邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「絞殺」

2007年11月15日 | ★人生色々な映画
見るまい、見たくない
と思っていたのになぜか見てしまった。
思えば新藤監督の「人間」とか
「鬼婆」もそう言っていながら、
まんまと見てしまったのだったなあ・・・

これって息子を殺める話でしょ。

そんな話はイヤだと思いながらも見てしまったのは
西村晃、乙羽信子の夫婦が何処から見ても
善人で「なんでこの二人が・・」「いったい何が彼らを?」
という好奇心からだったのだ。

息子の激しい家庭内暴力にはある「きっかけ」があった。
息子役の狩場勉、いい面構え。

近親相姦モチーフが根底にあることもやりきれないが
ごく日常的な営みの一環として執り行われる?
熟年カップルのセ●クスシーンも
生々しいことこの上なし。
演出もすごいが上記のふたり、上手過ぎだからリアルで見ていられない。

しかし新藤作品にやたらマザコン描写が多いのはいったい何なんだろう?

追い討ちをかけるように、
何度も何度も流れる加藤登紀子の歌
聞いているだけで死にたくなるような
辛気臭さでとことん滅入る。

隣人たちの好奇に満ちた目もデフォルメされていて
大変いやらしい。
父親の「犯行後」の豹変ぶりと
母親の行動は目を疑ってしまう。

「いやらしい」が暴力的に散りばめられていて過激だ。
単純な露悪に終わらないで
「滑稽」まで持っていくところが
新藤監督のすごい力量だと思うが、
ついていけないと単に落ち込むってことになる。

1979年 監督 新藤兼人
脚本 新藤兼人
撮影 三宅義行
美術 大谷和正
音楽 林光

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仲代達矢と金子國義(テレビ)

2007年11月14日 | ★TV番組
録画した「徹子の部屋」を見た。

「机竜之介」のイメージが脳裏にこびりついていたため
温和な語り口とのギャップにとまどう。
役者ってすごいなあ。

ダンディな仲代達矢さんがゲスト。

太りもせずやつれもせず。
ひきしまった体は健康そのものに見えた。
長年にわたる厳しい自己管理の賜物だと思う。
なんでもないことのように見えるが
歳をとってルックスを保つということは
なかなか凡人には出来ないことだ。

30数年前に録音したという石原裕次郎真っ青の「男の涙」。
全然売れなかったそうだけど、今なら売れるかも?
はさまれた台詞はやっぱりだんとつに味が出ているし。
弟さんのコンサートに飛び入りして歌った
「シャンソン」も堂々とした歌いっぷりであった。
番組中
終始ステキなオーラが出ていた。
無名塾公演「ドン・キホーテ」も観に行きたい。

夜に「知るを楽しむ」
金子國義が語る「澁澤龍彦」を観た。
それも「エロス」について。

自宅で語る金子先生が自然体過ぎて爆笑。

ソファで足をもぞもぞしながら禁断の言葉を!

N●Kも「芸術」の名がつけば禁断オッケーなのか??
たぶんカットされた部分もすごく多かったことと思う。

「澁澤さんに会っていなかったら僕は普通の人だった。遊び人・・・」
と言う言葉も面白すぎる。

二つとも楽しいインタビューで満足。

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「ふくろう」

2007年11月12日 | ★人生色々な映画
森の梟が言いました・・私は森の見張り役・・♪

って歌がありましたね。

新藤監督90過ぎてまだまだ意気盛ん。

東北の開拓村に取り残された母娘。
餓死寸前の貧困の中、男たちを家に招きいれ「商売」を始めるのだが
その客たちを待ち受ける悲惨な運命とは・・

大竹しのぶのしら~~っとした東北弁が可笑しく、そら恐ろしい。
ブラックユーモアが効きまくりテンポも良い。
娘役の伊藤歩もいいコンビ。

二人の行動にどんどん加速がついていき
思わぬ方向になだれ込む展開がスリリング。
新藤マジックが鮮やかにきまっている。
世が世なら?乙羽信子がやっただろう役を
大竹しのぶが熱演し見事に新藤兼人の世界がパワーアップした。

キャスティングが凝っている。
柄本明 、原田大二郎、六平直政、田口トモロヲらのお馴染み勢に加え、
故伊丹十三の息子にしては線が細い池内万作、
対してお父さんとはまた異なる味だけど
蟹江敬三の息子、蟹江一平がとぼけた味でとても面白い。

長い台詞に思わず引き込まれてしまって
わっかいのに何者だ?と思ったら、子役から叩き上げたという
大地泰仁という人だった。

人間どもの馬鹿げた騒動を森の梟だけが見ていたとさ。

ごろすけホッホ~ ごろすけホッホ~♪

舞台劇でやっても面白そう。

コレを見た後大竹しのぶが出ている
アメリカン・エキスプレスのCM
(コレ派手じゃない?とか言って
ドレスを着て娘とNYのジャズクラブに行く)を見たら
爆笑してしまいそう。

