生奉公

ひとおつ
首斬り役人は
いつでも一刀で首を斬り落とさねばならぬ

ふたあつ
首斬り役人は
女に惚れてはならぬ

みっつ
首斬り役人は
迷いがあってはならぬ

すべて私が勝手に書いたものですが
浅右エ門はこれらの掟を破ってしまったのです。

連夜悪夢を見るなどして
ウツ状態、
ヤキが回っていた浅右衛門は
女に片思いして益々ドツボにはまっていった・・
女は長谷川一夫の娘、長谷川稀世。

あまりにも悲惨
あまりにも過酷
あまりにも傷ましい話ですわ。

栗塚旭といえば「土方歳三」の当たり役があります。
確かにカッコ良かったですよね~~
でもこの哀愁を帯びた
浅右エ門も素晴らしく
怪談というよりは悲劇として見た。

栗塚さんの魅力としては
相手をまっすぐに見据える大きな目が挙げられますが
真一文字に結ばれた凛々しい唇も素晴らしい!
職務には冷静沈着でいながら
恋にいちずな男を熱演。
見れば見るほど逸材である。

亡霊は出てくるがあまり怖くは無い。
浅右エ門の過酷な運命自体がホラーであると思う。

使いたい台詞
そなたと行く道がたとえ地獄でも、俺はお前と逃げる!」
浅右エ門が自分を裏切った女に向かって言う言葉。
屋敷の外には追っ手が迫っている。
使いたいというよりは使ってもらいたい台詞でしょうかね~~
こういう大仰な台詞でも栗塚旭が言うとずしんと心に響く。
私は嫉妬でイライラしましたがね。

教訓:なびかぬ女を深追いするのはやめよう
   使用人の前で金をじゃらじゃらさせるのはやめよう
   遠い先までの契約はやめといたほうがいい
   (浅右衛門の先祖は子々孫々首斬り役人を務めると約束した)

ブログランキングへ応援オネガイシマス

「四谷怪談・稲妻の巻・水草の巻」(第六話・七話)

2008年09月02日 | ★恐怖!な映画
キーワード

傘はり浪人
立身出世
南蛮渡来の「毒薬」
髪漉き
戸板返し

数ある「四谷怪談」映像化作品の中でも異色の部類に入ると思う。

それは悪党直助 大フューチャーだから!!

そしてその直助に扮するのが
東映時代劇全盛期の大スター、東千代之介なのだ。
伊右衛門役は田村高廣
このツーショットだけでもお宝映像。

私は東千代之介の悪役というのを初めて見たが
さすが名取り(?)、
超一流の役者は何をやらせても絶品。
ご本人もこすっからい悪党を
楽しそうに演じているように見える。
伊右衛門は口八丁、手八丁の直助の言いなりになり、
お岩を手にかけてしまうのだ。

お岩さんの顔は毒薬を飲んだからではなく
顔に出来たやけどを治す「塗り薬」によって
破壊されるというのも新しい解釈だ。
薬を飲んでああなるのもドラマチックだけど
塗る方がリアリティがある。

髪漉き場面は従来どおりで
気色悪し。

脚本も素晴らしいと思えば
溝口監督の「赤線地帯」「雪夫人絵図」などの
成澤昌茂。時々はっとする言葉があった。
例えば
直助:“お岩さんは伊右衛門さんにとっては「けつまずき女」“
け、け、けつまずき女とはダイレクトな表現である。
つまりサゲマンということなのだろうが
こっちのほうが私は好きだ。

田村高廣の色悪はいいに決まっているが、
東千代之介の立て板に水をざあっと流すような江戸っ子弁、
歩き方走り方、その一挙一動に釘付けになる。
いかにも町人・遊び人ってかんじで
足の運びだけでも違うんですよねえ~~

瑳峨京子さんという人が
哀しく美しいお岩さんだが
かわいそうなくらいグロいメイクに変身させられていた。

伊右衛門はお岩のことをほんとは愛していたのだな。
と、思いたい。
色々な人物の思惑が交錯していて何度見ても新しい。
負の連鎖、カオス。過激で
いつまでも古くならない怪談である。

 教訓:薬は使用上の注意を読んで正しく使うべし
       人に惑わされることなかれ
       働き盛りの男がぶらぶらしていると、ろくなことは無い

使える台詞:「恨めしや」・・・お岩さんがお化けになる前から伊右衛門に言っていた言葉
       薄情な男に使ってみよう!ぞっとすること間違い無し
       「けつまずき女」・・使われたくないが使ってみたい台詞

ブログランキングへ応援オネガイシマス