邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「憲兵とバラバラ死美人」

2005年04月28日 | ★恐怖!な映画
「憲兵」「バラバラ」「死美人」というインパクトのある言葉
をくっつけた心憎い新東宝の企画。

題名ほどグロテスクな描写は無いので(?)
安心して見られます。

匂いをおかずにご飯を食べるような
想像力をそそられる映画である。

憲兵=恐い=拷問 などという単刀直入な連想、
死美人・井戸・バラバラ・白骨=気持ち悪い・・
という我々のストレートな期待もそこそこ裏切らず(?)楽しませてくれる。

犯人が捕まらず行き詰った中山昭二(小坂憲兵)が
机に置かれた髑髏に向かって「あなたは誰にやられたんですか?」と
しみじみと聞くシーンが可笑しい。
これみよがしの人体模型がおかれた部屋もなかなかです。

この頃「新東宝」の看板俳優でもあった天知茂がここでも登場。(拷問されてました)
晩年のニヒルな顔とはまた違う趣き。

1957年 並木鏡太郎監督作品 脚本 杉本彰 製作 大蔵貢

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TV時代劇の殺陣いろいろ

2005年04月23日 | ★TV番組
柳生十兵衛と水戸黄門・・

久々に「水戸黄門」『再放送』(佐野浅夫版)を見た。
助さん(あおい輝彦)は
剣の達人だそうだが、よく見ると相手を本当に切ってはいない。
全部ミネウチだった!

そして格さん(伊吹吾郎)は全部「素手」!で戦っていて、
それはそれはみごとな拳さばきであった!

金曜時代劇・
村上弘明主演「柳生十兵衛七番勝負」も見た。

徳川幕府安泰のために隠密となり、諸国を巡り
怪しいものをばっさばっさと斬っていく柳生十兵衛。

演出の方の言葉によると、「残虐な事件が頻発する現代に
視聴者に「痛い」と感じてもらう「痛みのある殺陣」を心がけている」とか。

なるほど、斬られた侍、痛そうだった。(偶然にも伊吹吾郎)

・・苦悩しながら人を斬る十兵衛。

「斬りたいから斬るのだ」と言い放つ、
どこかの誰かさんとは大違いだ。
(「大菩薩峠」の机竜之介です。)

十兵衛の姿は黒尽くめ、それに異様な殺気がみなぎる大男。
道を歩いているだけでも人がよけて通りそうだ。
隠密バレバレ。
時代劇だけど今風なテイストがあると思った。

柳生十兵衛といえば千葉真一の当たり役
(「魔界転生」、「柳生一族の陰謀」など)だが、
今度「宮本武蔵」役でゲスト出演するらしい。

エンディングテーマ:「戦い続ける男達へ」(歌・松田優作)

原作 津本陽 
脚本 池田政之
殺陣 久世浩
制作統括:古川法一郎
演出:長沖渉 大原拓 小林大児

関係ないけど、毒を盛られた場合
必ず金魚鉢の金魚が「毒味役」させられてますね。

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「地獄」

2005年04月15日 | ★恐怖!な映画
これは・・・・
楳図かずお先生のギャグをお借りするならば、
ギョエ~!・・である。

昭和のトンデモ映画シリーズその1。
(その後シリーズが続くかは未定)

みなさんご存知の「地獄」。地獄に堕ちたらどうなるでしょう?
あまり考えたくないテーマですが
怖いもの見たさの方はどうぞ。これは中川信夫監督版。

タイトルバックになぜか女性のヌード??
最初から地獄の有様が描かれているわけではなく、まず
登場人物の現世でのいざこざ、過ち、その他もろもろが描かれる。

とにかくみんなみんな死んでしまう。
そのバタバタぶりは見事で、最後は一気!です。

あっけにとられる。

生きているうちから亡者のようなルックスの人たちも大勢出演。

そして彼らが地獄に落ちて再会。
恐ろしい地獄めぐりの始まり始まり・・・というストーリー展開。

主人公にまだうら若い天知茂。恋人に三ツ矢歌子、
天知につきまとう悪魔のような友人に沼田曜一
この人は独特の台詞回しで知られ、
ヒロシマの悲劇の語り部として全国を回っている方です。
久々にお顔を見たが、顔、声共にやはりインパクト大。

天知は前世の罪を悔いて謝ってばかりいる善玉学生。
反対の悪玉人間が沼田なのである。

閻魔大王はすごい隈取のアラカン(嵐寛十郎)。

亡者たちは現世の過ちを何度も何度も何度も繰り返し体験する。
嫌なことばかりを追体験させるのは
心理学でいうところの退行催眠、前世療法にも似ているような・・・

目をそむけたくなるお仕置き場面なのに
笑ってしまうのはなぜ?
ちょっと遊園地のお化け屋敷のえげつなさや
蝋人形館のエグ味を彷彿とさせます。

あまりにもバレバレの仕掛けにしまいには大笑いしてしまいました。
観念的な描写もアリ、前衛的でもあった。
いきなり逆さまになったり斜めになったりする
斬新なカメラアングルにも驚いた。

