邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「橋の上の霜」

2008年03月23日 | ★ぐっとくる時代劇
大田直次郎(武田鉄矢)は幕府下級官吏。
狂歌の名手でもあった。
遊郭を営む弟子のひとり(金田龍之介)の店に出入りするうちに
女郎の三穂崎(秋吉久美子)とねんごろになってしまう。
妻・里世(多岐川裕美)と二人の子どもを
置き去りにして女にうつつを抜かす直次郎・・

平岩弓枝原作のしっとりとした風情の時代劇。
三角関係のどろ沼の中で
苦しみながら生きる男女を描いていくが、
美女二人にはさまれている張本人が
武田鉄矢なのでつい笑ってしまいそうになる。
だが
物語がすすむにつれ真面目な演技にひきこまえれていった。

何しろゴージャスなキャスティングで
脚本も良かった。
(今調べたら平岩弓枝:脚本だった!当たり前!か)

直次郎の父親に浜村純。
親友に菅原文太、その妻には新珠三千代。
他に伊藤孝雄など。

武田が疎んじている妻というのが
多岐川祐美ですからね~~何が不満なのでしょうか。
思いつめた表情の中にはっとするほどの
エロチシズムが匂い、素晴らしい。

かたや愛人の秋吉久美子。
しどけなくて儚くてこちらも色っぽい。廓言葉を操り
「男に可愛がられるだけの薄幸の美女」を熱演していてさすがだ。
最近は強烈な色香が発酵して
益々現実離れした味をかもし出していて目が離せないが、
存在感がありすぎてぴたりと合う役がつかないのが悲劇である。
個人的にはこのまま突っ走り年齢不詳美女王として
前人未到の領域まで踏み込んで欲しいと思っている。
影ながら
応援させていただきます。

二人の間をうろうろするのは
役柄とはいえ男冥利につきる、武田鉄矢・・

妻と妾を同じ屋敷に住まわせるなど
今の常識では考えられない筋運びで
登場人物の心の動きがいまひとつぴんとこなかったが
最後に詠まれた歌は時代を超えてしみじみ心に響く。

世の中は われより先に用のある 人のあしあと 橋の上の霜

自分ばっかり苦労しているように思っていても
先人たちはすでに踏んだ道だったのだな~~
歌は
すでに足跡が残る橋の上の霜を踏みしめ
晴れ晴れとした顔で朝帰りする直次郎の姿にかぶさる。
その橋の下で
三穂崎が身投げしたとも知らず。

原作は読んでいないが
直次郎の人生には様々な苦労があったようである。

ラブシーンなどひとつも無いのに
色香が香る。
90分のドラマの中に
男女の情感が濃縮されていた。

平山武之:演出
平岩弓枝:脚本・原作

1986年 テレビドラマ

余談:86年といえば
すでに尻に帆をかけて遊んでいた年でもないのだが
じっくりとテレビドラマを見られるほど
落ち着いていたわけでも無かった。
このような秀作が残っているのなら
どんどん再放送していただきたい。
ありがたや~~~

時代劇専門チャンネルにて

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「知るを楽しむ:久世光彦 昭和を愛した不良④」

2008年03月21日 | ★TV番組
音楽家、小林亜星がゲスト
久世に「死ぬときに聞きたい音楽」は何?と聞かれて
戸惑ったと言う。

久世が選んだのは
終戦当時ヒットした「港が見える丘
甘くロマンチックなメロディの中に
すこしだけ退廃的な旋律が紛れ込んでいる。

音楽は時代の気分を映し出す。
それが感じられない人の人生はつまらないと思う。(小林)

同感。

ドラマの音楽は
小林に全面的に任せたそうだ。

小林亜星の生ピアノで演奏された
郷愁を誘う向田邦子ドラマのテーマ。
名曲だなあ。

何も言わなくても分かり合える。
二人の感性はぴたりと合っていたのだなとあらためて感じた。
音楽の魔力を知っている二人。
音楽で彩られた人生。
弾き終えた小林の目にうっすら涙が滲んでいた。

え?
私の「マイ・ラスト・ソング」は何かって?

アンチェインマイハ~ト」かな・ちょっとキザかしら
黒い花びら」ってどうかしら

 どうでもいいけど我ながら古~~~~! 

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「知るを楽しむ:久世光彦 昭和を愛した不良③」

2008年03月20日 | ★TV番組
ゲストの魅力も再確認させられる番組と書いたが
今回の語り手は友人で作家の伊集院静

50歳をすぎてから作家デビューを果たした久世とは
20年来の付き合い。
年齢を超えて文学を語り合ったと言う。

照明を落とした自宅?の一室で煙草をくゆらせながら
目を閉じたり、時にはぎょろっと見開いて自然体で語る。
まるで家に招かれて話を聞いているかのような演出が心憎い。
かたわらに置かれたお茶は
現夫人の、篠ひろ子が煎れたのだろうか?