原作・脚本・監督・美術: 新藤 兼人

撮影: 三宅 義行
撮影: 林 雅彦
音楽: 林 光
照明: 山下 博

●映画の中のイイおんな
伊藤歩:10代の娘役をきらきらと演じております。
大竹しのぶと堂々と渡り合うど根性が見事。終盤になって
一気に本領発揮しております。スレンダーな体も魅力的。

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「大菩薩峠」(岡本喜八版)

2007年11月10日 | ★ぐっとくる時代劇
仲代達矢
の「これまでの」ベスト3をあげるとすると
「切腹」「用心棒」そして本作だと思う。

机竜之介は実の父親にすら
「邪剣に身も心も冒されている・・早く死んでくれた方が世のため」
と言わしめるほどの狂気の男である。
原作を読んでいないため映画だけの解釈ですから念のため。

あの世から来たような暗いキ●ガイじみたまなざしは
洋画邦画東西南北見渡しても見当たらない。

竜之介のまわりにいる人々が生き生きと描かれているのは
橋本忍の脚本の力もある。

レイプされた挙句、夫を殺され、
竜之介と暮らすようになった浜(新珠三千代)が
「あなたさえいなければ私はこんなに不幸にならなかった」と責めると
「全ての悪を導いたのだのはお前だ。お前が悪女だ。」と
反対に攻撃する場面などは
「切り替えしをして相手にとどめをさす」
竜之介論法に深く感心してしまった。

内藤洋子の棒読み台詞もかえって可愛らしく聞こえてしまう。
その内藤洋子に謎の「たけのこ遊び」を迫る
天本英世の奇人殿様もはまりすぎ。

剣の道から逸脱した竜之介に対し、
「剣は心だ」と説く島田虎之助(三船敏郎)、
竜之介を仇と狙うが腕がついていかない宇津木兵馬(加山雄三)、
近藤勇(中丸忠雄)率いる新選組のダーティな結成なども絡ませ
怒涛のようにラストへなだれ込む。

三船敏郎の、雪の中での2,30人、一気斬りは
岡本監督の「侍」での桜田門の斬り合いを彷彿とさせワクワクする。
雪とか雨とか紙吹雪とか・・
「降り物」は最高に場を盛り上げますなあ~~

そして!

ラスト長まわしの竜之介狂乱の場面は、前代未聞の大迫力だが、
御簾もふすまもあんなにすっぱり斬れるということは、
やっぱり「真剣」では?!

抜群のタイミングで新選組がなだれ込んで
(いくらなんでもここは模擬刀でしょうが)
猛烈な斬りあい(クエッ!)が始まる。
畳に血をしたたらせながら
「ケ、ケケケケ・・・」と笑いながら斬りまくる姿は
手負いの狼、
狂犬、踊る獅子頭、
いや得体の知れぬ化け物のようで最高に恐い!
加えて人の斬り方が異常でこの男を表しているように思う。

このたちまわりをスローで再生して何度も見た私。
からだの動きが美しい。

続編が作られるはずが中止になったそうで、話は宙ぶらりん。
恐いままで終わるのもまた見たものを放心状態に追い込む。

20巻ある原作も読んでみたくなった。

市川雷蔵版は狂四郎に通じるカッコ良さが強調されていて
それはそれでよいが
完結編で見知らぬ子供とほのぼのと
風呂に入ったりするシーンでイメージが壊れた。

片岡千恵蔵版も見たい。

岡本監督のセンスにしびれた。白黒の・・影の使い方にも。
時代劇好き、必見!

監督 岡本喜八
脚本  橋本忍
原作   中里介山
撮影 . 村井博
音楽 佐藤勝
美術 松山崇

●映画の中のイイおんな
川口敦子:内藤洋子を売り飛ばす女将を演じてます。
いわゆる悪婆役だけど
すっきりした一重まぶたが色っぽい。立ち姿も
すらりと美しくいい女っぷり。いつも悪女役だけど上手いひとだなあ!

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「讃歌」追記

2007年11月08日 | ★愛!の映画
新藤監督の「讃歌」は
佐助が盲目になって「お師匠はんと同じ世界に住む」
くだりからからを丁寧に描いている。

前半はここを描きたかったための序章にすぎなかったのかも。

「めしいになってから色んなものが見えてきた」と嬉々として
語る佐助に「羨ましい」という乙羽信子の女中。
このうえなく満足げな春琴。

生まれた子供には愛情を持たず、さっさと里子に出し
ひたすら自分たちだけのことに心を砕く二人。
究極の個人主義である!!

林光のユーモラスな音楽と
シュールな映像が突き抜けたものを感じさせてくれる。

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