ラストで主人公らの安らかな?死に顔が写される。
あの世では「地獄の苦しみ」を味わっているというのに、
みな静かに眠っているようでした。

製作はいわずと知れた新東宝。大蔵貢。
この人が製作した一連の怪談映画は大蔵怪談として一世を風靡?
日本の「ハマー・ホラー」と呼ばれたということは定かではない。

とにかく「憲兵とバラバラ死美人」「亡霊怪猫屋敷」とか
「人喰海女」などちょっとアレな作品も沢山製作していた。

どぎつい色彩の駄菓子のように食べだすと癖になります。

1960年中川信夫監督作品

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大菩薩峠「竜神の巻」

2005年04月12日 | ★ぐっとくる時代劇
妖剣・音無しの構えの机竜之介(市川雷蔵)・・

人気を博した眠狂四郎シリーズはこの後に続くのだが
この机竜之介というのがとんでもない男。
尋常ではなく腕が立つ。
その剣は災いを生み出していき・・・そして
女は犯すわ、敵もそうでないものも情け容赦無く
斬り、斬り、斬りまくるわで
そのクレージーさは他の侍ヒーローの追従を許さない。

第一部のラストで己の犯した業深き過ち故に
遂に精神に異常をきたし
わはわはわははははははと半眼になり暴れ狂う狂之介
、ではなく竜之介が圧巻だった。

そして狂ったまんま
竜之介を仇と狙う若者(本郷功次郎)と
対決するところで第一部は終わった。

主人公が狂ってしまってはもはやこれまでだろうと思いきや・・
第二部「竜神の巻」ではけろりと
正気に戻りまたもや向かってくるものをばたばた斬っている!

だが、「何も見えん!」
アクシデントに巻き込まれて、両目がつぶれてしまうが
盲目になっても、というか
盲目になったがためによけいに凄味が増しているではないか!

その強さは人間離れしている。

あまりに強くて爽快。

この後、森一生監督がメガホンを取った「完結編」がある。

シリーズ三部作で特徴的なのが
ひとりで何役もこなしている中村玉緒の存在。
まさに輪廻転生を象徴しているかのよう。
竜之介の業の深さが、
悪夢のように何度も繰り返される出会いを作り出しているのか。
暗い空に竜神の滝。ドラマチックな音楽が盛り上げる。

市川雷蔵の凄艶な魅力が
狂気の男をすら、美しくみせる。

1960年 監督:三隅研次 原作 中里介山 脚本:衣笠貞之助 

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「赤い殺意」(1964年版)

2005年04月05日 | ★人生色々な映画
映画の中の三角関係というと
「死んでもいい」もそうだったように
間男=女に夢中 亭主=女に夢中 女=どっちでもない

・・という構図が思い浮かぶ。

男たちは女に執着し、争う。
女は男たちに戦わせ、勝った方と一緒になる。
これって・・・動物と同じ生態だ。

今村昌平監督作品の「にっぽん昆虫記」で
ずばりインセクト・ウーマンが生き抜いたように、
この「赤い殺意」でも男を死なせ、夫を裏切っても、
のほほんと図太く生き抜く女が描かれている。

いったいこれは悲劇だろうか・それともコメディなのか。
昔見たときはエロティックな場面が衝撃!だったが、
今回見たらブラックな、ばりばりの喜劇に見えてきた。

雪国の湿った空気・因習に満ちた風土。暗い家の中。

夫の留守中に忍び込んだ露口茂に犯されてしまう主婦春川ますみ。
電灯が大きく揺れ、ふすまが倒れる。
激しい暴力にたじろぐますみ。(以下ますみ)

男が去った後
「死なねばならない」
電車に飛び込もうとするが死ぬに死ねないますみ。
死ぬつもりだったのに帰るとご飯をぱくぱく食べてしまう。

男は女を執拗につけまわす。

茂(以下茂)は場末のストリップ小屋のバンドマン。
死の病に冒されている。
生きている証を求めるようにすがりつく茂が哀れだ。

ますみは拒みながらも茂と再び関係を結んで
「私ってなんて不幸な女なんだろ」とつぶやき、
さらに食べる!

真面目になればなるほどどこか可笑しい。
春川ますみの肉体はある意味、叶姉妹を抜いていると思う。

夫西村晃が、くたびれた愛人(楠侑子)の部屋で憩う場面もリアルだ。
「腐れ縁」という言葉はこの二人に良く似合う。
晃は神経質で小心で吝嗇でそこそこ好色で病弱で口うるさい。(悪口三昧)

春川ますみ・西村晃・露口茂・このぐにゃっと曲がったトライアングルが素晴らしい。
何もかも包み込んでしまう、女という生き物。その生命力が素晴らしい。

エロティックで哀しくて滑稽な物語。
ポン!と突き抜けた明るさ、ドライなユーモアに感嘆する。
エネルギッシュな作品だ。

1964年 監督 : 今村昌平 原作 : 藤原審爾 脚本 : 長谷部慶治 / 今村昌平

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