この世には表の世界と裏の世界があって、
影の魅力というのもある・・
「(久世さんは)光と影の狭間に平気で立っている大人の男・・かな。
そういうものにしか匂わない色気があった」

さすが言葉の錬金術師だけあるわね~

「変貌する世の中に抗うように
失われていくものへの哀切、滅びの美を追求した。
人が生きるということは
喜びよりも哀しみを背負うことであると知っていた、
僕が彼の小説を好きなのはそういうことが根本にあるからだ」

こうして書いていても、口から出た言葉がそのまま文学である。
久世の作品の本質を突いている。

締めのところで
喋りがちょっと乱暴になる。

「上(天国)に行っててくれれば、僕は二度と会うことは無い。
でももし下で会ったらあんなこと喋りやがってって言われるなあ・・
下(地獄)にいる可能性も無きにしもあらず・・なんだよなあ~~
僕は間違いなく下(地獄)でみなさんをお待ちしていますよ。」
と言いながら久世の本をかかえて部屋から出て行った。

見事!な幕の引き方である。
思えば彼も作家になる前は演出家でもあったのだった。

そしてこの匂い・・は・・

すごく危ないところがある男たちであることが
彼ら二人の共通点だと思う。

またそういう男には女は惹かれるもので・・
モテまくった(てる)というのも共通項だろう。

久世光彦の本を読み直したくなったのは
もちろんだけど、
伊集院静の小説も読みたくなってしまったなあ!

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「知るを楽しむ:久世光彦 昭和を愛した不良②」

2008年03月19日 | ★TV番組
テレビ界の後輩として
「大石静」が出演。

生前久世が演出の案を練っていたという、
行きつけのCafeで撮影。
駆け出しの大石にとってとにかく怖い存在で
「こんなの撮れるか!」と台本をつき返されたこともあったと言う。

大石さんといえば
大河ドラマの脚本「功名が辻」を手がけるなど
今乗りに乗ってる作家だから
橋田須賀子みたいな女史を想像していたら、
くりくりと動く目も可愛らしい、若々しい方だった。
そして語り口がとってもチャーミング!

世の中に流されずに自身の価値観を通した久世を
すごいと言う。

80年代後半からのトレンディドラマの席捲によって
テレビは若者ターゲットになった。
今のドラマは視聴者に合わせているし
重いテーマのものは嫌われる傾向にあると。

私も最近めっきりドラマを見なくなってしまった。

「プリズン・ブレイク」や「24」など、
海外ドラマの人気の裏には
日本のドラマがつまらなくなったせいもあると思う。

久世さんが逝き、向田邦子スペシャルも
終戦記念日のドラマも見られなくなってしまった。
大人が見られるドラマが無いっていうのも淋しい話だ。
才能と根性のある人が出てきて
この流れをなんとか変えて欲しい。

見たい俳優さんならいっぱいいるしね!

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「知るを楽しむ:久世光彦 昭和を愛した不良①」

2008年03月17日 | ★TV番組
久世光彦の例の不倫スキャンダルは
樹木希林
暴露したのだそうだ。 

「知るを楽しむ:久世光彦 昭和を愛した不良①」(再放送)
で本人がそう言っていた。

当時そういう事情は知る由もなかったけど
久世光彦がTBSをやめて干されたのはよ~く覚えている。

「転んでもただでは起きない粘りが出たというか、
普通ならそこでダメになっちゃうのに・・そうならなかったのはすごい」
「あの後、一番やりたかった、文筆業に入ったんだから
小説家になれたのは私のおかげじゃないの~?な~んて」



語り口はユーモラスながら言ってる中身は過激で辛辣だ。

不良に憧れながらなりそこなった人
無頼になりきれなかった なりたくなかったんじゃないか。
体制に反発していたのにいつのまにか
体制側になってとまどっていたのではないか
という指摘は当たっている気がする。

不良というのは
自分の命も(捨ててもいい)・・
堕ちてもかまわないって人のことを言うのだそうだが
そのありさまがかっこいいひとって
なかなかいない。
ダンナはそれなのだろうか?

樹木希林って
そういえば岸田森と結婚してたこともあったっけ。

久世ドラマのようなセットで喋りっぱなし。芝居も交えた演出が楽しい。
たぶん自前の、見事な漆の羽織を着ている。

久世光彦特集なのに樹木希林のことも
知って楽しめる番組だ。

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